主要格付機関はデフォルトの方針を示すか
ドル建てロシア国債2本の合計1億1,700万ドルの利払い期限である16日が過ぎたが、海外投資家には利払いはなされていない模様である。利払いは、米ニューヨークで日付が16日から17日に変わるまでに行われる必要があった。支払いを代行するのはシティグループだ。
主要格付機関は、投資家に対してドル建ての利払いが実施されていない(あるいはロシア政府によって一方的にルーブル建てで支払われた)ことを確認した上で、支払い猶予期間の30日が過ぎた後の4月半ばに、外貨建てロシア国債をデフォルト(債務不履行)の格付けとする、デフォルト認定をする考えを示すと見られる。
外貨建て国債がデフォルトとなれば、1917年のボリシェビキ革命以来の大規模な対外債務デフォルトとなる。当時、レーニン率いるボリシェビキ派が成立させたソ連政府は、帝政ロシアの債務を引き継ぐことを拒否したのである。ちなみに1998年の前回のデフォルトはルーブル建て国債についてであり、外貨建て国債については支払い猶予が認められ、デフォルトは回避された。
ロシア政府は、主要国による外貨準備の凍結措置が外貨での国債の利払いや償還を技術的に難しくしていると主張し、外貨準備の凍結措置が解除されない限りルーブルで支払うと説明していた。
現在発行されている15本の外貨建てロシア国債は、期間、契約内容ともまちまちである。2014年のロシアによるクリミア編入後に発行された国債には、ドル以外の通貨による支払いもあり得る、との条項が含まれている。また、2018年以降に発行された国債については、代替支払い通貨としてルーブルが明記されている。ただし、16日に利払い期限を迎えた2本の国債については、2013年に発行されたものであり、ドルでの支払いのみが定められている。
ロシアは先進国の制裁措置が利払いの手続きを難してくしていると説明
ロシア財務省は14日に、外貨建て国債の利払いを行うよう銀行に指示したと発表した。そしてロシア国営通信社の RIAノーボスチは16日に、シルアノフ財務相の発言として、ロシア政府はドル建て国債の利払いを14日に実施したが、政府と中央銀行の外貨準備が制裁で凍結されているため債券保有者に支払いが届かないリスクがある、と報じた。
またシルアノフ財務大臣は「資金はわれわれの外貨口座がある適切な米国の銀行に到着した。支払いの手続きは現在進行中で、処理が完了したかどうかの連絡をまだ受けていない。つまり処理はまだ完了していない」とし、口座のある銀行からの情報を待っているところだと説明している。
シルアノフ財務相の発言は、ロシア政府がルーブル建てではなく、ドル建てで国債の利払いを行った、あるいはその意思があった可能性を示唆しているようにも読める。しかし、実際のところは分からない。投資家がルーブル建ての利払いを拒否したため、利払いの手続きを行っていない可能性もあるのではないか。
シルアノフ財務相は、先進国の制裁措置が投資家への利払いの手続きを難しくしていると非難しているが、米国政府は、米国の投資家がロシア政府から国債の利払いや償還を受ける道を封じていない。米財務省外国資産管理室(OFAC)は3月2日に、5月25日までの期限で、米国人がロシアの財務省、中銀、政府系ファンドの発行した「債券ないし株式に絡む利子、配当、償還金」の受け取りに伴う金融取引を承認している。
いずれにせよ、ロシアの外貨建て国債のデフォルトが、もはや避けがたい事態となっていることは変わらない(コラム「 ロシア・デフォルト前夜に 」、2022年3月16日)。
(参考資料)
"Radio Silence on Russia Debt Payments Keeps Default Risk in Play", Bloomberg, March 17, 2022
"Russia Says Coupon Payment May Not Reach Eurobond Holders: RIA", Bloomberg, March 17, 2022
「情報BOX:デフォルト目前のロシア対外債務、返済を巡る主な問題」、2022年3月15日、ロイター
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