ダウ平均株価は過去3番目の下落幅:ドル円レートは一時144円台
4日の米国市場では、トランプ米政権が2日に発表した相互関税による米国経済への悪影響を警戒し、株価大幅下落の流れが続いた。世界規模で連鎖的な株価の大幅下落とリスク回避傾向が進んでいる。同日に発表された3月米雇用統計は、予想よりも堅調な内容となったが、相互関税発表前の調査であるため、市場のセンチメントを改善させることはなかった。
3日に1,600ドル以上下落したダウ平均株価は4日も続落し、終値で前日比2,231ドルの下落と、一日の下落幅としては過去3番目となった。ナスダック指数は2月の最高値から21%下げ、弱気相場入りした。「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数、いわゆるVIX指数は、45.31と2020年4月以来の高水準となり、市場はパニックの様相を見せ始めている。
さらに、金融市場のリスク回避傾向や米国景気悪化への対応として米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が強まったことで、ドル安の流れが強まり、ドル円レートは一時144円台を付けた。こうした世界の金融市場の動揺に歯止めが掛からなければ、日本ではドル円レートの1ドル130円台入り、日経平均株価の2万円台入りも視野に入ってくるだろう。
3日に1,600ドル以上下落したダウ平均株価は4日も続落し、終値で前日比2,231ドルの下落と、一日の下落幅としては過去3番目となった。ナスダック指数は2月の最高値から21%下げ、弱気相場入りした。「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数、いわゆるVIX指数は、45.31と2020年4月以来の高水準となり、市場はパニックの様相を見せ始めている。
さらに、金融市場のリスク回避傾向や米国景気悪化への対応として米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が強まったことで、ドル安の流れが強まり、ドル円レートは一時144円台を付けた。こうした世界の金融市場の動揺に歯止めが掛からなければ、日本ではドル円レートの1ドル130円台入り、日経平均株価の2万円台入りも視野に入ってくるだろう。
中国の34%の報復関税で報復関税の応酬のリスクが高まる
4日の米国市場で株価下落に拍車をかけたのは、中国が米国に対して34%の追加関税を課すことを発表したことだ。これはトランプ政権が中国に対して34%の相互関税を掛けたことへの報復措置である。
中国は34%の報復関税に加え、サマリウムなどの7種類のレアアースの輸出規制、コーリャンや鶏肉に対するアメリカ企業6社の輸出許可の取り消し、世界貿易機関(WTO)への提訴など様々な措置を打ち出した。
中国は34%の報復関税に加え、サマリウムなどの7種類のレアアースの輸出規制、コーリャンや鶏肉に対するアメリカ企業6社の輸出許可の取り消し、世界貿易機関(WTO)への提訴など様々な措置を打ち出した。
トランプ大統領は関税策を変えないと明言
中国が報復措置を打ち出したことで、報復関税の応酬が米国とその他の国の間で広がり、世界経済のリスクをさらに高めるとの懸念が金融市場に広がったのである。トランプ大統領は、米国の関税に対して報復関税を課した国には、関税率をさらに引き上げる考えを示してきた。
こうした中国側の対応を、トランプ大統領は激しく非難している。トランプ大統領はSNSに、「中国はしくじった。パニックに陥ったからだ。彼らにとってやってはいけないことをやってしまった」と投稿した。さらに関税策については「私の政策は決して変わらない」としている。前日には、相手国から「驚くべき提案」が示されれば、関税の見直しの交渉を検討すると示唆していた。そもそも「驚くべき提案」と表現していることで、実際に交渉に応じるハードルはかなり高いことを示唆したものと考えられるが、4日の発言はさらに関税見直しに否定的な考えを示すものとなった。
こうした中国側の対応を、トランプ大統領は激しく非難している。トランプ大統領はSNSに、「中国はしくじった。パニックに陥ったからだ。彼らにとってやってはいけないことをやってしまった」と投稿した。さらに関税策については「私の政策は決して変わらない」としている。前日には、相手国から「驚くべき提案」が示されれば、関税の見直しの交渉を検討すると示唆していた。そもそも「驚くべき提案」と表現していることで、実際に交渉に応じるハードルはかなり高いことを示唆したものと考えられるが、4日の発言はさらに関税見直しに否定的な考えを示すものとなった。
トランプ大統領は、半年後から1年後の間に関税策の縮小に動くか
混乱状態に陥った金融市場が安定を回復するきっかけになるのは、トランプ大統領が関税策の見直しを実施する考えを示すことだが、当面それは見込めないだろう。さらに、関税実施によって実際に経済がどの程度打撃を受けるかを見極めるまでは、少なくとも金融市場の動揺は続きやすいのではないか。それには、なお数か月から半年程度の時間を要するものと考える。
テキサス州選出の米共和党のテッド・クルーズ上院議員は4日、関税は米経済にとって「巨大なリスク」となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがあると述べた。今までトランプ大統領を強く支持してきた同氏が、トランプ大統領の政策を批判する発言をし始めたことは大きな変化であり注目される。こうした動きが共和党内で広がれば、トランプ大統領が関税策を見直すきっかけになる可能性がある。しかし、現時点ではそこまでの影響力とはなっていない。
実際に関税策の影響から米国内で物価高と景気減速の兆候が広がれば、国民はトランプ関税への批判を高め、共和党内からも2026年の中間選挙への悪影響を懸念して、トランプ大統領に関税策の見直しを促す動きが出てくるだろう。最終的にはトランプ大統領もそれを受け入れる可能性がある。
しかし、トランプ大統領は当面、関税による経済・物価への悪影響、金融市場の動揺は一時的、過渡的なものであり、これに耐えれば米国経済は劇的に強くなる、と主張し続けるだろう。
他方、2026年11月の中間選挙前に関税率を引き下げて物価上昇率を顕著に抑えるためには、少なくとも来年春頃までには関税率の引き下げを実施する必要があると考える。
トランプ大統領は、当面は関税策の大枠を堅持する姿勢を崩さないとみられるが、中間選挙への悪影響を意識して、半年後から1年後の間に関税策の縮小に動くと見ておきたい。
テキサス州選出の米共和党のテッド・クルーズ上院議員は4日、関税は米経済にとって「巨大なリスク」となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがあると述べた。今までトランプ大統領を強く支持してきた同氏が、トランプ大統領の政策を批判する発言をし始めたことは大きな変化であり注目される。こうした動きが共和党内で広がれば、トランプ大統領が関税策を見直すきっかけになる可能性がある。しかし、現時点ではそこまでの影響力とはなっていない。
実際に関税策の影響から米国内で物価高と景気減速の兆候が広がれば、国民はトランプ関税への批判を高め、共和党内からも2026年の中間選挙への悪影響を懸念して、トランプ大統領に関税策の見直しを促す動きが出てくるだろう。最終的にはトランプ大統領もそれを受け入れる可能性がある。
しかし、トランプ大統領は当面、関税による経済・物価への悪影響、金融市場の動揺は一時的、過渡的なものであり、これに耐えれば米国経済は劇的に強くなる、と主張し続けるだろう。
他方、2026年11月の中間選挙前に関税率を引き下げて物価上昇率を顕著に抑えるためには、少なくとも来年春頃までには関税率の引き下げを実施する必要があると考える。
トランプ大統領は、当面は関税策の大枠を堅持する姿勢を崩さないとみられるが、中間選挙への悪影響を意識して、半年後から1年後の間に関税策の縮小に動くと見ておきたい。
金融市場の動揺がトランプ関税の見直しを早めるか
ただし、現状のように金融市場の動揺が続き、金融危機の様相が強まれば、その時期は早まるのではないか。この点で、株価の大幅下落など金融市場の動揺は、最終的には世界経済の大きなリスクであるトランプ関税を見直すきっかけとなり得る。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。