石破内閣の支持率は異例の上昇
各種メディアによる最新の世論調査では、石破内閣の支持率は予想外に大きく改善している。
参院選直後の7月に実施された前回調査と比べて、共同通信が23、24日に行った調査で内閣支持率は35.4%と12.5ポイント上昇した。同じく23、24日に実施した毎日新聞の調査では、内閣支持率は33%と前回29%から4ポイント上昇、22~25日に読売新聞が実施した調査では、内閣支持率は39%と前回22%から17ポイント上昇、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が23、24両日に実施した世論調査では、内閣支持率は39%と前回から17ポイント上昇した。
産経新聞・FNNの調査で、これほどの大幅な内閣支持率は異例なことであり、2002年に当時の小泉総理大臣が北朝鮮を訪問した後の9月の調査で、内閣支持率が前月から20ポイントあまり上昇したのに次ぐものだという。
参院選直後の7月に実施された前回調査と比べて、共同通信が23、24日に行った調査で内閣支持率は35.4%と12.5ポイント上昇した。同じく23、24日に実施した毎日新聞の調査では、内閣支持率は33%と前回29%から4ポイント上昇、22~25日に読売新聞が実施した調査では、内閣支持率は39%と前回22%から17ポイント上昇、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が23、24両日に実施した世論調査では、内閣支持率は39%と前回から17ポイント上昇した。
産経新聞・FNNの調査で、これほどの大幅な内閣支持率は異例なことであり、2002年に当時の小泉総理大臣が北朝鮮を訪問した後の9月の調査で、内閣支持率が前月から20ポイントあまり上昇したのに次ぐものだという。
石破首相に辞任を求めない回答割合が高い
さらに、石破首相に辞任を求めない回答も増えている。毎日新聞の調査では、石破首相が「辞任する必要はない」との回答が43%と「辞任すべきだ」の39%を上回った。読売新聞の調査でも、石破首相は辞任すべきだと「思わない」との回答が50%と、「思う」との回答の42%を上回った。
産経新聞・FNNの調査では、自民支持層の76.5%、立民支持層の75.4%が「辞任しなくてよい」と答え、公明党や日本維新の会支持層の約6割、共産党支持層の約5割も首相の続投を支持した。また同調査では、高齢者は石破首相に辞任を求めない回答が大勢である一方、若年層では辞任を求める回答が大勢であるなど、年齢で大きく分かれた結果となっている。
「内閣支持率」+「与党第1党(通常は自民党)の支持率」 < 50% になると、政権は危機的状況に陥る、という元官房長官・青木幹雄氏が提唱したとされる経験則がある。読売新聞の今回の調査では、2つの支持率の合計は62%、産経新聞とFNNの調査では61%と危険水域よりもかなり高い結果となっている。
産経新聞・FNNの調査では、自民支持層の76.5%、立民支持層の75.4%が「辞任しなくてよい」と答え、公明党や日本維新の会支持層の約6割、共産党支持層の約5割も首相の続投を支持した。また同調査では、高齢者は石破首相に辞任を求めない回答が大勢である一方、若年層では辞任を求める回答が大勢であるなど、年齢で大きく分かれた結果となっている。
「内閣支持率」+「与党第1党(通常は自民党)の支持率」 < 50% になると、政権は危機的状況に陥る、という元官房長官・青木幹雄氏が提唱したとされる経験則がある。読売新聞の今回の調査では、2つの支持率の合計は62%、産経新聞とFNNの調査では61%と危険水域よりもかなり高い結果となっている。
自民党保守派への反発と右傾化への警戒が背景にあるか
7月の参院選以降、石破内閣の評価が大きく高まるような目立った成果は見当たらない。そうした中、内閣支持率が大幅に上昇したことは、石破首相が、自民党内の保守派と対立する党内リベラル(左派)であることと関係しているだろう。
第1に、参院選で与党が過半数の議席を失ったことの責任をとって辞任すべきと石破首相に強く迫る議員らに、政治資金報告書への不記載問題を起こした保守派が少なくない。このことに世論が反発を抱いた結果、世論が石破首相支持に傾いていることが考えられる。いわゆる「石破おろし」の勢いが自民党内で高まるほど、世論は自民党保守層への批判を高め、逆に石破首相への支持を強める構図となっている。
第2に、石破首相が辞任し自民党総裁選挙が実施される場合には、高市氏が新たな総裁に選任され首相となる可能性が一定程度ある。その場合、安全保障政策を中心に政策全体が右派色を強めることになる。参院選で右派色の強い参政党が大きく躍進したことと合わせて、政策全体が右派色を強めることへの警戒を強めた国民が、石破首相支持に回っている可能性が考えられる。
第1に、参院選で与党が過半数の議席を失ったことの責任をとって辞任すべきと石破首相に強く迫る議員らに、政治資金報告書への不記載問題を起こした保守派が少なくない。このことに世論が反発を抱いた結果、世論が石破首相支持に傾いていることが考えられる。いわゆる「石破おろし」の勢いが自民党内で高まるほど、世論は自民党保守層への批判を高め、逆に石破首相への支持を強める構図となっている。
第2に、石破首相が辞任し自民党総裁選挙が実施される場合には、高市氏が新たな総裁に選任され首相となる可能性が一定程度ある。その場合、安全保障政策を中心に政策全体が右派色を強めることになる。参院選で右派色の強い参政党が大きく躍進したことと合わせて、政策全体が右派色を強めることへの警戒を強めた国民が、石破首相支持に回っている可能性が考えられる。
世論調査の結果は総裁選の前倒し実施の議論に影響
自民党の総裁選挙管理委員会は、今週開催する会合で臨時総裁選実施の是非を確認する方法について決定する予定だ。党則によると、党所属の国会議員と都道府県連代表各1人の過半数の要求があれば、任期満了前に総裁選を行うことが可能である。総裁選管理委の逢沢一郎委員長は、書面で意思確認する方向で意見集約する考えを示している。9月上旬に自民党は参院選の総括を行う予定だが、その後に総裁選が前倒しで行われる可能性がある。
石破内閣を支持する世論が確認されていることは、総裁選の前倒し実施の議論に影響を与える。石破首相に辞任を求め、辞任しない場合には総裁選の前倒し実施を強く求めてきた自民党の国会議員や地方議員の勢いを削ぐことになるだろう。
一時は石破首相辞任がかなり確実視されていたが、現状では辞任の見通しは後退した。さらに、総裁選の前倒しが実施されない可能性、あるいは実施されても石破首相が再選される可能性も相応に意識され始めている。
石破内閣を支持する世論が確認されていることは、総裁選の前倒し実施の議論に影響を与える。石破首相に辞任を求め、辞任しない場合には総裁選の前倒し実施を強く求めてきた自民党の国会議員や地方議員の勢いを削ぐことになるだろう。
一時は石破首相辞任がかなり確実視されていたが、現状では辞任の見通しは後退した。さらに、総裁選の前倒しが実施されない可能性、あるいは実施されても石破首相が再選される可能性も相応に意識され始めている。
石破続投の観測が強まれば債券高・円高に
石破首相が続投できず、高市氏などが新たに首相になる場合には、外交・安全保障政策に加えて政府の経済・財政政策も大きく変わる可能性がある。先般の参院選挙で石破首相は、恒久財源を確保しないままでの消費減税に明確に反対するなど、財政規律を重視する姿勢を堅持した。
しかし、首相が交代となれば、積極財政を求める野党の意見を受け入れる形で、積極財政色が強まる可能性がある。高市氏が後任となれば、その可能性はより強まるだろう。そのため、石破内閣が続投する方向で今後の政治情勢が動けば、金融市場では債券高要因となる。他方、短期的には積極財政期待の後退は株安要因となる可能性もあるだろう。
また、石破政権は、日本銀行の追加利上げをある程度容認する方向と考えられる。他方で高市氏は日本銀行の利上げに明確に反対の姿勢を示している。この点から、石破内閣が続投する方向で今後の政治情勢が動けば、それは利上げ観測を高め、円高要因となるだろう。
ジャクソンホールでの米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長の講演の次に、日本の金融市場の関心を集めるのは、石破首相の続投の可否となるのではないか。
しかし、首相が交代となれば、積極財政を求める野党の意見を受け入れる形で、積極財政色が強まる可能性がある。高市氏が後任となれば、その可能性はより強まるだろう。そのため、石破内閣が続投する方向で今後の政治情勢が動けば、金融市場では債券高要因となる。他方、短期的には積極財政期待の後退は株安要因となる可能性もあるだろう。
また、石破政権は、日本銀行の追加利上げをある程度容認する方向と考えられる。他方で高市氏は日本銀行の利上げに明確に反対の姿勢を示している。この点から、石破内閣が続投する方向で今後の政治情勢が動けば、それは利上げ観測を高め、円高要因となるだろう。
ジャクソンホールでの米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長の講演の次に、日本の金融市場の関心を集めるのは、石破首相の続投の可否となるのではないか。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。