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沖縄県追加で経済損失は330億円、合計で1兆9,370億円

政府は緊急事態宣言の対象に、新たに沖縄県を追加する方針を固めた。21日夜に正式に決定する。期間は5月23日から6月20日までの約1か月(4週間)となる。

政府は金曜日に3週連続で緊急事態宣言の延長や対象区域の拡大を決めており、地方に広がる新規感染拡大への対応が後追いとなっている(コラム「 緊急事態宣言の対象拡大は全国ベースも視野に 」、2021年5月14日)。沖縄県での感染拡大は、ゴールデンウイーク中の旅行客の流入も原因となっているとみられ、事業者に対する時短・休業要請だけではなく、個人の移動を制限する措置の必要性を裏付けているように見える。

沖縄県で1か月間の緊急事態宣言が発令されることによる沖縄県、そして全国での経済損失(個人消費の減少額)は、330億円と試算される。これは1年間の名目GDPの0.01%であり、失業者数を1,300人増加させる計算となる。

既に宣言の対象となっている9都道府県での5月31日までの経済損失と合計すると、1兆9,370億円、名目GDP比0.35%となる。これは、失業者数を7万6,700人増加させる計算となる。

(図表1)緊急事態宣言・沖縄県追加延長による経済損失の試算

10都道府県6月20日までの宣言で合計の経済損失は3兆1,790億円

一方、5月31日で期限を迎える9都道府県の緊急事態宣言についても、延長すべきとの議論が浮上している。東京都の新規感染者数は、依然高止まりの状況だ。また大阪府知事は、宣言延長の必要性を訴えている。

1週間後の5月28日に、5月31日に期限を迎える9都道府県の緊急事態宣言の延長が決まる可能性は比較的高いのではないか。その場合、沖縄県での宣言の期限に合わせて6月1日から20日まで約3週間(20日間)とすることが考えられる。

9都道府県での緊急事態宣言が約3週間(20日間)延長される場合、経済損失は1兆2,420億円と試算される。さらに現時点で決まっている10都道府県での緊急事態宣言の経済損失と合計すると、3兆1,790億円となる。

これは4-6月期の実質GDP成長率を年率換算で9%程度押し下げる計算となる。同期の実質GDP成長率は、感染対策としての緊急事態宣言の発令によって、年率2桁近く押し下げられる可能性が出てくるのである。

(図表2)緊急事態宣言延長ケースの経済損失試算

 

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。