2日に開かれた自民党両院議員総会で、森山幹事長が辞任する意向を表明した。ただし、森山幹事長は「進退については石破首相に預ける」とし、石破首相はその場で「預かる」と発言したとされる。その後の記者会見で石破首相は、森山幹事長の進退は今後適切に判断するとしたうえで、「余人をもって代えがたい人だと今でも思う」と説明した。小野寺政調会長、鈴木総務会長も辞任を表明しており、党3役全員が辞任の意向を表明した。
両院総会で石破首相は、当面は経済などに道筋を示すのが自らの責任であるとした一方、「地位にしがみつくつもりは全くない」、「責任から逃れることなく、しかるべき時にきちんとした決断をする」とも語った。ただし、とりあえずは続投の意思を示したと受け取れる。
今後、党所属国会議員と都道府県連に対し、臨時総裁選実施の賛否を確認する手続きが開始される。既に現職の副大臣を含む一部議員が開催要求する意向を表明しており、書面提出による意思確認が8日にも行われる見通しだ。
森山幹事長らの進退は石破首相に預けられたが、仮に辞任となれば、総裁選前倒しによる「石破おろし」の勢いが増す可能性がある。さらに、森山幹事長は党内で財政規律を重視する姿勢をとっており、先般の参院選では消費税減税を求める党内での声を抑え込んだ。その森山幹事長が辞任となれば、石破政権が続いたとしても財政政策は拡張的となり、財政規律は一段と低下する可能性がある。
森山幹事長の辞意表明の報道を受けた直後、為替市場ではドル円レートが1ドル147円台前半から148円台後半へと一気に円安方向に振れ、その後海外市場では、1ドル149円直前まで円安が進んだ。これは、財政規律が低下し円の信認が低下するリスクが市場に意識された結果だろう。
ただし、円安がここまで大きく進んだ背景には、森山幹事長の辞意表明が、石破首相辞任のリスクや、総裁選前倒し実施のリスクを高めた、との金融市場の判断があったのだろう。
石破首相が辞任に追い込まれる、あるいは総裁選が前倒しで実施され、投票の結果、石破首相と対立する党内保守派の意見をより反映する人物が首相に就任し、積極財政政策を推し進めるとの観測も金融市場は意識しているとみられる。さらに新たな首相は、日本銀行の利上げにより反対することで、日本銀行の利上げが遅れるとの観測も大きな円安進行の背景にあるのだろう。
国債市場では、超長期ゾーンの利回りが上昇する一方、10年までの長期ゾーンの利回りは低下した。これは、新たな政権の下で金融緩和の持続と積極財政が組み合わされることを想定して、イールドカーブがスティープ化したものと考えられる。
こうした市場の反応は、米国でも見られている。トランプ政権が人事を通じて米連邦準備制度理事会(FRB)への政治介入を強め、利下げを進めようとするなか、金融政策の信認低下がドルや国債への信認低下にもつながり、株安、債券安、ドル安のトリプル安の兆候を見せ始めている。
日本でも、足もとの金融市場の反応は、石破政権の崩壊あるいは弱体化が、金融政策、財政政策の信認を低下させ、悪い円安、悪い債券(超長期国債)安を生むリスクの高まりを反映するものだろう。また、株の先物価格も並行して下落しており、日本でもトリプル安の様相が生じている。
両院総会で石破首相は、当面は経済などに道筋を示すのが自らの責任であるとした一方、「地位にしがみつくつもりは全くない」、「責任から逃れることなく、しかるべき時にきちんとした決断をする」とも語った。ただし、とりあえずは続投の意思を示したと受け取れる。
今後、党所属国会議員と都道府県連に対し、臨時総裁選実施の賛否を確認する手続きが開始される。既に現職の副大臣を含む一部議員が開催要求する意向を表明しており、書面提出による意思確認が8日にも行われる見通しだ。
森山幹事長らの進退は石破首相に預けられたが、仮に辞任となれば、総裁選前倒しによる「石破おろし」の勢いが増す可能性がある。さらに、森山幹事長は党内で財政規律を重視する姿勢をとっており、先般の参院選では消費税減税を求める党内での声を抑え込んだ。その森山幹事長が辞任となれば、石破政権が続いたとしても財政政策は拡張的となり、財政規律は一段と低下する可能性がある。
森山幹事長の辞意表明の報道を受けた直後、為替市場ではドル円レートが1ドル147円台前半から148円台後半へと一気に円安方向に振れ、その後海外市場では、1ドル149円直前まで円安が進んだ。これは、財政規律が低下し円の信認が低下するリスクが市場に意識された結果だろう。
ただし、円安がここまで大きく進んだ背景には、森山幹事長の辞意表明が、石破首相辞任のリスクや、総裁選前倒し実施のリスクを高めた、との金融市場の判断があったのだろう。
石破首相が辞任に追い込まれる、あるいは総裁選が前倒しで実施され、投票の結果、石破首相と対立する党内保守派の意見をより反映する人物が首相に就任し、積極財政政策を推し進めるとの観測も金融市場は意識しているとみられる。さらに新たな首相は、日本銀行の利上げにより反対することで、日本銀行の利上げが遅れるとの観測も大きな円安進行の背景にあるのだろう。
国債市場では、超長期ゾーンの利回りが上昇する一方、10年までの長期ゾーンの利回りは低下した。これは、新たな政権の下で金融緩和の持続と積極財政が組み合わされることを想定して、イールドカーブがスティープ化したものと考えられる。
こうした市場の反応は、米国でも見られている。トランプ政権が人事を通じて米連邦準備制度理事会(FRB)への政治介入を強め、利下げを進めようとするなか、金融政策の信認低下がドルや国債への信認低下にもつながり、株安、債券安、ドル安のトリプル安の兆候を見せ始めている。
日本でも、足もとの金融市場の反応は、石破政権の崩壊あるいは弱体化が、金融政策、財政政策の信認を低下させ、悪い円安、悪い債券(超長期国債)安を生むリスクの高まりを反映するものだろう。また、株の先物価格も並行して下落しており、日本でもトリプル安の様相が生じている。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。