米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は5日に、約90分間にわたる電話会談を行った。5月の米中貿易合意で約束した中国によるレアアースの輸出規制解除について、トランプ政権は中国がその約束を履行していないと強く批判し、それをきっかけに米中関係には再び緊張が高まった。
5月の米中貿易合意に至った両国の協議と同様に、今回も米中首脳電話会談を呼び掛けたのはトランプ政権側だった。最終的に習国家主席は米中首脳電話会談に応じたが、それまでの米国への対応と同様、比較的冷ややかだったように、報道からは感じられる。
両国間の高い関税率や中国のレアアースの輸出規制は、米国経済に甚大な悪影響を与えることから、両国の貿易政策における対立について、米国の耐性はより低いだろう。今回の米中首脳電話会談ではそれが改めて露呈された感がある。今後も中国は米国に対して強い姿勢を維持し、大きな譲歩をすることはないだろう。
電話会談では、両国間の貿易問題の解決に向けて、米中当局者が近く協議することで合意した。トランプ大統領はSNSへの投稿で、「非常に良い会談であり、両国にとって非常に前向きな結論に至った」と述べた。また、「レアアース製品を巡る複雑な問題は解消されるはずだ」とした。さらに次回の新たな協議には、米国からベッセント財務長官、ラトニック商務長官、米通商代表部(USTR)のグリア代表が参加する予定であることを明らかにした。
その後、トランプ大統領は記者団からの質問に答えて、「習主席が私を中国に招き、私も習主席をアメリカに招いた。両者とも招待を受け入れた」と述べ、両国の関係が良好であることを演出した。
しかし中国側の報道によると習主席は、「中国は合意を真剣に履行してきた。米国は事実に基づいて進展を評価し、中国への否定的な措置を撤回すべきだ」と述べたという。レアアースの輸出規制を解除するという合意を履行しなかったというトランプ政権の主張を習主席は否定した上で、米国による半導体の対中輸出規制や中国人学生に対する新たなビザ制限措置などを強く批判している。両国の主張が食い違っている状況はなお続いているのである。
さらに、貿易を巡る会談であったにもかかわらず、習主席は台湾問題についても言及した、と中国側は発表している。習主席は、「米国は慎重に対応するべきでごく少数の『台湾独立』分子が両国を衝突と対立の危険な状況に陥れることを避けるべきだ」と、台湾問題に対する米国の関与を強くけん制したという。
トランプ大統領の説明のみを聞くと、両国の対立が緩和に向かっている印象となるが、中国側の発表からは、両国の対立の根は依然深いことが推察できる。対立が簡単に緩和されることはないだろう。さらに、5月の米中貿易合意に至った両国の協議と同様に、今回も米中首脳電話会談を呼び掛けたのはトランプ政権側だったことからも、協議では中国側が優位に立つことが想像される。トランプ政権にとっても厳しい協議となるだろう。
5月の米中貿易合意に至った両国の協議と同様に、今回も米中首脳電話会談を呼び掛けたのはトランプ政権側だった。最終的に習国家主席は米中首脳電話会談に応じたが、それまでの米国への対応と同様、比較的冷ややかだったように、報道からは感じられる。
両国間の高い関税率や中国のレアアースの輸出規制は、米国経済に甚大な悪影響を与えることから、両国の貿易政策における対立について、米国の耐性はより低いだろう。今回の米中首脳電話会談ではそれが改めて露呈された感がある。今後も中国は米国に対して強い姿勢を維持し、大きな譲歩をすることはないだろう。
電話会談では、両国間の貿易問題の解決に向けて、米中当局者が近く協議することで合意した。トランプ大統領はSNSへの投稿で、「非常に良い会談であり、両国にとって非常に前向きな結論に至った」と述べた。また、「レアアース製品を巡る複雑な問題は解消されるはずだ」とした。さらに次回の新たな協議には、米国からベッセント財務長官、ラトニック商務長官、米通商代表部(USTR)のグリア代表が参加する予定であることを明らかにした。
その後、トランプ大統領は記者団からの質問に答えて、「習主席が私を中国に招き、私も習主席をアメリカに招いた。両者とも招待を受け入れた」と述べ、両国の関係が良好であることを演出した。
しかし中国側の報道によると習主席は、「中国は合意を真剣に履行してきた。米国は事実に基づいて進展を評価し、中国への否定的な措置を撤回すべきだ」と述べたという。レアアースの輸出規制を解除するという合意を履行しなかったというトランプ政権の主張を習主席は否定した上で、米国による半導体の対中輸出規制や中国人学生に対する新たなビザ制限措置などを強く批判している。両国の主張が食い違っている状況はなお続いているのである。
さらに、貿易を巡る会談であったにもかかわらず、習主席は台湾問題についても言及した、と中国側は発表している。習主席は、「米国は慎重に対応するべきでごく少数の『台湾独立』分子が両国を衝突と対立の危険な状況に陥れることを避けるべきだ」と、台湾問題に対する米国の関与を強くけん制したという。
トランプ大統領の説明のみを聞くと、両国の対立が緩和に向かっている印象となるが、中国側の発表からは、両国の対立の根は依然深いことが推察できる。対立が簡単に緩和されることはないだろう。さらに、5月の米中貿易合意に至った両国の協議と同様に、今回も米中首脳電話会談を呼び掛けたのはトランプ政権側だったことからも、協議では中国側が優位に立つことが想像される。トランプ政権にとっても厳しい協議となるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。