参院選は7月20日の投開票に向けて、序盤から中盤に入りつつある。今回の選挙は、選挙結果次第で政権の枠組み修正や政権交代の引き金となる可能性もあり、いつになく重要な参院選である。各種調査により、序盤の情勢が明らかなっているが、それによると、与党の自民党・公明党が非改選を含めて参院で過半数の議席を維持できるかどうかは微妙な情勢だ。
与党が過半数の議席を維持できれば、現在の政権の枠組みは維持されると考えられる。与党が国民から一定程度の支持を得たことになり、政権遂行能力は多少回復される可能性があるだろう。しかし、衆院で少数与党であることは変わらず、予算を中心に野党の協力を仰がなければ政策が前に進まない、不安定な政治情勢が続く。
他方、与党が過半数の議席を失う場合には、石破政権がその責任をとって内閣総辞職を決めた後、衆院で野党が連携すれば、野党候補者が首班指名を獲得して、政権交代が実現する可能性がある。
しかし現時点で野党がそこまで連携できる可能性は高くない。その場合、安定した政権運営のために、与党は野党の一部を政権に取り込む可能性が高まるだろう。その場合、主な連立の相手は立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の3党となるが、与党がどの野党を連立政権に取り入れるかで、その後の政策は大きく異なってくる。
このように、参院選後の政治情勢は不透明であり、そのため経済政策も読みにくい。投資家は、与党が過半数の議席を維持するか否かだけにかけて投資行動を起こすことはできない。その結果、参院選に向けて金融市場の思惑は交錯し、ボラティリティが高まりやすい状況と言えるだろう。この参院選とトランプ相互関税の見直しが重なっていることも、金融市場のボラティリティを増幅している。
そこで、現時点での選挙結果、その後の政権の枠組み及び経済政策についてシナリオを作成し、それぞれについて金融市場がどう反応するかについて筆者の見方を提示した(図表)。なお同表は、参院選までの情勢変化を踏まえて、今後随時修正する可能性がある。
与党が過半数の議席を維持できれば、現在の政権の枠組みは維持されると考えられる。与党が国民から一定程度の支持を得たことになり、政権遂行能力は多少回復される可能性があるだろう。しかし、衆院で少数与党であることは変わらず、予算を中心に野党の協力を仰がなければ政策が前に進まない、不安定な政治情勢が続く。
他方、与党が過半数の議席を失う場合には、石破政権がその責任をとって内閣総辞職を決めた後、衆院で野党が連携すれば、野党候補者が首班指名を獲得して、政権交代が実現する可能性がある。
しかし現時点で野党がそこまで連携できる可能性は高くない。その場合、安定した政権運営のために、与党は野党の一部を政権に取り込む可能性が高まるだろう。その場合、主な連立の相手は立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の3党となるが、与党がどの野党を連立政権に取り入れるかで、その後の政策は大きく異なってくる。
このように、参院選後の政治情勢は不透明であり、そのため経済政策も読みにくい。投資家は、与党が過半数の議席を維持するか否かだけにかけて投資行動を起こすことはできない。その結果、参院選に向けて金融市場の思惑は交錯し、ボラティリティが高まりやすい状況と言えるだろう。この参院選とトランプ相互関税の見直しが重なっていることも、金融市場のボラティリティを増幅している。
そこで、現時点での選挙結果、その後の政権の枠組み及び経済政策についてシナリオを作成し、それぞれについて金融市場がどう反応するかについて筆者の見方を提示した(図表)。なお同表は、参院選までの情勢変化を踏まえて、今後随時修正する可能性がある。
図表 参院選挙と金融市場の見通し


プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。