日本銀行は9月30日に、9月18~19日に開かれた金融政策決定会合における「主な意見」を公表した。この決定会合では2名の審議委員が利上げを主張して、政策金利の現状維持に反対した。会合での全体の意見の分布を確認し、10月29日~30日の次回会合での利上げ実施の有無を占う観点から、金融市場はこの「主な意見」に注目していた。結論を先取りすれば、「主な意見」では10月利上げの有無を示す明確な材料は示されなかった、と考えられる。
「主な意見」で、金融政策に関する意見は16個掲載された。そのうち6個はETF、J-RIETの売却についての発言であり、政策金利に関するものは10個である。政策委員は9名であることから、概ね一人一個の発言を掲載したことになる。
10個の発言のうち、利上げに慎重な発言が6個、中立的な発言が2個、利上げに前向きな発言が2個である。利上げに前向きな発言は決定会合で利上げを主張した2名の審議委員と考えられる。29日の講演で利上げにやや前向きな野口委員は、中立的な発言2つのうちどちらかだろう。
ただし野口委員の講演テキストでは、「米国の関税政策による大きな下方リスクに直面していることもあり、当面は、物価の基調を可能な限り慎重に見極める必要があると考えている」と最後を締めており、現時点では利上げの判断に傾いてはいないように見受けられる。
利上げに慎重な発言6個は、総裁、副総裁を含む少なくとも5人の発言を掲載したものと考えられるため、仮に野口委員も含め、中立的な発言をした2名が10月の会合で利上げを主張しても、過半数の賛成を得ることはできないのではないか。
留意したいのは、総裁、副総裁など執行部が、政策委員会内で大きく票が割れることを回避するために、利上げを前倒しで実施する可能性があることだ。9月18~19日の決定会合の対外公表文では「不確実性は高い状況が続いており」と、8月の展望レポートで用いられた文言が踏襲された。この文言は、次の会合では利上げはしないというメッセージとして使われていると考えられる。9月の会合時点では、総裁、副総裁など執行部は、次回10月の会合での利上げを想定していなかったと考えられる。
しかし、今後発表される米国経済統計が上振れ、また、政策委員の間で10月利上げに前向きな意見が強まる場合には、執行部も10月利上げに傾く可能性が出てくる。その場合には、「不確実性は高い状況が続いており」という文言の見直しなど、明確なメッセージを総裁、副総裁が講演などを通じて示すことになるだろう。
今週は内田副総裁が2日(木)に全国証券大会での挨拶、植田総裁が3日に大阪経済4団体共催懇談会に挨拶を予定している。両氏から10月利上げを示唆する発言が出てくるかが大いに注目されるところだ。筆者は、米国経済指標をなお見極める必要があることから、利上げは12月と引き続き想定している。ただし、10月利上げの可能性も強く否定はできない情勢となってきた。
「主な意見」で、金融政策に関する意見は16個掲載された。そのうち6個はETF、J-RIETの売却についての発言であり、政策金利に関するものは10個である。政策委員は9名であることから、概ね一人一個の発言を掲載したことになる。
10個の発言のうち、利上げに慎重な発言が6個、中立的な発言が2個、利上げに前向きな発言が2個である。利上げに前向きな発言は決定会合で利上げを主張した2名の審議委員と考えられる。29日の講演で利上げにやや前向きな野口委員は、中立的な発言2つのうちどちらかだろう。
ただし野口委員の講演テキストでは、「米国の関税政策による大きな下方リスクに直面していることもあり、当面は、物価の基調を可能な限り慎重に見極める必要があると考えている」と最後を締めており、現時点では利上げの判断に傾いてはいないように見受けられる。
利上げに慎重な発言6個は、総裁、副総裁を含む少なくとも5人の発言を掲載したものと考えられるため、仮に野口委員も含め、中立的な発言をした2名が10月の会合で利上げを主張しても、過半数の賛成を得ることはできないのではないか。
留意したいのは、総裁、副総裁など執行部が、政策委員会内で大きく票が割れることを回避するために、利上げを前倒しで実施する可能性があることだ。9月18~19日の決定会合の対外公表文では「不確実性は高い状況が続いており」と、8月の展望レポートで用いられた文言が踏襲された。この文言は、次の会合では利上げはしないというメッセージとして使われていると考えられる。9月の会合時点では、総裁、副総裁など執行部は、次回10月の会合での利上げを想定していなかったと考えられる。
しかし、今後発表される米国経済統計が上振れ、また、政策委員の間で10月利上げに前向きな意見が強まる場合には、執行部も10月利上げに傾く可能性が出てくる。その場合には、「不確実性は高い状況が続いており」という文言の見直しなど、明確なメッセージを総裁、副総裁が講演などを通じて示すことになるだろう。
今週は内田副総裁が2日(木)に全国証券大会での挨拶、植田総裁が3日に大阪経済4団体共催懇談会に挨拶を予定している。両氏から10月利上げを示唆する発言が出てくるかが大いに注目されるところだ。筆者は、米国経済指標をなお見極める必要があることから、利上げは12月と引き続き想定している。ただし、10月利上げの可能性も強く否定はできない情勢となってきた。
プロフィール
-
木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。