経済損失は合計3.42兆円で東京五輪の経済効果の2倍に
政府は、7月12日から始められた東京都と沖縄県に対する第4回緊急事態宣言の対象に、7月30日時点で千葉県、埼玉県、神奈川県、大阪府の4府県を加えた。さらに8月17日に政府は、茨城県、栃木県、群馬県、静岡県、福岡県、京都府、兵庫県の7府県を8月20日から新たに加える方針を固めた。さらに8月31日までとされていた緊急事態宣言の期限を9月12日まで延長する方針も固めた。8月17日中に正式決定される見込みだ。
この延長措置により、第4回緊急事態宣言による経済損失は0.67兆円増加し、また対象区域の拡大措置により、経済損失は0.56兆円増加する計算だ。現時点での宣言と合計すれば、第4回緊急事態宣言による経済損失は3.42兆円となる(図表1)。これは年間の名目GDPの0.62%に相当し、失業者を13.5万人増加させる。
(図表1)第4回緊急事態宣言の延長・拡大の経済効果
この経済損失は、東京五輪(オリンピック・パラリンピック)の経済効果1.68兆円の2.0倍に達することになる。延長・拡大後の第4回緊急事態宣言は、それ自体は7-9月期の実質GDP成長率を年率換算で9.6%押し下げる計算だ。
しかし、その経済損失の規模は4-6月期に実施された第3回緊急事態宣言の3.2兆円とほぼ同額となる。さらに、これに東京五輪の経済効果が加わる。そのため、東京五輪と緊急事態宣言の影響のみを取り出して計算すると、それらは7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+2.8%押し上げる計算となる(図表2)。
(図表2)東京五輪、緊急事態宣言が四半期GDP成長率に与える影響
しかし、第4回緊急事態宣言は今後さらに延長あるいは対象区域が拡大される可能性も十分に考えられる。その場合には、7-9月期の実質個人消費が前期比で減少する可能性が高まるだろう。
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