ガソリン税の暫定税率が廃止されるまで補助金を暫定的に拡大
8月21日に、与野党6党がガソリン税の暫定税率廃止に関する3回目の協議を行う。野党7党は5日に閉会した臨時国会で、暫定税率を11月1日から廃止する法案を提出した。与野党は、年内のできるだけ早い時期に廃止することで合意している。
前回6日の2回目の協議で野党は、廃止が実現するまでの間、補助金を活用して段階的にガソリン価格を引き下げる案を示した。これについて与党は、財源の確保を前提として前向きに対応する姿勢を示している。
ガソリン税の暫定税率は1リットル当たり25.1円だ。現状では政府が1リットル10円の補助金でガソリンの小売価格を抑えている。補助金を停止しガソリン税の暫定税率を廃止する場合には、ガソリンの小売価格は1リットル当たり15円程度低下することが見込まれる。野党案は、ガソリン税の暫定税率が廃止されるまで、補助金を現状の1リットル10円から25円程度にまで段階的に拡大させることで、ガソリン小売価格を現状よりも15円程度安定的に低下させる措置を想定しているとみられる。
前回6日の2回目の協議で野党は、廃止が実現するまでの間、補助金を活用して段階的にガソリン価格を引き下げる案を示した。これについて与党は、財源の確保を前提として前向きに対応する姿勢を示している。
ガソリン税の暫定税率は1リットル当たり25.1円だ。現状では政府が1リットル10円の補助金でガソリンの小売価格を抑えている。補助金を停止しガソリン税の暫定税率を廃止する場合には、ガソリンの小売価格は1リットル当たり15円程度低下することが見込まれる。野党案は、ガソリン税の暫定税率が廃止されるまで、補助金を現状の1リットル10円から25円程度にまで段階的に拡大させることで、ガソリン小売価格を現状よりも15円程度安定的に低下させる措置を想定しているとみられる。
野党も恒久財源確保の議論を受け入れか
与党はガソリン税の暫定税率廃止には恒久的な財源の確保が重要だとの姿勢を堅持している。野党もそうした与党の考えを受け入れ、今月21日に開かれる3回目の協議では、与野党がそれぞれの財源の考え方を示すことで合意された。
先般の参院選で野党各党は、ガソリン税の暫定税率廃止に加えて、消費税減税、所得税減税など減税策を前面に掲げた。しかし、恒久財源確保の議論を受け入れている点を考慮すると、こうした主張は選挙戦略の面が強く、実際には野党も財政の健全化に一定程度配慮していることをうかがわせる。ガソリン税の暫定税率廃止の恒久財源確保を巡る今後の議論は、参院選挙後の財政政策を占う試金石となるだろう。
先般の参院選で野党各党は、ガソリン税の暫定税率廃止に加えて、消費税減税、所得税減税など減税策を前面に掲げた。しかし、恒久財源確保の議論を受け入れている点を考慮すると、こうした主張は選挙戦略の面が強く、実際には野党も財政の健全化に一定程度配慮していることをうかがわせる。ガソリン税の暫定税率廃止の恒久財源確保を巡る今後の議論は、参院選挙後の財政政策を占う試金石となるだろう。
法人税の累積課税制度
与党内では、ガソリン税の暫定税率廃止の恒久財源確保の手段として法人税増税が議論されている。参院選の公約を含め、大企業の課税強化を掲げる野党は多いことから、野党の賛成が得られやすい手段、との考えが与党にある。
立憲民主党は参院選の公約で「法人の収益に応じた応分の負担」を求めた。これは累進課税の導入を想定しているとみられる。れいわ新選組も累進課税の導入を主張している。
ただし、法人税への累進課税制度は、過去に海外でも適用されたが定着していないケースが多い。それには、大企業への課税強化が企業の海外流出を促し、国の国際競争力の低下を招くことが警戒されたことがある。そこで、累進課税ではなく、中小企業の税負担を下げる課税軽減措置によって税負担に差をつけることが主流になっていったという経緯がある。
立憲民主党は参院選の公約で「法人の収益に応じた応分の負担」を求めた。これは累進課税の導入を想定しているとみられる。れいわ新選組も累進課税の導入を主張している。
ただし、法人税への累進課税制度は、過去に海外でも適用されたが定着していないケースが多い。それには、大企業への課税強化が企業の海外流出を促し、国の国際競争力の低下を招くことが警戒されたことがある。そこで、累進課税ではなく、中小企業の税負担を下げる課税軽減措置によって税負担に差をつけることが主流になっていったという経緯がある。
租税特別措置の見直しを軸に議論が進むか
また、赤字の中小企業が恩恵を受けられず、大企業に偏るとされる法人税の租税特別措置の見直しを主張する野党もある。租税特別措置の総額は約2兆円に及ぶとされる。
立憲民主党は、租税特別措置の一つである賃上げ減税の見直しを主張する。日本維新の会は、租税特別措置全体をゼロベースで見直すことを掲げる。国民民主党も租税特別措置の見直しを主張している。
ガソリン税の暫定税率廃止の恒久財源確保の手段として法人税の見直しがにわかに現実味を帯びてきた。しかし、法人税率の一律引き上げなど単純な法人税増税は、企業の海外流出、国際競争力の低下、設備投資の抑制、賃上げの阻害などの弊害をもたらす恐れがある。
野党が共同提出した法案では、暫定税率廃止に伴う減収を年約1兆205億円と見込んでいる。約2兆円規模とされる租税特別措置の見直しを軸に、法人税増税を通じた恒久財源確保策が今後議論されていく可能性がある。
(参考資料)
「与野党、法人増税論が浮上」、2025年8月17日、日本経済新聞
立憲民主党は、租税特別措置の一つである賃上げ減税の見直しを主張する。日本維新の会は、租税特別措置全体をゼロベースで見直すことを掲げる。国民民主党も租税特別措置の見直しを主張している。
ガソリン税の暫定税率廃止の恒久財源確保の手段として法人税の見直しがにわかに現実味を帯びてきた。しかし、法人税率の一律引き上げなど単純な法人税増税は、企業の海外流出、国際競争力の低下、設備投資の抑制、賃上げの阻害などの弊害をもたらす恐れがある。
野党が共同提出した法案では、暫定税率廃止に伴う減収を年約1兆205億円と見込んでいる。約2兆円規模とされる租税特別措置の見直しを軸に、法人税増税を通じた恒久財源確保策が今後議論されていく可能性がある。
(参考資料)
「与野党、法人増税論が浮上」、2025年8月17日、日本経済新聞
プロフィール
-
木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。