都議選は参院選の前哨戦と言えない面も
6月22日に投開票が行われた東京都議会議員選挙で、小池知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」は31議席獲得し、第1党を奪還した。一方、自民党は21議席と過去最低となり、第1党の座を失った。政治資金収支報告書への不記載の問題が大きく影響した。公明党も議席を落とし、9回連続の全員当選とはならなかった。他方で、国民民主党と参政党が初めての議席を獲得した。
都民ファーストの会、自民、公明各党によるいわゆる「知事与党」勢力が過半数を維持したことで、小池知事の都政運営には大きな変化は生じないとみられる。
今年は都議会選と参院選が重なる12年に1度の年だ。過去を振り返れば、多くのケースで都議選と参院選が似た結果となる傾向が見られ、今回の都議選は参院選の前哨戦とも位置付けられている。
ただし、自民党から最大議席を獲得した中道右派とされる地域政党の「都民ファーストの会」に票が流れた可能性もあり、国政選挙では自民党は今回の選挙ほどの逆風には見舞われない可能性もある。この点から、都議選は参院選の先行指標と言えない面もあるだろう。
都民ファーストの会、自民、公明各党によるいわゆる「知事与党」勢力が過半数を維持したことで、小池知事の都政運営には大きな変化は生じないとみられる。
今年は都議会選と参院選が重なる12年に1度の年だ。過去を振り返れば、多くのケースで都議選と参院選が似た結果となる傾向が見られ、今回の都議選は参院選の前哨戦とも位置付けられている。
ただし、自民党から最大議席を獲得した中道右派とされる地域政党の「都民ファーストの会」に票が流れた可能性もあり、国政選挙では自民党は今回の選挙ほどの逆風には見舞われない可能性もある。この点から、都議選は参院選の先行指標と言えない面もあるだろう。
参院選後に連立の組み換えは生じるか
7月20日投票が有力である参院選が次の政治日程上の注目点となるが、金融市場がその結果を予想して織り込んでいくことは難しい。与党が参院で過半数の議席を維持すれば、政権の枠組みは維持される可能性が高まるが、その際には、衆院での少数与党として綱渡りの政権運営が続き、政治情勢も不安定化する可能性がある。財政政策は野党の影響を受けやすく、積極財政の傾向が続くことで、円安、債券安(長期金利上昇)要因となるだろう。
他方、与党が参院で過半数の議席を失えば、政治の不安定性は強まり、直後の金融市場は不安定化しやすい。そうした事態は、特に株式市場で嫌気されるだろう。
ただし、参院でも与党が過半数割れとなれば、政権運営はいよいよ行き詰まることから、与党が野党の一部を連立政権に取り込み、政権の枠組み変更が起こる可能性が高まる。それは政治の安定回復に繋がることから、株式市場に好感されやすいだろう。
他方、与党が参院で過半数の議席を失えば、政治の不安定性は強まり、直後の金融市場は不安定化しやすい。そうした事態は、特に株式市場で嫌気されるだろう。
ただし、参院でも与党が過半数割れとなれば、政権運営はいよいよ行き詰まることから、与党が野党の一部を連立政権に取り込み、政権の枠組み変更が起こる可能性が高まる。それは政治の安定回復に繋がることから、株式市場に好感されやすいだろう。
参院選挙後の政治情勢と経済政策運営についてはなお数多くのシナリオ
しかし、連立相手がどの野党になるかで、経済政策には大きな違いが出てくる。立憲民主党(あるいはその一部)との連立となれば、財政健全化色は強まり、また日本銀行の利上げを容認する傾向は強まるだろう。これは短期的には株式市場にはマイナスになるかもしれないが、債券高(長期金利低下)、円高要因となる。
他方、よりリベラル色(左派色)の強い国民民主党との連立となれば、消費税減税の実施も含め、積極財政色が強まる一方、日本銀行の利上げを牽制する傾向が強まる。これは短期的には株式市場にプラスとなる可能性があるが、円安、債券安(長期金利上昇)の傾向が強まるだろう。日本維新の会との連立の場合には、両者の中間となることが予想される。
立憲民主党(あるいはその一部)との連立が成立するかどうかについては、参院選で立憲民主党の議席がどう変化するかにも依存しよう。議席を減らす場合には、単独での政権奪取が遠のくことで、むしろ連立政権入りを受け入れる可能性が高まることになるかもしれない。
このように、参院選挙後の政治情勢と経済政策運営については、なお数多くのシナリオが残されている状況だ。都議会選の結果からそれを推測して金融市場が予め動くことは難しい。
他方、よりリベラル色(左派色)の強い国民民主党との連立となれば、消費税減税の実施も含め、積極財政色が強まる一方、日本銀行の利上げを牽制する傾向が強まる。これは短期的には株式市場にプラスとなる可能性があるが、円安、債券安(長期金利上昇)の傾向が強まるだろう。日本維新の会との連立の場合には、両者の中間となることが予想される。
立憲民主党(あるいはその一部)との連立が成立するかどうかについては、参院選で立憲民主党の議席がどう変化するかにも依存しよう。議席を減らす場合には、単独での政権奪取が遠のくことで、むしろ連立政権入りを受け入れる可能性が高まることになるかもしれない。
このように、参院選挙後の政治情勢と経済政策運営については、なお数多くのシナリオが残されている状況だ。都議会選の結果からそれを推測して金融市場が予め動くことは難しい。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。