過激さを増すトランプ大統領によるパウエル議長への攻撃
4月21日の東京市場で、ドル円レートは1ドル140円台前半までドル安円高が進み、130円台が目前に迫っている。昨年9月につけた139円台半ばの水準を超えれば、ドル安円高の流れに一段と弾みがつく可能性がある。
21日の米国市場では、ダウ平均株価は一時1,300ドルを超える大幅下落となった。さらに、債券、ドルともに売られ、トリプル安が進んだ。トランプ政権による相互関税の発表以降、米国の経済環境、経済政策についての不確実性が強まる中、米国資産への信頼が低下し、ドル資産離れが進んでいる。
こうした傾向をさらに強めているのが、トランプ大統領による米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に対する執拗な攻撃だ。トランプ大統領は連日、パウエル議長に対して利下げを求め、不当な圧力をかけている。21日には、原油価格が下がる中「インフレはほぼ起こり得ない」とし、利下げに慎重なパウエル議長を「ミスター・トゥー・レイト(Mr. Too Late:遅すぎる男)と揶揄した。また、「とんでもない負け犬(a major loser)」と罵ったのである。
トランプ大統領は17日には、パウエル議長の「解任は一刻も早く実現すべきだ!」、「(パウエル氏に)辞めるよう要求すれば、辞任するだろう」、「彼の仕事ぶりには不満だ。そう彼に伝えた」とパウエル議長を解任する考えを示唆した。
このように過激さを増すトランプ大統領によるパウエル議長への攻撃が、相互関税発表以降の米国金融市場の混乱を増幅している。通貨の番人であり政治から独立しているFRBへの政治介入とパウエル議長の解任懸念が、米国金融資産全体の信頼性と価値を押し下げている。
21日の米国市場では、ダウ平均株価は一時1,300ドルを超える大幅下落となった。さらに、債券、ドルともに売られ、トリプル安が進んだ。トランプ政権による相互関税の発表以降、米国の経済環境、経済政策についての不確実性が強まる中、米国資産への信頼が低下し、ドル資産離れが進んでいる。
こうした傾向をさらに強めているのが、トランプ大統領による米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に対する執拗な攻撃だ。トランプ大統領は連日、パウエル議長に対して利下げを求め、不当な圧力をかけている。21日には、原油価格が下がる中「インフレはほぼ起こり得ない」とし、利下げに慎重なパウエル議長を「ミスター・トゥー・レイト(Mr. Too Late:遅すぎる男)と揶揄した。また、「とんでもない負け犬(a major loser)」と罵ったのである。
トランプ大統領は17日には、パウエル議長の「解任は一刻も早く実現すべきだ!」、「(パウエル氏に)辞めるよう要求すれば、辞任するだろう」、「彼の仕事ぶりには不満だ。そう彼に伝えた」とパウエル議長を解任する考えを示唆した。
このように過激さを増すトランプ大統領によるパウエル議長への攻撃が、相互関税発表以降の米国金融市場の混乱を増幅している。通貨の番人であり政治から独立しているFRBへの政治介入とパウエル議長の解任懸念が、米国金融資産全体の信頼性と価値を押し下げている。
パウエル議長の解任、辞任となれば米国金融市場はさらに混乱
トランプ大統領は政権一期目にも、FRBのイエレン議長とパウエル議長の解任を検討した。連邦準備法は正当な理由がない限り、議長の解任を認めておらず、大統領が任期途中に議長を解任することの法的ハードルがかなり高いことをトランプ大統領は既に認識しているだろう。そこで今度は、議長としての任期を来年5月に迎えるパウエル議長に対して圧力をかけることで、自ら辞任を選択するように追い込む戦略に転じたのではないか。
トランプ大統領がFRBの金融政策に不当な政治介入を行い、利下げを強く迫るほど、FRBは利下げにより慎重になってしまう可能性がある。つまり逆効果だ。大統領の圧力に屈して利下げに転じれば、FRBの信認が低下してしまう恐れがあるためだ。
パウエル議長は辞任をしない意向を過去に何度も示しており、トランプ大統領との対決姿勢を露わにしている。実際、パウエル議長は解任も辞任もしない可能性が高いとみられるが、仮にそのどちらかが起これば、米国金融市場は大きく混乱し、トリプル安の傾向がより強まるだろう。
相互関税を受けて金融市場が動揺した際には、ウォール街出身のベッセント財務長官らが、金融市場の安定回復を狙って関税の見直しをトランプ大統領に進言したとされる。トランプ大統領によるパウエル議長への執拗な攻撃が、金融市場を混乱させ続ける場合には、再びベッセント財務長官が、トランプ大統領を諫めることになる可能性もあるだろう。
トランプ大統領がFRBの金融政策に不当な政治介入を行い、利下げを強く迫るほど、FRBは利下げにより慎重になってしまう可能性がある。つまり逆効果だ。大統領の圧力に屈して利下げに転じれば、FRBの信認が低下してしまう恐れがあるためだ。
パウエル議長は辞任をしない意向を過去に何度も示しており、トランプ大統領との対決姿勢を露わにしている。実際、パウエル議長は解任も辞任もしない可能性が高いとみられるが、仮にそのどちらかが起これば、米国金融市場は大きく混乱し、トリプル安の傾向がより強まるだろう。
相互関税を受けて金融市場が動揺した際には、ウォール街出身のベッセント財務長官らが、金融市場の安定回復を狙って関税の見直しをトランプ大統領に進言したとされる。トランプ大統領によるパウエル議長への執拗な攻撃が、金融市場を混乱させ続ける場合には、再びベッセント財務長官が、トランプ大統領を諫めることになる可能性もあるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。