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日本銀行は3月19日にマイナス金利政策を解除するとともに、民間の金融機関が日本銀行に保有する預金である「日銀当座預金制度」も見直し、従来の階層型を廃止した。その結果、所要準備を超える超過準備については、一律に+0.1%の付利(利息)が適用されることになった。

従来の当座預金への付利は、-0.1%、0%、+0.1%に分かれていた。制度の見直しにより、日銀当座預金を保有する民間金融機関が得ることができる利子所得が増加する。そのため、民間金融機関は、日本銀行に国債を売却することなどを通じて、日銀当座預金をより保有するインセンティブを強めたのである。

日本銀行は4月16日に「業態別の日銀当座預金残高(2024年3月)」を公表した。3月の準備預金積み期間(3月16日~4月15日)中の日銀当座預金の平均残高は、実際のところ、556.8兆円と2月の533.9兆円から+3.7%の大幅増加となった。

日本銀行が2月の準備預金積み期間まで公表していた「付利の対象となる当座預金残高」から計算すると、従来の階層型当座預金制度のもとで民間金融機関が得ていた利子所得は、年率換算で1,802億円と試算される。

他方、16日に公表された「業態別の日銀当座預金残高(2024年3月)」に基づく計算では、当座預金制度見直し後に民間金融機関が得る利子所得は、年率換算で5,407億円まで増えると試算される。制度変更によって、日本銀行の当座預金を保有する民間金融機関の利子所得は、年率換算で3,605億円増えることになる。

さらにこの先追加利上げが行われる場合、例えば、0.25%付利金利が引き上げられるたびごとに、民間金融機関の利子所得は年率1.3兆円増える計算となる。民間金融機関にとっては非常に大きなボーナスだ。当座預金制度の見直しとともに、日本銀行の利上げは、マイナス金利政策によって打撃を受けた金融機関の収益環境の改善に大いに役立つだろう。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。