列島改造の5本柱
24日に通常国会が召集される。石破首相は同日、就任後初めての施政方針演説に臨む。報道によると、衆院で少数与党の状況にあることを踏まえて、主要課題について与野党で熟議し、国民の納得と共感を得られるよう努める、という方針を示す見通しだ。「25年度予算や税制改正、さらには社会保障や教育など各分野の施策について多くのご賛同が得られるよう説明を尽くして参る」と訴えるという。
他方、地方創生を中核に据えた経済政策、成長戦略については、「列島改造の5本柱」が示される。男女の賃金格差是正に向けた法整備など「若者や女性にも選ばれる地方」、「産官学の地方移転と創生」、デジタル技術を活用した生活拠点の整備といった「新時代のインフラ整備」などが掲げられる予定だ。さらに、「令和の日本列島改造」を進め、「『楽しい日本』を目指す」とする。
こうした主張は、昨年12月に示された「地方創生2.0の「基本的な考え方」案」で示されていることと重なる。石破首相が好む「楽しい」というキーワードは、堺屋太一氏に由来するようだが、その「楽しい」の具体的な中身をもっと示して欲しい。
「若者や女性にも選ばれる地方」とし、地方に人を呼び戻すためには、地方経済の活性化、ビジネスの創出が必要となるが、その具体策についても今後しっかりと示していって欲しい。
他方、地方創生を中核に据えた経済政策、成長戦略については、「列島改造の5本柱」が示される。男女の賃金格差是正に向けた法整備など「若者や女性にも選ばれる地方」、「産官学の地方移転と創生」、デジタル技術を活用した生活拠点の整備といった「新時代のインフラ整備」などが掲げられる予定だ。さらに、「令和の日本列島改造」を進め、「『楽しい日本』を目指す」とする。
こうした主張は、昨年12月に示された「地方創生2.0の「基本的な考え方」案」で示されていることと重なる。石破首相が好む「楽しい」というキーワードは、堺屋太一氏に由来するようだが、その「楽しい」の具体的な中身をもっと示して欲しい。
「若者や女性にも選ばれる地方」とし、地方に人を呼び戻すためには、地方経済の活性化、ビジネスの創出が必要となるが、その具体策についても今後しっかりと示していって欲しい。
強まる歳出拡大圧力と財政健全化堅持
石破政権が重視する防災・減災については、2026年度からの国土強靱(きょうじん)化の新計画について、現計画の15兆円を上回る事業規模とする方針を表明する予定だ。6月をめどに策定する。
他方、「歳出・歳入両面の改革を継続し、引き続き財政健全化を目指す」と強調する。防災・減災の強化や「103万円の壁」、高校授業料無償化など、年度内に予算を可決するために、野党の主張する政策を取り入れていくことは、歳出拡大につながるものだ。それらが、財政健全化を目指す姿勢と矛盾しないかどうかについて、石破政権はしっかりと説明する必要があるだろう。
政府は、2025年度にプライマリーバランスを黒字化する目標達成を、事実上断念した。もはや黒字化目標は形骸化してしまったのである。形骸化した目標をそのまま放置するよりは、2030年度などへと黒字化目標の達成をさらに先送りした上で、今度こそはそれを達成するための具体策を示し、実行していくのが、財政健全化を目指す姿勢としてはより誠実ではないか。
衆院での少数与党の状況のもと、石破政権は予算成立などに向けて野党にも大きく譲歩を強いられる難しい政策運営が求められる。しかしそうした中であっても、日本経済の活性化に向けて、得意の地方創生を軸に、成長戦略を強く打ち出していって欲しい。そのためには、石破首相が掲げる「地方創生2.0」、「令和の日本列島改造」、「楽しい日本」を、実効性の高い具体策で肉付けをしていくことが今後は求められる。他方で、掛け声だけではない真の財政健全化を追求し、金融市場の安定などを確保しつつ、成長戦略を推進していくことを期待したい。そうした方向性が打ち出されるかどうか、施政方針演説に注目しておきたい。
他方、「歳出・歳入両面の改革を継続し、引き続き財政健全化を目指す」と強調する。防災・減災の強化や「103万円の壁」、高校授業料無償化など、年度内に予算を可決するために、野党の主張する政策を取り入れていくことは、歳出拡大につながるものだ。それらが、財政健全化を目指す姿勢と矛盾しないかどうかについて、石破政権はしっかりと説明する必要があるだろう。
政府は、2025年度にプライマリーバランスを黒字化する目標達成を、事実上断念した。もはや黒字化目標は形骸化してしまったのである。形骸化した目標をそのまま放置するよりは、2030年度などへと黒字化目標の達成をさらに先送りした上で、今度こそはそれを達成するための具体策を示し、実行していくのが、財政健全化を目指す姿勢としてはより誠実ではないか。
衆院での少数与党の状況のもと、石破政権は予算成立などに向けて野党にも大きく譲歩を強いられる難しい政策運営が求められる。しかしそうした中であっても、日本経済の活性化に向けて、得意の地方創生を軸に、成長戦略を強く打ち出していって欲しい。そのためには、石破首相が掲げる「地方創生2.0」、「令和の日本列島改造」、「楽しい日本」を、実効性の高い具体策で肉付けをしていくことが今後は求められる。他方で、掛け声だけではない真の財政健全化を追求し、金融市場の安定などを確保しつつ、成長戦略を推進していくことを期待したい。そうした方向性が打ち出されるかどうか、施政方針演説に注目しておきたい。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。