政府は7日中に、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」を、沖縄、山口、広島の3県に適用することを正式決定する見通しだ。対象区域となるのは、沖縄県は全市町村、山口県では岩国市と和木町、広島県では広島市、廿日市市、大竹市、府中町、海田町である。
まん延防止措置の適用は約3か月ぶりであり、岸田政権では初の適用となる。期間は9日から31日までの23日間だ。この3県では、飲食店の時短営業やイベントの人数制限などを行い、県知事の判断で飲食店での酒提供禁止も可能となる。
適用区域は、日本全国の中では限られた範囲である。経済規模(名目個人所得)で見ると、この3県の合計は日本全体の4.0%である。さらに、対象となる市・町の経済規模で計算(人口データを用いた推計)すると、日本全体の2.0%に過ぎない。
今回のまん延防止措置による経済損失を試算すると、ちょうど400億円となる。これは1年間の名目GDPの0.01%である。また、雇用者は1,600人減少する。まん延防止措置では、飲食店が時短命令に応じない場合の過料が緊急事態宣言の3分の2であることから、経済に与える影響も緊急事態宣言の3分の2と仮定して、上記では計算している。
措置が適用されない他地域でも既に感染の急拡大が生じている。そのため、今後まん延防止措置の適用区域が急速に拡大する、あるいは早晩、全国ベースの緊急事態宣言の発令へと発展する可能性は否定できないところだ。
今回のまん延防止措置による直接的な経済損失は、上記の試算結果のように必ずしも大きくはないが、今後のさらなる拡大を予見させることを通じて、対象区域以外の消費者の行動にもかなりの抑制効果を生じさせるきっかけとなるだろう。その結果、経済損失は上記の計算よりも大きくなる可能性が高い。
感染再拡大を受けて、昨年秋以降の国内経済の持ち直し傾向は、年末年始をピークに一巡しつつあると見られる(コラム「 感染第6波で国内景気の持ち直しは早くも一服へ 」、2022年1月6日)。
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