9月18日に林芳正官房長官は自民党総裁選への正式な出馬を表明し、記者会見で自身の政策構想である「林プラン」を発表した。
林氏は、岸田政権と石破政権の政策路線を継承しつつ、それに新たな展開を加える考えを示した。
「林プラン」は3つの柱で構成される。第1は「実質賃金の上昇と経済の好循環」だ。林氏は、「実質賃金の1%程度の上昇を定着させることを目指す」としたが、これは石破政権の方針を踏襲するものだ。国民生活の改善には物価上昇率を上回る賃上げ、つまり実質賃金の上昇を実現することが必要である。さらに、それを持続させるためには労働生産性の向上が欠かせない。持続的な実質賃金の上昇を目指すことは妥当であるが、それを実現する生産性向上の具体策をしっかりと示すことが今後は求められる。
それ以外の経済政策では、中小企業への大胆な負担軽減、地方での起業・創業・事業承継支援、コンテンツ産業やスタートアップ企業への支援、GX(グリーントランスフォーメーション)戦略地域の選定と推進、インパクト投資の促進とデジタル赤字の削減などを挙げたが、いずれも岸田・石破政権路線の継承であり、新味を欠く。
第2の柱は、「2040年代を見据えた持続可能な社会保障と強靱な経済の構築」だ。林氏は、団塊ジュニア世代が後期高齢者となる2040年代を見据えた持続可能な社会保障の構築を目指すとし、「日本版ユニバーサル・クレジット」の創設を掲げた。
「日本版ユニバーサル・クレジット」構想は、欧州の制度を参考にしたもので、所得、社会保険料、税負担を総合的に把握し、さらに、世帯のライフステージ(子育て期、介護期など)に応じて低・中所得世帯、子育て世帯などを支援する枠組みである。それ以外にも林氏は、人手不足が深刻な医療・介護・福祉人材の処遇改善などを掲げている。
第3の柱は、「自民党改革と政治制度の見直し」である。林氏は、「デジタル国民対話プラットフォーム」を提唱している。これは、国民と行政の間の双方向コミュニケーションを促進するために構想された仕組みで、政策形成に国民の声をリアルタイムで反映させることを目指す。また、この仕組みを通じて一般国民が政策に関与できる「開かれた政府」の実現を意図している。
また、自民党が参院選挙で大敗したことを受け、「ゼロからの再建」を掲げて党改革に取り組み、保守層の支持回復を目指して自民党綱領の改正も提案している。
林氏の政策は、現職の閣僚であることも影響して、他の4候補と比べて最も石破政権、岸田政権との連続性が強いものだ。ただしその中でも、「日本版ユニバーサル・クレジット」、「デジタル国民対話プラットフォーム」など独自色を打ち出している。
林氏は党内では左派色が強く、その穏健な姿勢も相まって、野党との円滑な調整が期待されている。ただし、他の候補が野党との連携を意識した減税策などを打ち出す一方、そうした姿勢を見せないことも大きな特徴である。林氏は、具体的な連携先については「総裁選で議論すべきではない」と明言を避けている。
林氏は、岸田政権と石破政権の政策路線を継承しつつ、それに新たな展開を加える考えを示した。
「林プラン」は3つの柱で構成される。第1は「実質賃金の上昇と経済の好循環」だ。林氏は、「実質賃金の1%程度の上昇を定着させることを目指す」としたが、これは石破政権の方針を踏襲するものだ。国民生活の改善には物価上昇率を上回る賃上げ、つまり実質賃金の上昇を実現することが必要である。さらに、それを持続させるためには労働生産性の向上が欠かせない。持続的な実質賃金の上昇を目指すことは妥当であるが、それを実現する生産性向上の具体策をしっかりと示すことが今後は求められる。
それ以外の経済政策では、中小企業への大胆な負担軽減、地方での起業・創業・事業承継支援、コンテンツ産業やスタートアップ企業への支援、GX(グリーントランスフォーメーション)戦略地域の選定と推進、インパクト投資の促進とデジタル赤字の削減などを挙げたが、いずれも岸田・石破政権路線の継承であり、新味を欠く。
第2の柱は、「2040年代を見据えた持続可能な社会保障と強靱な経済の構築」だ。林氏は、団塊ジュニア世代が後期高齢者となる2040年代を見据えた持続可能な社会保障の構築を目指すとし、「日本版ユニバーサル・クレジット」の創設を掲げた。
「日本版ユニバーサル・クレジット」構想は、欧州の制度を参考にしたもので、所得、社会保険料、税負担を総合的に把握し、さらに、世帯のライフステージ(子育て期、介護期など)に応じて低・中所得世帯、子育て世帯などを支援する枠組みである。それ以外にも林氏は、人手不足が深刻な医療・介護・福祉人材の処遇改善などを掲げている。
第3の柱は、「自民党改革と政治制度の見直し」である。林氏は、「デジタル国民対話プラットフォーム」を提唱している。これは、国民と行政の間の双方向コミュニケーションを促進するために構想された仕組みで、政策形成に国民の声をリアルタイムで反映させることを目指す。また、この仕組みを通じて一般国民が政策に関与できる「開かれた政府」の実現を意図している。
また、自民党が参院選挙で大敗したことを受け、「ゼロからの再建」を掲げて党改革に取り組み、保守層の支持回復を目指して自民党綱領の改正も提案している。
林氏の政策は、現職の閣僚であることも影響して、他の4候補と比べて最も石破政権、岸田政権との連続性が強いものだ。ただしその中でも、「日本版ユニバーサル・クレジット」、「デジタル国民対話プラットフォーム」など独自色を打ち出している。
林氏は党内では左派色が強く、その穏健な姿勢も相まって、野党との円滑な調整が期待されている。ただし、他の候補が野党との連携を意識した減税策などを打ち出す一方、そうした姿勢を見せないことも大きな特徴である。林氏は、具体的な連携先については「総裁選で議論すべきではない」と明言を避けている。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。