ECBは4月に利下げか
欧州中央銀行(ECB)は25日の理事会で、3会合連続で政策金利を据え置くことを決めた。声明文でECBは、「政策金利をこの水準で十分に長く維持することが、インフレの抑制に大きく貢献する」と指摘し、早期の利下げ観測をけん制した。
他方で、物価上昇率は想定通りに低下しているとしたうえで、「引き締まった資金調達環境が需要を減退させており、これがインフレ率の押し下げに寄与している」とも述べた点は注目される。金融引き締めの効果が景気減速をもたらし、それがインフレ率の低下につながっているとの判断をしているのである。これは、金融引き締めによる景気悪化への懸念を表明したものでもあり、早期の利下げ観測をけん制しつつも、遠くない将来の利下げを示唆しているものと読める。
ECBが経済を支えるために積極的な金融緩和を実施するとの見方を、金融市場は強めている。スワップ市場では6月までに0.5%ポイント以上の利下げが織り込まれた。4月に0.25%の利下げが実施される確率は90%程度である。ラガルド総裁は夏以降に利下げがありうると説明したが、市場はより前倒しで利下げが行われるとの観測を強めている。
ECBとFRBの利下げ姿勢の違い
金融市場は年内の米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げも予想しているが、ECBとFRBとでは置かれた環境が異なる。ユーロ圏は金融引き締めの影響で経済の減速が明らかとなっており、ECBは経済を支えるために利下げが必要になってきた。
他方で米国では、2023年10-12月期の実質GDPが前期比年率+3.3%と事前予想を上回り、前期の同+4.9%を下回ったものの、依然として米国経済は成長のモメンタムを維持していることを裏づけている。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は年内3回程度の利下げを予想しているが、これは、インフレ率の低下に応じて予防的に金融引き締めの度合いを緩める微調整を行うイメージだ。景気減速が強まり、慌てて利下げするECBのイメージとは異なり、政策の自由度を保った状況である。FRBは、一時は3月に利下げを始めるとの見方が市場で大勢であったが、現在は5月の利下げがより有力な見方となっている。
ECBは4月、FRBは5月あるいは6月の利下げ開始を予想したい。そしてその後の利下げ幅は、ECBの方が大きくなるだろう。こうした両国・地域の金融政策動向を前提にすれば、今年は、ユーロはドルに対して下落リスクが高いだろう。実際、年明け以降は一貫してドル高ユーロ安傾向が続いている。
海外の金融政策が日銀のマイナス金利政策解除の制約に
そして、ECBとFRBの利下げの時期やその幅は、日本銀行のマイナス金利政策解除の時期にも影響を与える。FRBの利下げと日本銀行の利上げの時期が重なれば、金融政策の方向性の違いから急速な円高となり、金融市場や経済に打撃を与える。そこで日本銀行はFRBの利下げの時期を避けてマイナス金利政策解除を実施するだろう。FRBの利下げが5月あるいは6月であれば、日本銀行が3月あるいは4月にもマイナス金利政策解除に踏み切ることができることになる。しかしFRBがまだ利下げに踏み切らなくても、金融市場で近い将来の利下げを強く織り込んでいる場合には、円高リスクが高まるため、日本銀行のマイナス金利政策解除の制約になる。また、4月に予想されるECBの利下げも、3月あるいは4月のマイナス金利政策解除に一定程度制約となるだろう。日本銀行のマイナス金利政策解除の時期は、こうした海外での金融政策によっても影響を受けるため、依然として大きな不確実性が残る。
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