米連邦準備制度理事会(FRB)は8月1日、来年1月までの任期を残してクーグラー理事が辞任することを発表した。これを受けてトランプ大統領は、今週末までに後任人事を発表すると語っている。
クーグラー理事の後任人事は、次期FRB議長の人事と関わってくる可能性がある。議長および副議長は、FRBの本部理事の中から選ばれるからだ。
トランプ大統領は、利下げに慎重なパウエル議長に対して執拗に批判を繰り返し、来年5月に任期満了を迎えるパウエル議長の後任には、利下げに前向きな人物を充てる考えを示している。
来年1月までの任期を前にクーグラー理事が辞任することで、トランプ大統領は、予定よりも早く次期FRB議長の候補者を理事に指名する機会を得たことになる。早めにその後任人事を公表することで、パウエル議長のレームダック化を図り、パウエル議長退任後の利下げ加速につなげていく狙いがあるだろう。
次期FRB議長の候補としては、ケビン・ウォーシュ元FRB理事、ホワイトハウスのケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長、スコット・ベッセント財務長官が有力視されてきた。
しかしベッセント財務長官については、本人が辞退する意向であるとトランプ大統領は語っている。それでも、これまで減税措置の恒久化と関税政策で大きな役割を担ってきたベッセント財務長官をFRB議長に指名することを、トランプ大統領が検討したことの意味は大きいだろう。それは、トランプ大統領の経済政策の重心が、減税、関税からFRBの利下げ、それを通じたドル高修正へとシフトしていくことを意味する可能性があるからだ。FRBの利下げを通じたドル高修正が、関税政策に続く第2の貿易赤字削減手段に位置付けられる可能性があるのではないか。
ベッセント財務長官の辞退を受けてトランプ大統領は、現時点で次期FRB議長候補は、ウォーシュ氏、ハセット氏に加えて2人いることを明らかにしている。ただし、クーグラー理事の後任に、次期FRB議長候補を充てるかどうかについては明らかにしていない。トランプ大統領は「恒久的なものにするか、4か月の期間限定にするかを決めることになる」としており、今回のクーグラー理事の後任人事は、来年1月までの暫定的なものとする可能性も示唆している。
(参考資料)
“Trump Says He Will Decide on Fed Governor Before End of the Week(トランプ米大統領、クーグラーFRB理事の後任を週末までに人選)”, Bloomberg, August 5, 2025
“Trump Says Bessent Doesn’t Want to Be Considered for Fed Chair(ベッセント長官は次期FRB議長候補を辞退した-トランプ大統領)”, Bloomberg, August 5, 2025
クーグラー理事の後任人事は、次期FRB議長の人事と関わってくる可能性がある。議長および副議長は、FRBの本部理事の中から選ばれるからだ。
トランプ大統領は、利下げに慎重なパウエル議長に対して執拗に批判を繰り返し、来年5月に任期満了を迎えるパウエル議長の後任には、利下げに前向きな人物を充てる考えを示している。
来年1月までの任期を前にクーグラー理事が辞任することで、トランプ大統領は、予定よりも早く次期FRB議長の候補者を理事に指名する機会を得たことになる。早めにその後任人事を公表することで、パウエル議長のレームダック化を図り、パウエル議長退任後の利下げ加速につなげていく狙いがあるだろう。
次期FRB議長の候補としては、ケビン・ウォーシュ元FRB理事、ホワイトハウスのケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長、スコット・ベッセント財務長官が有力視されてきた。
しかしベッセント財務長官については、本人が辞退する意向であるとトランプ大統領は語っている。それでも、これまで減税措置の恒久化と関税政策で大きな役割を担ってきたベッセント財務長官をFRB議長に指名することを、トランプ大統領が検討したことの意味は大きいだろう。それは、トランプ大統領の経済政策の重心が、減税、関税からFRBの利下げ、それを通じたドル高修正へとシフトしていくことを意味する可能性があるからだ。FRBの利下げを通じたドル高修正が、関税政策に続く第2の貿易赤字削減手段に位置付けられる可能性があるのではないか。
ベッセント財務長官の辞退を受けてトランプ大統領は、現時点で次期FRB議長候補は、ウォーシュ氏、ハセット氏に加えて2人いることを明らかにしている。ただし、クーグラー理事の後任に、次期FRB議長候補を充てるかどうかについては明らかにしていない。トランプ大統領は「恒久的なものにするか、4か月の期間限定にするかを決めることになる」としており、今回のクーグラー理事の後任人事は、来年1月までの暫定的なものとする可能性も示唆している。
(参考資料)
“Trump Says He Will Decide on Fed Governor Before End of the Week(トランプ米大統領、クーグラーFRB理事の後任を週末までに人選)”, Bloomberg, August 5, 2025
“Trump Says Bessent Doesn’t Want to Be Considered for Fed Chair(ベッセント長官は次期FRB議長候補を辞退した-トランプ大統領)”, Bloomberg, August 5, 2025
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。