欧州中央銀行(ECB)は7月27日の理事会で、事前予想通りに0.25%の利上げを決めた。その結果、政策金利(中銀預金金利)は3.75%と過去最高水準に並んだ。利上げは9会合連続となる。
ユーロ圏では景気減速傾向が鮮明になり、また銀行の貸出姿勢が慎重になるなど、今までの利上げの効果はみられる。また、ユーロ圏の消費者物価の前年同月比は、昨年末時点には+10%を超えていたが、6月には+5.5%まで一気に低下した。
しかし、コアの消費者物価(除く食料、エネルギー)も6月は+5.5%となったが、ピークとなった今年2月の同+5.7%から低下幅はまだわずかだ。そして、ECBの物価目標である+2%までまだ距離がある。
ラガルド総裁は、今回の決定の狙いは、物価上昇率を目標に近づけるという一点に集約されるとし、これに向けた全会一致の決意を示している、と説明した。総裁は、物価上昇の要因が、当初の外的なものから内的なものに移っており、そのため、物価の安定回復を、金融引き締めを通じて目指すことがより正当化されるようになってきた、とのニュアンスで語っている。内的な物価上昇要因とは、賃金の上昇や堅調な利益率などである。
他方、「ユーロ圏経済の短期的な見通しは、主に内需の減退により悪化した」「短期的には景気は軟調に推移すると予想される」など、景気悪化を認めているが、景気を犠牲にしてでも物価の安定回復を図る覚悟を強くアピールしている。
ECBは次回9月の会合での追加利上げの有無についてはガイダンスを示さなかった。ラガルド総裁は、9月は利上げもあり得るし、一時停止もあり得る、とした。他方、「私が断言できるのは、利下げするつもりはないということだ」と述べた。さらに金融政策の決定は、会合ごとであり、それは「データに依存する段階に移行している」とした。米連邦準備制度理事会(FRB)と同様に、金融政策は今後の経済データ次第で決まる、ことを強調したのである。
それでも金融市場は、FRBとともにECBの利上げが最終局面にあるとの見方を強めている。
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