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政府は25日に、「まん延防止等重点措置」の拡大を正式に決める。新たに加わる地域は、最終的に18道府県(北海道、青森、福島、山形、茨城、栃木、静岡、長野、石川、島根、大阪、京都、兵庫、岡山、鹿児島、福岡、大分、佐賀)に及び、既存分と合わせて適用地域は合計で34都道府県となる(コラム「 まん延防止措置のさらなる拡大で経済損失は合計で1.7兆円規模に 」、2022年1月24日)。新たに適用される18道府県の経済規模(県民所得)は、日本全体の35.3%程度であり、既に適用されている地域と合計すると、経済規模で90.0%の地域への適用となる。適用期間は、1月27日から2月20日までの25日間となる。

18都府県への同措置適用は、7,740億円の経済損失(個人消費減少)となる計算だ。これは、1年間の名目GDPの0.14%に相当し、3.1万人の失業者を生む。既に同措置が適用されている16都県(いずれも適用期間が2月20日まで延長されると想定)と合計すると、経済損失は2兆2,560億円に及ぶ。これは、1年間の名目GDPの0.41%に相当し、8.9万人の失業者を生む計算だ(図表)。

経済損失の推計値は、昨年の3回目の「緊急事態宣言」(2021年4月25日~7月11日)の3.2兆円に近付いており、「緊急事態宣言」でなく「まん延防止等重点措置」であるため経済への打撃は限られる、とはもはや言えなくなってきた(コラム「 まん延防止措置のさらなる拡大で経済損失は合計で1.7兆円規模に 」、2022年1月24日)。

1-3月期のGDPが2兆2,560億円減少する場合、1-3月期の実質GDP成長率は、その影響で前期比年率6.5%程度押し下げられる計算となる。「まん延防止等重点措置」が予定通りに2月20日で解除されれば、その後に個人消費が持ち直し、1-3月期前半の落ち込みを相当分挽回することも期待できるだろう。しかし、今後適用期間がさらに延長されていけば、1-3月期の成長率が2四半期ぶりにマイナスに陥る可能性も否定できなくなる。

(図表)まん延防止等重点措置による経済損失試算

 

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。