日本政府は関税協議の合意を急いでいない
日本時間の24日(土)に、3回目となる日米関税協議がワシントンで行われた。赤沢経済再生担当大臣は協議終了後の記者会見で、「前回以上に率直かつ突っ込んだやりとりをした」とする一方、「(日米の溝が)縮まったと申し上げる段階にない」と話した。この点から、今回の協議ではほぼ議論の進展はなかったのではないか、と推察される。
米国側の出席者を見ると、協議に向けたトランプ政権の熱意が低下している可能性が感じられる。1回目の会合では冒頭にトランプ大統領が出席した。2回目の会合では、大統領は出席せず、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官、グリア米国通商代表部(USTR)代表が出席した。今回は都合によりベッセント財務長官は欠席し、赤沢大臣は、ラトニック商務長官、グリアUSTR代表と別々の会談となった。
日本政府によると、赤沢大臣とグリア代表との協議では、貿易の拡大や非関税措置、経済安全保障での協力などについて意見を交わしたという。また6月のG7サミット(主要7か国首脳会談)の場で行われる日米首脳会談での合意を目指して、閣僚間で緊密に協議を続けることで両国は一致したという。
赤沢大臣は、首脳会談での合意を視野に、「政府一丸となって、最優先・全力で取り組む」と話した。しかし一方で、「期限を切って交渉すると、大体期限を抱えている方が負ける」とも言及し、首脳会談が交渉期限ではないとも説明した。赤沢大臣は、合意を急ぐあまりに日本の国益を損ねるような施策の実施を米国側に約束することはない、との主旨の説明を繰り返している。
自動車の関税率の引き下げや関税撤廃を強く求める国内の自動車メーカーや、合意を急ぐトランプ政権に配慮して、日本政府は早期の合意を目指す姿勢を表面的には示しているが、本音では合意を急いでいないのではないか。そうした姿勢は、夏の参院選までは続くことが見込まれる。
米国側の出席者を見ると、協議に向けたトランプ政権の熱意が低下している可能性が感じられる。1回目の会合では冒頭にトランプ大統領が出席した。2回目の会合では、大統領は出席せず、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官、グリア米国通商代表部(USTR)代表が出席した。今回は都合によりベッセント財務長官は欠席し、赤沢大臣は、ラトニック商務長官、グリアUSTR代表と別々の会談となった。
日本政府によると、赤沢大臣とグリア代表との協議では、貿易の拡大や非関税措置、経済安全保障での協力などについて意見を交わしたという。また6月のG7サミット(主要7か国首脳会談)の場で行われる日米首脳会談での合意を目指して、閣僚間で緊密に協議を続けることで両国は一致したという。
赤沢大臣は、首脳会談での合意を視野に、「政府一丸となって、最優先・全力で取り組む」と話した。しかし一方で、「期限を切って交渉すると、大体期限を抱えている方が負ける」とも言及し、首脳会談が交渉期限ではないとも説明した。赤沢大臣は、合意を急ぐあまりに日本の国益を損ねるような施策の実施を米国側に約束することはない、との主旨の説明を繰り返している。
自動車の関税率の引き下げや関税撤廃を強く求める国内の自動車メーカーや、合意を急ぐトランプ政権に配慮して、日本政府は早期の合意を目指す姿勢を表面的には示しているが、本音では合意を急いでいないのではないか。そうした姿勢は、夏の参院選までは続くことが見込まれる。
トランプ大統領は合意の遅れに不満を持ち日本に圧力をかけてくるか
しかし、こうした日本側の姿勢を見て、トランプ大統領が、合意成立を急ぐように日本に圧力をかけてくる可能性があり、その場合には、日本政府も戦略の見直しを迫られる可能性があるだろう。
トランプ米大統領は23日にSNSで、欧州連合(EU)からの輸入品に50%の関税を6月1日から課すべき、と主張した。トランプ大統領はEUとの間の関税協議が進んでいないことや、EUが米国の関税策に対して報復措置を検討していることに強い不満を抱いており、それが今回の発言につながっている。
対米報復措置を検討しているEUとそうでない日本とでは、トランプ政権の対応は異なると考えられるが、日米関税協議がなかなか進展しないことにしびれを切らせて、トランプ大統領が相互関税の引き上げの可能性を示唆したり、また、為替政策や安全保障政策と結び付ける形で、日本側に貿易政策で譲歩を迫る可能性も考えられるところだ。
この点から、トランプ大統領側の要請で23日に急遽実施された日米首脳会談で何が話されたのかは興味深いところだ。両者は経済安全保障分野で協力していくことや造船分野での連携について話したとされる。また首相は電話会談で、自動車や鉄鋼・アルミニウムを含めた関税措置の撤廃を求める立場を改めて伝えたと、自ら語っている。
トランプ大統領は日米首脳電話会談で、次世代戦闘機F47の開発、ステルス戦闘機F22の能力を向上させる方針を石破首相に説明したとも報じられている。安全保障問題と絡める形で、トランプ大統領が石破首相に関税協議の早期合意で圧力をかけた可能性もあるのではないか。
トランプ米大統領は23日にSNSで、欧州連合(EU)からの輸入品に50%の関税を6月1日から課すべき、と主張した。トランプ大統領はEUとの間の関税協議が進んでいないことや、EUが米国の関税策に対して報復措置を検討していることに強い不満を抱いており、それが今回の発言につながっている。
対米報復措置を検討しているEUとそうでない日本とでは、トランプ政権の対応は異なると考えられるが、日米関税協議がなかなか進展しないことにしびれを切らせて、トランプ大統領が相互関税の引き上げの可能性を示唆したり、また、為替政策や安全保障政策と結び付ける形で、日本側に貿易政策で譲歩を迫る可能性も考えられるところだ。
この点から、トランプ大統領側の要請で23日に急遽実施された日米首脳会談で何が話されたのかは興味深いところだ。両者は経済安全保障分野で協力していくことや造船分野での連携について話したとされる。また首相は電話会談で、自動車や鉄鋼・アルミニウムを含めた関税措置の撤廃を求める立場を改めて伝えたと、自ら語っている。
トランプ大統領は日米首脳電話会談で、次世代戦闘機F47の開発、ステルス戦闘機F22の能力を向上させる方針を石破首相に説明したとも報じられている。安全保障問題と絡める形で、トランプ大統領が石破首相に関税協議の早期合意で圧力をかけた可能性もあるのではないか。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。