比較第一党としての責任と関税協議を続投の理由に
7月20日に投開票が行われた参院選で与党は大敗を喫したが、それを受けて翌21日の午後2時に、石破首相は記者会見に臨んだ。
石破首相は、選挙結果を真摯に受け止めるとする一方、有権者から多くの支持を得て比較第一党となったことはありがたいことだとし、比較第一党を維持したことが自公政権維持の根拠であるとの考えを示した。
他方、国難とも言える重要な案件をいくつも抱える中、国政に停滞を起こしてはいけないとの考えも示し、それが、自身が選挙結果の責任をとって辞職しない理由であるとの説明も行った。
物価高、自然災害、安全保障と並んで石破首相が最も強調した重要課題が、8月1日に期限を迎える日米関税協議だ。トランプ政権から相互関税率の24%から25%への引き上げを通告された後も、石破政権は国益を損ねる形での安易な譲歩をしないとの姿勢を維持している。それは参院選挙での敗北の後も変わらないだろう。
その結果、日米が8月1日までに合意に達する可能性は低く、8月1日には25%の相互関税が発効することが予想される。これを受けて自民党内では、石破首相に辞職を求める声が再び高まる可能性もあるだろう。党内からの反発で、石破首相が辞職に追い込まれる可能性はなお一定程度残されている。
石破首相は、現時点で連立枠組み拡大の考えを持っていないことを明らかにした。また、選挙結果を受けた党役員人事についても考えていないと説明している。
石破首相は、選挙結果を真摯に受け止めるとする一方、有権者から多くの支持を得て比較第一党となったことはありがたいことだとし、比較第一党を維持したことが自公政権維持の根拠であるとの考えを示した。
他方、国難とも言える重要な案件をいくつも抱える中、国政に停滞を起こしてはいけないとの考えも示し、それが、自身が選挙結果の責任をとって辞職しない理由であるとの説明も行った。
物価高、自然災害、安全保障と並んで石破首相が最も強調した重要課題が、8月1日に期限を迎える日米関税協議だ。トランプ政権から相互関税率の24%から25%への引き上げを通告された後も、石破政権は国益を損ねる形での安易な譲歩をしないとの姿勢を維持している。それは参院選挙での敗北の後も変わらないだろう。
その結果、日米が8月1日までに合意に達する可能性は低く、8月1日には25%の相互関税が発効することが予想される。これを受けて自民党内では、石破首相に辞職を求める声が再び高まる可能性もあるだろう。党内からの反発で、石破首相が辞職に追い込まれる可能性はなお一定程度残されている。
石破首相は、現時点で連立枠組み拡大の考えを持っていないことを明らかにした。また、選挙結果を受けた党役員人事についても考えていないと説明している。
選挙で大敗後も消費税減税に反対の姿勢は変えず
物価高対策については、基本は物価を上回る賃上げであるが、それが実現するまで、財政環境を考慮した上で党派を超えた物価高対策の議論をするとした。このように曖昧な表現を用いたが、石破首相としては秋の補正予算で給付金を実施する考えを変えていないだろう。立憲民主党も一律2万円の給付金を掲げており、立憲民主党の協力で給付金は実現することが予想される。
他方で消費税減税については、それに反対する与党が大敗し、選挙結果で民意が示されたと解釈して、消費税減税を実施する、という考えに石破首相は否定的だ。消費税減税に反対の姿勢は、選挙後も変わっていない。これは、財政悪化を懸念する国債市場をやや安定させるものだ。
石破首相は、野党はこぞって消費税減税を選挙で掲げたが、その具体策はばらばらであり、野党が消費税減税案でまとまるのは難しいとの見方を示唆した。他方、選挙では、消費税は社会保障を支える重要な財源であることが十分に議論されなかったとし、野党とそうした事実関係を確認し共有することが重要であると説明している。
また石破首相は、消費税減税を実施した国は、税率が20%以上の国であり、10%の日本は事情が違うことや、減税の効果について海外の事例を検証する必要があるとして、消費税減税の実施に慎重な姿勢をアピールした。
石破政権が続く間は、消費税減税が実施される可能性は高くないだろう。しかし石破首相が辞職に追い込まれ、高市氏のような積極財政論者が新たに首相に選出されれば、自民党が消費税減税を主導する可能性も出てくる。
こうした観点から、金融市場は石破首相の退陣論が自民党内でどの程度強まるかに大きな関心を寄せている。
他方で消費税減税については、それに反対する与党が大敗し、選挙結果で民意が示されたと解釈して、消費税減税を実施する、という考えに石破首相は否定的だ。消費税減税に反対の姿勢は、選挙後も変わっていない。これは、財政悪化を懸念する国債市場をやや安定させるものだ。
石破首相は、野党はこぞって消費税減税を選挙で掲げたが、その具体策はばらばらであり、野党が消費税減税案でまとまるのは難しいとの見方を示唆した。他方、選挙では、消費税は社会保障を支える重要な財源であることが十分に議論されなかったとし、野党とそうした事実関係を確認し共有することが重要であると説明している。
また石破首相は、消費税減税を実施した国は、税率が20%以上の国であり、10%の日本は事情が違うことや、減税の効果について海外の事例を検証する必要があるとして、消費税減税の実施に慎重な姿勢をアピールした。
石破政権が続く間は、消費税減税が実施される可能性は高くないだろう。しかし石破首相が辞職に追い込まれ、高市氏のような積極財政論者が新たに首相に選出されれば、自民党が消費税減税を主導する可能性も出てくる。
こうした観点から、金融市場は石破首相の退陣論が自民党内でどの程度強まるかに大きな関心を寄せている。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。