ウクライナの「安全の保証」に米国が関与する考えを表明
トランプ米大統領は18日に、ウクライナ情勢を巡って、ウクライナのゼレンスキー大統領と欧州首脳らとの会談を行った。さらに会談後にトランプ大統領はロシアのプーチン大統領と電話協議を行い、プーチン大統領とゼレンスキー大統領を交えた会談の調整を開始したことを明らかにした。「2人の大統領と私自身による3者協議が行われることになるだろう」と述べている。
フランスのマクロン大統領は、米・ロ・ウクライナの3者会談は、2~3週間のうちに行われるとの見通しを示している。
今回の会談を友好的なものとしたのは、会談前にトランプ大統領が、ウクライナの「安全の保証」に米国が関与する考えを表明したことだ。これは、ゼレンスキー大統領や欧州首脳らから歓迎された。
トランプ大統領は会談後に、「会談ではウクライナに対する安全の保証について協議した。保証は複数の欧州諸国が提供し、米国との調整を行う」と表明した。軍事力を行使してウクライナの安全保障を主に担うのは欧州だが、米国も軍事的に関与する考えを明らかにしたのは、大きな方針転換だ。マクロン大統領は、安全の保証を巡って米国と協力する考えを示している。
米国によるウクライナの安全の保証の枠組みはまだ明らかではないが、集団的自衛権を定めるNATO第5条のようなものが議論されていることをルッテ・NATO事務総長は明らかにしている。
フランスのマクロン大統領は、米・ロ・ウクライナの3者会談は、2~3週間のうちに行われるとの見通しを示している。
今回の会談を友好的なものとしたのは、会談前にトランプ大統領が、ウクライナの「安全の保証」に米国が関与する考えを表明したことだ。これは、ゼレンスキー大統領や欧州首脳らから歓迎された。
トランプ大統領は会談後に、「会談ではウクライナに対する安全の保証について協議した。保証は複数の欧州諸国が提供し、米国との調整を行う」と表明した。軍事力を行使してウクライナの安全保障を主に担うのは欧州だが、米国も軍事的に関与する考えを明らかにしたのは、大きな方針転換だ。マクロン大統領は、安全の保証を巡って米国と協力する考えを示している。
米国によるウクライナの安全の保証の枠組みはまだ明らかではないが、集団的自衛権を定めるNATO第5条のようなものが議論されていることをルッテ・NATO事務総長は明らかにしている。
領土問題はロシアとウクライナの協議に委ねる
15日のプーチン大統領との首脳会談を経て、トランプ大統領は停戦合意よりも和平合意を目指す考えを示していた。これはプーチン大統領の考えに同調したものと考えられる。和平合意には時間がかかることから、その間に占領地域の拡大を図るのがプーチン大統領の戦略と考えられる。
マクロン大統領は、プーチン大統領が和平を望んでいるとの見方に懐疑的であるとしたうえで、トランプ大統領に対して「爆撃のさなかに和平を語ることはできない」と停戦合意を優先する考えを説明し、トランプ大統領はそれについて納得したと語っている。和平合意を優先する姿勢に傾いたトランプ大統領の考えが、停戦合意を優先する方向に軌道修正された可能性もある。
米国がウクライナの安全の保証に関与することを明らかにしたことで、停戦合意に向け残された最大の課題は、領土問題となった。プーチン大統領は、ドンバス地方(ドネツク州とルハンスク州)のロシアへの割譲をウクライナに求めている。他方、ゼレンスキー大統領は領土の割譲には強く反対している。
ホワイトハウスでの会談に参加したドイツのメルツ首相は会談後に、「領土の譲歩については議論されなかった」と述べたうえで、「ウクライナに領土の譲歩を強制することはできない」とした。トランプ大統領も、領土問題はロシアとウクライナの両国の交渉に委ねる考えを示唆している。
ゼレンスキー大統領がロシアに領土を正式に割譲することに合意する可能性は低いだろう。しかし、停戦合意の中で、現在の前線を固定化する形でロシアの領土支配を事実上容認しつつ、将来の和平合意の協議の中で外交的手段で領土の奪還を目指す可能性があるのではないか。
マクロン大統領は、プーチン大統領が和平を望んでいるとの見方に懐疑的であるとしたうえで、トランプ大統領に対して「爆撃のさなかに和平を語ることはできない」と停戦合意を優先する考えを説明し、トランプ大統領はそれについて納得したと語っている。和平合意を優先する姿勢に傾いたトランプ大統領の考えが、停戦合意を優先する方向に軌道修正された可能性もある。
米国がウクライナの安全の保証に関与することを明らかにしたことで、停戦合意に向け残された最大の課題は、領土問題となった。プーチン大統領は、ドンバス地方(ドネツク州とルハンスク州)のロシアへの割譲をウクライナに求めている。他方、ゼレンスキー大統領は領土の割譲には強く反対している。
ホワイトハウスでの会談に参加したドイツのメルツ首相は会談後に、「領土の譲歩については議論されなかった」と述べたうえで、「ウクライナに領土の譲歩を強制することはできない」とした。トランプ大統領も、領土問題はロシアとウクライナの両国の交渉に委ねる考えを示唆している。
ゼレンスキー大統領がロシアに領土を正式に割譲することに合意する可能性は低いだろう。しかし、停戦合意の中で、現在の前線を固定化する形でロシアの領土支配を事実上容認しつつ、将来の和平合意の協議の中で外交的手段で領土の奪還を目指す可能性があるのではないか。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。