個人消費のさらなる逆風に
国土交通省は6月3日に、トヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの自動車・二輪車メーカー5社、合計38車種で、不正申請が確認されたと発表した。さらに、これらのうち、現在生産中であるトヨタの「ヤリスクロス」、「カローラアクシオ」、「カローラフィルダー」、マツダの「ロードスターRF」、「マツダ2」、ヤマハ発動機の二輪車「YZF-R1」の6種について、基準適合を確認するまで出荷を停止するよう、国土交通省は3社に指示した。
ダイハツなどの認証不正問題に伴う生産・出荷停止などは、今年1-3月期の経済活動を損ね、同期の実質GDPは前期比-0.5%と2四半期ぶりのマイナスとなった。斉藤国土交通大臣は、今回の認証不正対象車の出荷停止による日本経済への影響は、ダイハツ工業の不正事案に比べて「対象となる車種や生産台数は限定的」との認識を示している。
しかし、低迷する日本経済にとって新たな逆風となることは疑いがない。実質個人消費は、今年1-3月期まで4四半期連続で前期比マイナスとなった。これは、2009年1-3月期のリーマンショック以来のことである。また、1980年まで統計を遡っても、今回を含めて2回しかなく、現在の消費が異例の弱さであることを示している。
さらに、内閣府の消費者態度指数は、円安・物価高懸念の影響から、4月、5月と消費者心理が加速的に悪化していることを示している。これに、今回の不正の影響が加わることで、実質個人消費のマイナスが4-6月期以降も続く、未曾有の事態となる可能性も出てきたのではないか。
出荷停止4か月でGDPは984億円減少
出荷停止となった対象車種の販売台数は、昨年度実績でトヨタの3車種は約12万台、マツダの2種で約1万8000台である(NHKの報道による)。また、ヤマハ発動機の二輪車「YZF-R1」の生産台数は年間約250台とみられる。
さらに、それぞれの車種の平均小売価格は、各社サイトによると、トヨタの「ヤリスクロス」が234.5万円、「カローラアクシオ」が174.4万円、「カローラフィルダー」が189.0万円、マツダの「ロードスターRF」が405.3万円、「マツダ2」が208.6万円、ヤマハ発動機の二輪車「YZF-R1」が277.8万円と計算される。
これらの平均価格に各社の年間販売台数を掛け合わせて合計すると、2,951.1億円となる。
ところで、ダイハツの不正認証のケースでは、2023年12月に国土交通省の立ち入り検査が行われ、生産・開発していた全28種の出荷が停止された。出荷停止がすべて解除されたのは、約4か月後だった。
そこで今回も4か月出荷停止が続くと仮定すると、販売台数の減少額は983.7億円(2,951.1億円÷3)となる。この金額分だけ、GDPは押し下げられると考えられる。その規模は、年間名目GDPの約0.02%だ。
関連業種も含め生産額は2,440億円減少
ところで自動車産業はすそ野の広い業種であり、最終製品の自動車生産が減少すると、関連する産業に広く影響が及ぶ。自動車の生産が一単位増減した場合、川上の産業を含む生産がどの程度増減するかを示すのが生産波及係数であるが、経済産業省の2015年産業連関表によると、輸送機械産業の生産波及係数は2.4822である。これは、自動車の生産額が983.7億円減少すると、関連する業種を含めて生産額全体はその2.4822倍となる2,441.7億円減少する計算となる。
今回の認証不正問題だけで国内景気が大きく左右される訳ではないが、物価高によって異例の弱さを示す個人消費を中心に、国内景気のさらなる逆風となるだろう。
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