早期利上げに前向きな意見が予想外に多かった
日本銀行は2024年12月27日に、「主な意見」を公表した。追加利上げ見送りを決めた12月18、19日の金融政策決定会合の分である。
主な意見は、政策委員9人が、会合で実際に発言した内容の要旨を自ら作成するものだ。金融政策運営についてのパートでは、12のコメントがあり、委員一人当たり1ないしは2つのコメントが掲載されたと考えられる。
その順番は通常、前半が多数意見、後半が少数意見となっており、冒頭の数コメントは、総裁あるいは副総裁が、対外公表文、総裁の講演会などの表現を意識して作成しているとみられる。今回は最初の6つのコメントが、多数意見を反映し、さらにこの決定会合で追加利上げを見送った理由を正当化している。その中の3つのコメントには、「今回は(あるいは当面は)金融政策の現状維持が適切」との表現が含まれている。
他方、後半の6つのコメントは、現時点において利上げに比較的前向きな内容となっている。その中には、「利上げを判断する局面は近い」、「物価上昇リスクが膨らんでおり」、「前もって金融緩和の度合いの調整を行うことも必要」などのコメントも含まれている。この3つのうち最後のコメントは、金融緩和の調整が遅れ、日本銀行の政策対応が後手に回ってしまう(ビハインドザカーブ)ことを警戒するものだが、同様の主旨のコメントはもう一つあった。
12月18、19日の金融政策決定会合では一人の委員が現状維持に反対し、追加利上げを提案したものの、利上げ見送りが多数の賛成によって決められた。しかし、主な意見での金融政策についてのコメントを見ると、利上げ実施と利上げ見送りの主張はかなり拮抗していたのではないかとの印象である。
主な意見は、政策委員9人が、会合で実際に発言した内容の要旨を自ら作成するものだ。金融政策運営についてのパートでは、12のコメントがあり、委員一人当たり1ないしは2つのコメントが掲載されたと考えられる。
その順番は通常、前半が多数意見、後半が少数意見となっており、冒頭の数コメントは、総裁あるいは副総裁が、対外公表文、総裁の講演会などの表現を意識して作成しているとみられる。今回は最初の6つのコメントが、多数意見を反映し、さらにこの決定会合で追加利上げを見送った理由を正当化している。その中の3つのコメントには、「今回は(あるいは当面は)金融政策の現状維持が適切」との表現が含まれている。
他方、後半の6つのコメントは、現時点において利上げに比較的前向きな内容となっている。その中には、「利上げを判断する局面は近い」、「物価上昇リスクが膨らんでおり」、「前もって金融緩和の度合いの調整を行うことも必要」などのコメントも含まれている。この3つのうち最後のコメントは、金融緩和の調整が遅れ、日本銀行の政策対応が後手に回ってしまう(ビハインドザカーブ)ことを警戒するものだが、同様の主旨のコメントはもう一つあった。
12月18、19日の金融政策決定会合では一人の委員が現状維持に反対し、追加利上げを提案したものの、利上げ見送りが多数の賛成によって決められた。しかし、主な意見での金融政策についてのコメントを見ると、利上げ実施と利上げ見送りの主張はかなり拮抗していたのではないかとの印象である。
国内政治情勢も追加利上げの制約になったか
直前になって金融市場の利上げ観測を無理やり抑え込んだようにも見えた日本銀行の姿勢にはやや違和感があった。衆院選後に少数与党の状態が生まれ、立憲民主党を除き利上げに反対の姿勢が強い野党の意見が、日銀の利上げに一定程度制約となった可能性や、トランプ次期政権の追加関税策の内容次第では、日本経済がかなり悪化することを警戒する与党側の意見も、利上げを制約した可能性もあるのではないか。
しかし、そのような政治的な圧力を直接受けるのは、総裁、副総裁、事務方のみであり、審議委員はそのような情報から遮断されることが一般的と考えられる。そのため、議長案が利上げ見送りとなったことに、違和感を持った審議委員も少なくなかったのではないか。
いずれにせよ、政策委員会の中では早期利上げの意見が相応にあり、日本銀行は現在、利上げ前夜の状況にあると考えられる。
しかし、そのような政治的な圧力を直接受けるのは、総裁、副総裁、事務方のみであり、審議委員はそのような情報から遮断されることが一般的と考えられる。そのため、議長案が利上げ見送りとなったことに、違和感を持った審議委員も少なくなかったのではないか。
いずれにせよ、政策委員会の中では早期利上げの意見が相応にあり、日本銀行は現在、利上げ前夜の状況にあると考えられる。
円安が進めば2025年1月に追加利上げ実施へ
2025年1月20日の大統領就任日あるいはその直後にトランプ次期政権が打ち出す政策が、内外経済、金融市場に大きな混乱をもたらすものである場合、日本銀行が2025年1月23・24日の次回決定会合でも追加利上げを見送る可能性は高まる。
しかし、次回決定会合の段階では、そうしたリスクが大きく顕在化しない、あるいは認識されない一方、円安が急速に進み、物価高を助長する円安を抑制するために日本銀行の利上げを容認する意見が政治サイドで高まる場合には、1月23・24日の次回決定会合で追加利上げが実施される可能性があるだろう。
しかし、次回決定会合の段階では、そうしたリスクが大きく顕在化しない、あるいは認識されない一方、円安が急速に進み、物価高を助長する円安を抑制するために日本銀行の利上げを容認する意見が政治サイドで高まる場合には、1月23・24日の次回決定会合で追加利上げが実施される可能性があるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。