FRBの12月の利下げ確率は85%程度まで上昇
米労働省が6日に発表した11月分雇用統計で、非農業雇用者増加数は前月比22万7,000人増加と、事前予想の同20万人増程度を若干上回った。前月の3万6,000人増(速報値では1万2,000人増)から大幅に増加した。
ただし10月分の雇用統計はハリケーンと大規模ストの影響という一時的要因によって急減速していた。10月分と11月分を平均した13万1,500人程度が、実勢に近い雇用者増加ペースと考えられる。また、3か月移動平均値でみても17万3,000人増と増勢鈍化は明確だ。医療と社会補助、 娯楽・ホスピタリティ、政府機関で雇用は増加したが、一方で小売りでは約1年ぶりの大幅減となった。
ハリケーンと大規模ストの影響を大きく受けない家計調査ベースの失業率は4.2%と、前月の4.1%から上昇したことも、雇用情勢の弱さを示唆していると評価された。失業率が上昇したのは、一時的レイオフよりも解雇が多かったことが影響したとみられる。自発的離職者や、すぐに仕事を見つけられなかった人も増えた。27週間以上の失業者数は約3年ぶりの高水準に増加するなど、家計調査は全体的に下振れた。
雇用統計の発表を受けて、金融市場は今月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)が0.25%の利下げを実施するとの観測を強めた。その確率は、統計発表前は67%であったが、発表後には85%以上となった。
トランプ政権の経済政策が年明け後の労働市場に大きな影響
労働市場は着実に軟化してきているものの、米国経済全体はなお安定を維持している。6日、雇用統計の直後に発表された12月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は74.0と11月の71.8から予想以上に上昇し、4月以来で最高水準に達している。1年期待インフレ率速報値も2.9%と、11月の2.6%から予想以上に上昇し、7月以来最高水準となった。
FRBの政策を左右するのは、年明け後のトランプ政権の経済政策だ。一律追加関税の導入は、一時的には物価上昇率を押し上げるが、やや長い目でみれば、米国経済を減速させ、FRBの利下げを促す可能性も考えられる。
不法移民の大量国外退去は、人手不足を深刻にさせ、供給面から米国の成長率を押し下げる可能性がある。またイーロン・マスク氏らが率いる政府効率化省(DOGE)は、政府の無駄な支出を大幅に削減する計画であるが、その過程で連邦職員が大量に解雇され、労働市場には悪影響が及ぶ可能性がある。
このように、年明け以降の米国労働市場は、トランプ政権の経済政策によって大きく影響を受ける可能性が考えられる。
FRBの利下げと日銀の利上げが重なることを避けようとするか
他方でFRBは、12月のFOMCで3会合連続での利下げを実施する後、来年1月には利下げを見送る可能性がある。仮に日本銀行が、自らの追加利上げとFRBの利下げのタイミングが重なることで、急速な円高進行など金融市場に不測の事態を生じることを恐れるのであれば、12月の金融政策決定会合での追加利上げを見送り、1月に実施するという選択肢が出てくる。12月の決定会合までに1ドル140~145円のレンジまで円高が進む場合には、そうした可能性は高まろう。
しかし、為替が概ね現状程度で推移する場合には、12月の決定会合で0.25%の追加利上げを実施する可能性は、50%をわずかに上回るものと見ておきたい。
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