碧桂園が外貨建ての債務不履行を公表
中国政府が8月から住宅ローン支援策に乗り出す中、昨年の成約額が中国1位だった不動産開発大手の碧桂園(カントリーガーデン)の経営危機が、一段と強まっている。中国経済や金融への悪影響も避けられないだろう。
碧桂園は少し前までは財務が比較的健全な不動産開発業者と考えられていたが、その碧桂園の破綻リスクが高まったことで、他の不動産開発会社に経営危機が波及するリスクも強く意識されてきた。
碧桂園は10日、すでに支払期日が到来した一部の債券の元本およそ4億7,000万香港ドル(約89億円)の支払いができていないことを明らかにした。債務不履行(デフォルト)の回避に失敗したのである。さらに資金調達が厳しい状況にあることから、米ドル建てを含む、すべての外貨建ての債務について、期日までに支払えない可能性があると説明した。
碧桂園は経営破綻に向かっていると考えられる。碧桂園の2024年に期限を迎えるドル建て社債の価格は、現在5セントだ。会社が清算された際に債券保有者に戻ってくるのは額面のわずか5%程度、との見方を反映した価格である。
碧桂園の9月の成約額は前年同月比-81.0%と急減している。住宅販売が大きく落ち込んだことで、債務返済に必要な現金が急速に減少しているのである。住宅販売が急減する中、建設、資材会社への支払いも難しくなっている。調査会社ガベカルによると、碧桂園の建設、資材会社への買掛金は6月時点で約2,020億元、中国の上場不動産開発業者が抱えるサプライヤーへの買掛金は合計3兆4,000億元に上るという。
政府の住宅ローン支援策の効果は大きくない
中国政府は8月末に住宅ローン支援策を打ち出した。2軒目以降のマンションなどを購入する際の住宅ローンの頭金比率の引き下げだ。北京、上海、広州、深圳のいわゆる「1級都市」では、いち早く規制緩和が導入され、9月中旬までに四川省成都市、浙江省杭州市、江蘇省無錫市などといった「2級都市」へと広がった。
ただし今回の規制緩和は1級や2級という大都市が中心であり、もともと住宅ローン規制が厳しくなかった「3級都市」以下の地方都市では大きな効果が期待できない。
碧桂園は市場低迷が深刻な比較的小規模の都市で積極的に事業を拡大してきた。2023年1-6月期の成約額の約63%がいわゆる第3、4級都市でのものである。そのため、碧桂園がこの規制緩和の恩恵を大きく受けることはできないだろう。
一方、政府の住宅支援策も十分に積極的なものとは言えない。支援策を打ち出す一方で、政府は「住宅は住むためのもので、投機対象ではない」という方針を堅持することを強調している。「共同富裕」の理念に基づいて、格差拡大を助長する住宅価格の上昇を抑制する姿勢は維持されており、そのなかで、不動産開発会社の救済などにも依然慎重だ。
不動産不況が経済・金融を揺るがす事態に
こうした政府の慎重姿勢が、不動産不況の長期化と経済、金融システムへの打撃を大きくしている可能性がある。中国の個人が保有する資産の80%程度が不動産関連とされる。そのもとで、不動産価格の下落は、個人消費に強い逆風となる。いわゆる逆資産効果である。
また、中国国内の金融機関による不動産開発業界に対する融資残高は、6月時点で5兆3,000億元と、全体の約6%に上っている。恒大の破綻に加え、碧桂園の見通しが悪化したことから、この貸出債権の相当部分が焦げ付き、金融システムを揺るがす可能性が出てきている。
(参考資料)
"China's Country Garden Wilts(中国碧桂園の債務問題、潜む不動産不況リスク)", Wall Street Journal, October 12, 2023
「深刻化する中国の不動産不況 政府テコ入れ策は限定的」、2023年10月10日、日本経済新聞電子版
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