日米首脳会談後の記者会見でトランプ大統領は「相互関税」導入を明言
石破首相とトランプ米大統領は2月7日、初めての首脳会談に臨んだ。全体としては比較的友好モードの会談となったが、安全保障面ではこの先、日本が防衛費のさらなる増額を米国から求められる可能性を残した。
経済面では、日本が米国からのLNGの輸入拡大を約束した。トランプ大統領から日本に対する関税の具体策についての言及はなかったが、対日貿易赤字を問題視し、関税が選択肢であるとのトランプ大統領の発言はあった。日本製鉄のUSスチール買収問題では、トランプ大統領のもとで事態が改善する兆しもみられている。
日米首脳会談後の記者会見の場でトランプ大統領は、貿易相手国と同様の関税を課す「相互関税」について、「来週の月曜日か火曜日に発表するつもりだ」と表明した。トランプ大統領は大統領選挙期間中から、米国よりも高い関税率を課している国は不公平であると批判し、「トランプ相互貿易法」の制定を公約に掲げていた。トランプ大統領や側近らが今まで名指してきた国は、中国、インド、トルコ、ブラジルなどだ。
日本は工業製品については米国からの輸入品への関税はほぼゼロであることから、「相互関税」の対象にはならない可能性が高いとみられるが、農業分野ではなお関税が残されていることから、対象となる可能性が完全には否定できない。
さらにトランプ大統領は、米政府は2月18日にも半導体、医薬品、鉄鋼、アルミニウム、銅、石油・天然ガスの輸入品に関税を課すと表明している。日本製品がこの関税の対象となる可能性は考えられるところだ。
経済面では、日本が米国からのLNGの輸入拡大を約束した。トランプ大統領から日本に対する関税の具体策についての言及はなかったが、対日貿易赤字を問題視し、関税が選択肢であるとのトランプ大統領の発言はあった。日本製鉄のUSスチール買収問題では、トランプ大統領のもとで事態が改善する兆しもみられている。
日米首脳会談後の記者会見の場でトランプ大統領は、貿易相手国と同様の関税を課す「相互関税」について、「来週の月曜日か火曜日に発表するつもりだ」と表明した。トランプ大統領は大統領選挙期間中から、米国よりも高い関税率を課している国は不公平であると批判し、「トランプ相互貿易法」の制定を公約に掲げていた。トランプ大統領や側近らが今まで名指してきた国は、中国、インド、トルコ、ブラジルなどだ。
日本は工業製品については米国からの輸入品への関税はほぼゼロであることから、「相互関税」の対象にはならない可能性が高いとみられるが、農業分野ではなお関税が残されていることから、対象となる可能性が完全には否定できない。
さらにトランプ大統領は、米政府は2月18日にも半導体、医薬品、鉄鋼、アルミニウム、銅、石油・天然ガスの輸入品に関税を課すと表明している。日本製品がこの関税の対象となる可能性は考えられるところだ。
日本からの自動車輸入への関税は「いつも選択肢としてある」
トランプ大統領は記者会見で、日米首脳会談では、対日関税について「あまり議論しなかった」とした。しかしトランプ大統領は会談の冒頭では、対日貿易赤字を問題視しており、両国間の貿易収支を「平等」にしたいと発言していた。
さらにこれが実現しなければ関税をかける考えがあることも示唆していた。特に自動車への関税については、「いつも選択肢としてある」と明言したのである。
米国の貿易赤字国で日本は7位、輸入額では5位であることから、いずれ日本が、米国貿易赤字の縮小を強く望むトランプ大統領の関税の対象となる可能性は比較的高いのではないか。
さらにこれが実現しなければ関税をかける考えがあることも示唆していた。特に自動車への関税については、「いつも選択肢としてある」と明言したのである。
米国の貿易赤字国で日本は7位、輸入額では5位であることから、いずれ日本が、米国貿易赤字の縮小を強く望むトランプ大統領の関税の対象となる可能性は比較的高いのではないか。
日本製品に10%の一律関税、自動車に25%の関税は、日本のGDPをそれぞれ0.09%、0.08%押し下げる
2024年の日本の輸出全体に占める米国向け輸出の比率は19.9%と国別にみると最大だ。内閣府の短期日本経済計量モデル(2022年版)を用いた試算では、日本から米国向けの輸出全体に10%の一律関税が課せられる場合、実質輸出は2年間で0.26%低下、実質GDPは0.09%低下する計算となる。
また、2024年に日本から米国向け輸出の34.1%を占めた自動車(自動車部品を含む)に25%の関税が課される場合には、実質輸出は2年間で0.22%、実質GDPは0.08%低下する計算となる。
トランプ大統領の発言は常に不明確であり、しばしば修正され、矛盾に満ちており、またその真意は掴みかねない。関税などトランプ政権の経済政策についての不確実性は、世界中の企業の様々なプロジェクトを一時的に止めることを強いているなど、既に世界経済の下方リスクを高めている。
また、2024年に日本から米国向け輸出の34.1%を占めた自動車(自動車部品を含む)に25%の関税が課される場合には、実質輸出は2年間で0.22%、実質GDPは0.08%低下する計算となる。
トランプ大統領の発言は常に不明確であり、しばしば修正され、矛盾に満ちており、またその真意は掴みかねない。関税などトランプ政権の経済政策についての不確実性は、世界中の企業の様々なプロジェクトを一時的に止めることを強いているなど、既に世界経済の下方リスクを高めている。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。