FTX創業者バンクマンフリード氏がバハマで逮捕
バハマの司法当局は12月12日に、暗号資産(仮想通貨)の大手交換業者FTXの創業者であるサム・バンクマンフリード容疑者を逮捕した、と発表した。業界2位のFTXは1日当たり100億ドル規模の暗号資産を取引していたが、11月に経営破綻し、100万人を超えるとされる顧客が資産を引き出せなくなっている。
米国の連邦検察が同氏を起訴したとの正式な通知を受け、米政府の要請をもとに逮捕に踏み切ったという。米ニューヨーク州南部地区の連邦検察はツイッターで、「バハマ当局は米政府の要請により、ニューヨーク南部地区(SDNY)が提出した非公表の起訴状に基づき、サミュエル・バンクマンフリードを逮捕した」としている。
同司法長官は米国への身柄引き渡し手続きに備えて、同容疑者を拘留中だと説明している。容疑者は現在バハマの警察署におり、13日に罪状認否の手続きが計画されている。現時点で逮捕容疑の詳細は明らかにされておらず、米国の連邦検察は13日午前(米国時間)に起訴状を公開する予定であり、その際に明らかにされる見込みだ。
今後の暗号資産の規制強化を占う
経営破綻後に裁判所に提出された資料では、FTXは、顧客資産を不正流用したり会社資金を私物購入に充てたりするなどそのずさんな経営実態が明らかになっている。逮捕容疑の中心は、顧客の資産を無断でグループ内の投資会社アラメダ・リサーチへ貸し付けたこと、相場操縦、マネーロンダリング(資金洗浄)とみられる。ただし、バハマ警察当局は声明で米国の法律、バハマの法律に違反する「さまざまな金融犯罪」を逮捕理由に挙げており、容疑内容はかなり多岐にわたるとみられる。
顧客資金の流用についてバンクマンフリード容疑者は、FTXの資産と顧客の資産を意図的に混同したことはない、詐欺を働こうとしたことはないと説明していた。
一方、米証券取引委員会(SEC)は12日の声明で、SECとして別途に、バンクマンフリード容疑者を証券法違反に関連して13日に民事提訴する方針だと発表した。また、米商品先物取引委員会(CFTC)も調査に着手している。
今後捜査が進む中で、FTXの乱脈経営や犯罪行為が経営破綻の原因であることが明らかになれば、それは個別問題であり、暗号資産全体の信頼性へのダメージは回避できると考える向きもあるかもしれない。しかし、不正行為、犯罪行為以外でも、価値が不明確なトークンを担保に資金を調達し、また企業を買収して事業を拡大、巨額な利益を得るといった錬金術的な経営手法、暗号資産の価格上昇に依存したリスクの高いビジネスモデルは、FTXに限らず業界全体に共通している。その問題点が改めて浮き彫りになったことで、FTXの個別の問題が今後の捜査で明らかになっても、それが暗号資産市場の信頼回復に大きく貢献することにはならないのではないか。
また、今後の米国の検察による捜査や、SEC、CFTCの調査を通じてどのような問題が明らかになっていくかは、先行きの暗号資産への規制強化の方向性を考えるうえで、有益な情報になるとみられることから、注視しておきたい。
(参考資料)
「暗号資産大手FTXの創業者、バハマで逮捕」、2022年12月13日、BBC News
「FTX創業者バンクマンフリード容疑者、バハマで逮捕-米が訴追」、2022年12月13日、ブルームバーグ
「FTX前CEOを逮捕、バハマ当局が米の要請受け 近く容疑公表」、2022年12月13日、ロイター通信ニュース
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