中国には合計で104%の関税
トランプ米政権は、2日に発表した相互関税について、5日に全世界を対象に10%の一律関税を実施したが、9日には各国・地域ごとに関税率を上乗せする。日本には24%の関税が課されることになる。米東部時間9日午前0時1分、日本時間同日午後1時1分に発動される。既に25%の分野別関税が課されている鉄鋼・アルミニウム製品、自動車、また今後、分野別関税が課される予定の半導体、医薬品などについては、相互関税の対象から外される。
ダウ平均株価は8日、一時1,400ドルを超える上昇を示した。報復関税を打ち出した中国に対する50%の上乗せ関税が交渉を通じて見送られる、との期待も株価上昇を後押しした。しかし、レビット米大統領報道官が、中国製品に計104%の関税を課すと発表したことをきっかけに、これが報復関税の応酬へと発展し、世界経済が大きく悪化するとの懸念から、ダウ平均株価は下落に転じ、前日比320ドル安で取引を終えた。
中国については、第2次トランプ政権下で既に20%の関税率が課されているが、これに相互関税の上乗せ分で34%、そして中国が報復関税を打ち出したことへの制裁でさらに50%の関税が上乗せされ、合計で104%となる。第1次トランプ政権で課された関税分を加えると、さらに関税率は高くなる。
ダウ平均株価は8日、一時1,400ドルを超える上昇を示した。報復関税を打ち出した中国に対する50%の上乗せ関税が交渉を通じて見送られる、との期待も株価上昇を後押しした。しかし、レビット米大統領報道官が、中国製品に計104%の関税を課すと発表したことをきっかけに、これが報復関税の応酬へと発展し、世界経済が大きく悪化するとの懸念から、ダウ平均株価は下落に転じ、前日比320ドル安で取引を終えた。
中国については、第2次トランプ政権下で既に20%の関税率が課されているが、これに相互関税の上乗せ分で34%、そして中国が報復関税を打ち出したことへの制裁でさらに50%の関税が上乗せされ、合計で104%となる。第1次トランプ政権で課された関税分を加えると、さらに関税率は高くなる。
70か国がトランプ政権に交渉を申し出ている
レビット報道官は、「(相互関税を発表した)2日以降、70か国が交渉を申し出ている」ことを誇らしげに明らかにした。また、「相互関税は発効する。トランプ大統領は電話をかけてくるどの国とも交渉する。電話が鳴りやまないのは確実だ」とも説明した。
トランプ政権が、多くの国が交渉を申し出ていることを明らかにし、また交渉に応じる姿勢を見せている背景には、多くの国がトランプ政権に屈服していること、それが、関税策が正しいことの表れであることを世界にアピールするとともに、報復関税で敵対する中国をけん制する、あるいは今後報復関税を打ち出すことを検討する国を牽制する狙いがあるのだろう。
トランプ大統領は関税を恒久化する国もあれば、交渉により引き下げる国もある、と説明している。トランプ政権は当初、交渉の余地に否定的な発言をしていたことを踏まえると、若干態度が軟化したようにも見える。ただし、トランプ政権が比較的早期に関税の見直しに応じるのは、対米貿易黒字、輸出額が比較的小さい国、あるいは弱小国に限られると考えられる。例えば、ベトナム、カンボジア、インド、南アフリカの小国レソトなどだろう。
ベトナムは米国製品にかける関税の全面的な撤廃を検討している。インドは関税撤廃や規制の見直しを含む2国間の貿易協定締結に向けて、米国と交渉している。カンボジアも4日に、35%課税しているウイスキーを含む19品目の関税を5%に下げると米国に伝えている。
他方、巨額な貿易赤字額、輸入額を抱える主要国については、関税を恒久化するのが基本方針ではないか。
トランプ政権が、多くの国が交渉を申し出ていることを明らかにし、また交渉に応じる姿勢を見せている背景には、多くの国がトランプ政権に屈服していること、それが、関税策が正しいことの表れであることを世界にアピールするとともに、報復関税で敵対する中国をけん制する、あるいは今後報復関税を打ち出すことを検討する国を牽制する狙いがあるのだろう。
トランプ大統領は関税を恒久化する国もあれば、交渉により引き下げる国もある、と説明している。トランプ政権は当初、交渉の余地に否定的な発言をしていたことを踏まえると、若干態度が軟化したようにも見える。ただし、トランプ政権が比較的早期に関税の見直しに応じるのは、対米貿易黒字、輸出額が比較的小さい国、あるいは弱小国に限られると考えられる。例えば、ベトナム、カンボジア、インド、南アフリカの小国レソトなどだろう。
ベトナムは米国製品にかける関税の全面的な撤廃を検討している。インドは関税撤廃や規制の見直しを含む2国間の貿易協定締結に向けて、米国と交渉している。カンボジアも4日に、35%課税しているウイスキーを含む19品目の関税を5%に下げると米国に伝えている。
他方、巨額な貿易赤字額、輸入額を抱える主要国については、関税を恒久化するのが基本方針ではないか。
日本の関税の大幅見直しは2国間交渉では実現しにくい
日本も米国との交渉を開始する。トランプ政権からは、両国間の貿易不均衡を是正するために、日本に対してその障壁、特に非関税障壁を取り除くことを要求するだろう。日本も、米国製品の輸入拡大を後押しする様々な施策を提示することになるだろう。
しかし、トランプ政権が小幅ではなく本格的な関税の見直しに応じるのは、日本の対米黒字を短期間で劇的に削減するような「驚くような提案」をする場合に限られるのではないか。日本など、米国にとっての貿易赤字額、輸入額の上位の国については、2国間交渉を通じて関税を大きく見直すことになる可能性は低いのではないか。
関税の本格的な見直しは、主要国については個別でなされるのではなく、いずれ、一括で行われるものと考えられる。トランプ政権見直しは、物価高への不満など、米国国民が関税策への批判を高め、それが来年の中間選挙で共和党にかなり不利に働く可能性が高まる場合、あるいは関税策が世界経済に与える悪影響を懸念して金融市場の混乱が深まる場合に実施されるのではないか。
本格的な関税見直しは、選挙を意識した場合に向こう半年から1年の間、金融市場の混乱によって前倒しされる場合には向こう3~4か月程度で実施されると見ておきたい。
(参考資料)
「トランプ関税、中国104%に 70カ国交渉も世界不況懸念」、2025年4月9日、日本経済新聞電子版
しかし、トランプ政権が小幅ではなく本格的な関税の見直しに応じるのは、日本の対米黒字を短期間で劇的に削減するような「驚くような提案」をする場合に限られるのではないか。日本など、米国にとっての貿易赤字額、輸入額の上位の国については、2国間交渉を通じて関税を大きく見直すことになる可能性は低いのではないか。
関税の本格的な見直しは、主要国については個別でなされるのではなく、いずれ、一括で行われるものと考えられる。トランプ政権見直しは、物価高への不満など、米国国民が関税策への批判を高め、それが来年の中間選挙で共和党にかなり不利に働く可能性が高まる場合、あるいは関税策が世界経済に与える悪影響を懸念して金融市場の混乱が深まる場合に実施されるのではないか。
本格的な関税見直しは、選挙を意識した場合に向こう半年から1年の間、金融市場の混乱によって前倒しされる場合には向こう3~4か月程度で実施されると見ておきたい。
(参考資料)
「トランプ関税、中国104%に 70カ国交渉も世界不況懸念」、2025年4月9日、日本経済新聞電子版
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。