原油価格130ドルで日本のGDPは0.26%押し下げられる
ブリンケン米財務長官は6日に、バイデン政権と同盟国がロシア産原油の禁輸措置の可能性について協議していることを明らかにした。これを受けて、ロシアの原油供給が減少するとの観測から、7日の原油価格は急騰している。
WTI原油先物の価格は、先週末の115ドルから、7日には一時1バレル130ドル目前まで上昇し、現在は122~123ドル台での推移となっている。実際にロシア産原油の禁輸措置が決まれば、WTI原油先物価格は130ドルを超える可能性が高いだろう。
原油価格の高騰は日本経済にも一段と打撃となる。WTI原油先物価格130ドルで計算すると、年初からの原油価格上昇は75%程度に達し、これは、日本の実質GDPを1年間の累積効果で0.26%押し下げる計算となる(コラム「 まん延防止措置延長で経済損失は合計4.0兆円。ウクライナ情勢による原油高の影響と政府の各種政策の評価 」、2022年3月3日)。
原油価格130ドルで補助金制度の下でも、レギュラーガソリン価格は177円まで上昇
ただし、日本政府が既に講じている元売り会社に対する補助金制度によって、小売り段階でのガソリン価格の上昇は抑えられ、海外での原油価格上昇が日本経済に与える影響は一部緩和されている面がある。
この補助金制度は、当初、レギュラーガソリン価格の全国平均1リットル170円を超える部分で最大5円までとされたが、原油価格上昇が続き、ガソリンの小売価格が再び上昇を始めたため、政府は最大25円まで補助金の額を引き上げることを決めた。
ところで、海外での原油価格は1か月後のガソリン価格に強い影響を与える。海外での原油価格と為替レートの2つの要素から、1か月後の国内でのガソリン小売価格をかなり正確に予想することができる。
回帰分析の結果を用いると、2月のWTI原油先物価格の平均が91.7ドル、ドル円レートの平均が115.1円であることから、3月のレギュラーガソリン価格(東京)の平均値は175円(補助金の影響を含まない)となる計算だ。現在の補助金制度のもとでは、引き続き実際の小売価格は170円程度の水準を維持できることになる。
ところが、3月のWTI原油先物価格の平均が130ドルまで上昇する場合(ドル円レートの平均は115円)、4月のレギュラーガソリン価格(東京)は202円(補助金の影響を含まない)まで上昇する。最大25円の補助金制度のもとでも、レギュラーガソリン価格(東京)は177円まで上昇する計算となる。
原油価格152ドル以上で補助金とトリガー条項の凍結解除でもガソリン小売価格の上昇を抑えられなくなる
仮にWTI原油先物価格が史上最高値の152ドルまで上昇する場合(ドル円レートは115円)には、レギュラーガソリン価格(東京)は221円まで上昇する計算となる。この場合、最大25円分の補助金制度に加えて、現在政府内で検討されているガソリン税のトリガー条項の凍結解除によるガソリン価格引き下げ効果の25.1円を合わせても、ガソリン小売価格の上昇は抑えられなくなる計算となる(コラム「 原油価格100ドルに向かう中での日本の原油高対策 」、2022年2月16日)。
ウクライナ情勢を受けた海外での原油価格の持続的な上昇を受けて、国内での原油高対策が追い付かない状況となってきたのである。
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