企業は選挙後の経済対策に期待も財政規律は重視
ロイター通信社が7月2日~11日に実施し、17日に発表した7月企業調査によると、与党が掲げる補正予算を支持する回答が多かった一方、財政規律を重視する回答も高い割合となった。
物価高や米国の関税措置への対応のために参院選挙後に補正予算を編成すべき、との回答が71%を占めた。「景気後退に陥らないようにしてほしい」(紙・パルプ)という意見も聞かれた。与党は、選挙後の補正予算で財源を手当てし、一人当たり2万円の給付を実施する考えだ。
他方で企業は、財政規律を重視する姿勢も見せている。経済対策の財源としては「歳出カット」が38%、「税収の上振れ分活用」が36%と回答割合の上位を占めた。他方「国債発行」との回答は14%にとどまっている。
予算編成に反対する企業からは、「ただの無駄遣い」(電機)、「国家の危機的な状況対応でもない限り不要。補正予算の常態化は異常」(サービス)、「財政安定化を優先すべき」(化学)などの意見が聞かれた。
企業が期待する経済対策については、「規制緩和をはじめとする制度整備を進めるべき」との回答が62%と最も高い回答率となった。「弱い企業の延命ではなく、強い企業を海外で戦えるといったより強靭にするための政策を希望する」(化学)との指摘もあり、成長力を強化するサプライサイドの政策を重視する姿勢が示された。
物価高や米国の関税措置への対応のために参院選挙後に補正予算を編成すべき、との回答が71%を占めた。「景気後退に陥らないようにしてほしい」(紙・パルプ)という意見も聞かれた。与党は、選挙後の補正予算で財源を手当てし、一人当たり2万円の給付を実施する考えだ。
他方で企業は、財政規律を重視する姿勢も見せている。経済対策の財源としては「歳出カット」が38%、「税収の上振れ分活用」が36%と回答割合の上位を占めた。他方「国債発行」との回答は14%にとどまっている。
予算編成に反対する企業からは、「ただの無駄遣い」(電機)、「国家の危機的な状況対応でもない限り不要。補正予算の常態化は異常」(サービス)、「財政安定化を優先すべき」(化学)などの意見が聞かれた。
企業が期待する経済対策については、「規制緩和をはじめとする制度整備を進めるべき」との回答が62%と最も高い回答率となった。「弱い企業の延命ではなく、強い企業を海外で戦えるといったより強靭にするための政策を希望する」(化学)との指摘もあり、成長力を強化するサプライサイドの政策を重視する姿勢が示された。
サプライサイドの政策を重視すべき
減税、給付金など需要に働きかける経済対策は、一時的な需要喚起策で終わってしまい、生産性向上、成長力向上につながりにくい。他方で、それらの政策によって政府債務が一段と増加してしまえば、将来の国民の負担増加となる。そのもとで、将来の国民の需要が落ちるとの懸念が高まれば、企業は設備投資や雇用拡大に慎重となり、それが生産性、成長力の低下につながりかねない。
参院選挙の経済対策では、消費税減税と給付金のどちらが良いか、という点に有権者は目を奪われているが、国民の将来の生活改善という観点からは、生産性向上、潜在成長率向上につながる規制緩和などサプライサイドの政策がより重要なはずだ。それが参院選挙での大きな争点になっていないことは残念である。
各党は、GDPや所得の拡大という公約を掲げるが、それを達成する具体策は見えない。成長産業、特定産業への政府の投資を拡大するとの公約も見られるが、産業支援ではなく、経済の構造を変えるような積極的なサプライサイドの政策を提案する政党は見られない。
消費税減税と給付金による所得増加ではなく、実質賃金の上昇率が持続的に高まること、あるいはそうした期待が高まることでのみ、個人の将来の生活への展望は改善するのである。それに資する政府の政策は、規制改革、少子化対策、労働市場改革、東京一極集中是正など、労働生産性、潜在成長率の向上につながるサプライサイドの政策、成長戦略、構造改革だ。
有権者も中長期の視点を持って、こうしたサプライサイドの政策を選挙でより重視するようにならないと、政府の経済政策は、今後も減税、給付といった需要側に偏り、財政環境の悪化が際限なく続いてしまうことになってしまうのではないか。
(参考資料)
「7月ロイター企業調査:補正予算「必要」7割、望ましい対策は規制緩和が最多」、2025年7月17日、ロイター通信社
参院選挙の経済対策では、消費税減税と給付金のどちらが良いか、という点に有権者は目を奪われているが、国民の将来の生活改善という観点からは、生産性向上、潜在成長率向上につながる規制緩和などサプライサイドの政策がより重要なはずだ。それが参院選挙での大きな争点になっていないことは残念である。
各党は、GDPや所得の拡大という公約を掲げるが、それを達成する具体策は見えない。成長産業、特定産業への政府の投資を拡大するとの公約も見られるが、産業支援ではなく、経済の構造を変えるような積極的なサプライサイドの政策を提案する政党は見られない。
消費税減税と給付金による所得増加ではなく、実質賃金の上昇率が持続的に高まること、あるいはそうした期待が高まることでのみ、個人の将来の生活への展望は改善するのである。それに資する政府の政策は、規制改革、少子化対策、労働市場改革、東京一極集中是正など、労働生産性、潜在成長率の向上につながるサプライサイドの政策、成長戦略、構造改革だ。
有権者も中長期の視点を持って、こうしたサプライサイドの政策を選挙でより重視するようにならないと、政府の経済政策は、今後も減税、給付といった需要側に偏り、財政環境の悪化が際限なく続いてしまうことになってしまうのではないか。
(参考資料)
「7月ロイター企業調査:補正予算「必要」7割、望ましい対策は規制緩和が最多」、2025年7月17日、ロイター通信社
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。