日経平均株価はバブル崩壊後の高値を一時更新:米国株に連れ高
20日の東京株式市場で、日経平均株価は今年6月19日につけたバブル崩壊後の高値3万3,772円を、一時的に更新した。33年ぶりの水準である。その後は、円高の重しもあり株価は下落に転じている。
株価は9月から10月にかけて調整色が強まったが、11月に入ってからは上昇傾向にある。これは、堅調な米国株にけん引された側面が強いだろう。
米国株は8月から10月にかけて調整色を強めた。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが最終局面にあるとの認識が広まる中にもかかわらず、長期国債利回りが予想外に上昇したことの影響が大きかった。そして米国の長期国債利回りが上昇したのは、FRBが利上げを終了した後も、インフレ抑制の姿勢を維持し、高水準の政策金利を長く続けるとの見方が強まったためだ。7-9月期の成長率が前期比年率+4.9%と上振れたことも、そうした期待を後押しし、長期国債利回りを押し上げることに貢献した。
それに加えて、財政赤字の拡大や国債の格下げ懸念なども、長期国債利回りの上昇に寄与したとみられる。7-9月期の成長率が上振れる中でも、米国株は長期国債利回りの上昇という逆風により強く反応し、調整色を強めたのである。
ところが、一時5%に達した米国の10年国債利回りは、11月に入って低下傾向に転じた。米国の物価上昇率が着実に低下するとの観測が強まったためだ。また、米国の景気鈍化観測も、FRBの利上げ打ち止め観測と来年の利下げ観測に結び付き、長期国債利回りの低下をもたらした。米国株は長期国債利回りの低下に強く反応し、11月に入ってからは堅調に推移している。
つまり、足もとでの日本株の戻りは、日本の要因よりも、米国の要因、つまり米国の長期国債利回りの低下に促された米株上昇と連動している側面が強い。
年前半の日本株上昇を支えた4つの要因
日経平均株価が一時バブル崩壊後の高値を超えたとはいえ、上昇に勢いがあったのは、今年6月までだ。現時点で日経平均株価は年初来28%程度上昇しているが、主な上昇は6月中旬まで、と年前半で終わっているのである。
5月から6月にかけて日本株の上昇は勢いづいていたが、その背後には日本独自の要因が幾つか重なっていた。第1は、新型コロナウイルスの感染法上の5類への引き下げなど、規制緩和が進む中、経済活動の再開が強まったことだ。特にインバウンド需要の拡大が、成長率を押し上げた。第2は、4月に新総裁に変わった日本銀行が、早期に政策修正に動くとの見方が後退し、株式市場がそれを好感したことだ。第3に、日本銀行が政策修正に慎重である中、円安が進み、それが日本株を支えたことだ。第4に、東証が上場企業にPBR向上などの改善策を呼びかけたことで、日本企業の改革期待が強まったことだ。
来年の日本株にバラ色のシナリオを描くのは難しいか
日本の成長率は7-9月期以降息切れを始めているなど、上記4つの日本株好条件は、既に変調している。この点から、この先の日本株のパフォーマンスに大きく影響するのは、こうした日本独自の要因ではなく、米国株の動向であり、それを左右する米国長期利回りの動向である。
FRBの利上げ打ち止めと利下げ観測が強まる中、米国長期利回りがさらに低下すれば、米国株と連動する形で、日本株への追い風はなお続くだろう。しかし米国経済が比較的堅調であり、また円安地合いが続く中では、日本銀行がマイナス金利解除に踏み切る可能性が高まり、それが日本株の上昇を抑えることになるのではないか。
他方、米国経済の減速が進めば、ある時点で、株式市場での景気悪化、業績悪化への懸念が、長期利回り低下による追い風を上回り、米国株が下落に転じることが予想される。その場合、日本株も連れ安となりやすい。また、米国景気の減速と利下げ観測が強まれば、歴史的な円安は円高に流れを変え、それも日本株に逆風となるだろう(コラム「 進むドル高円安の修正:歴史的円安は最終局面か 」、2023年11月20日)。
日本株は年前半のように国内要因にけん引される積極的な「日本買い」の局面から、年後半には、米国株高に連れ高する局面へと変わっている。米国の環境が良好を維持すれば、来年初めにかけて日本株も高値を追う展開となることが期待されるが、以上で見たように、来年の日本株にバラ色のシナリオを描くのは難しそうだ。
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