公明党との連立解消観測が金融市場にも影響
積極財政と金融緩和継続を掲げる高市総裁の経済政策への期待から、金融市場は週明けから円安・株高方向に大きく動いた。その後、日経平均株価は4万8000円程度でもみ合いの様相を呈し始めている一方、円安傾向は続き、8日には一時1ドル153円近くにまで達した。
自民党総裁選後の国内政治情勢は混沌としている。自民党と公明党との連立協議は難航しており、仮に公明党との連立が解消される場合には、高市氏は現状よりもさらに議席を落としより弱体化した少数与党政権となり、政策の遂行にかなりの障害が生じる。また、野党が首班指名で連携することで連立政権を作る可能性もあり、その場合、高市氏は下野した自民党の総裁でしかなくなる。
こうした政治情勢が、日本株の上昇に一服感をもたらしている可能性がある。当面の金融市場の関心は、公明党及び国民民主党との連立協議に注がれている。
他方、高市政権が少数与党政権のままであり、国会での予算可決を要する経済政策が思うように進めることができないとしても、日本銀行に対する利上げ牽制は、口先だけで容易に実施できる。こうした違いが、日本株と為替の動きの違いに表れている可能性があるだろう。
自民党総裁選後の国内政治情勢は混沌としている。自民党と公明党との連立協議は難航しており、仮に公明党との連立が解消される場合には、高市氏は現状よりもさらに議席を落としより弱体化した少数与党政権となり、政策の遂行にかなりの障害が生じる。また、野党が首班指名で連携することで連立政権を作る可能性もあり、その場合、高市氏は下野した自民党の総裁でしかなくなる。
こうした政治情勢が、日本株の上昇に一服感をもたらしている可能性がある。当面の金融市場の関心は、公明党及び国民民主党との連立協議に注がれている。
他方、高市政権が少数与党政権のままであり、国会での予算可決を要する経済政策が思うように進めることができないとしても、日本銀行に対する利上げ牽制は、口先だけで容易に実施できる。こうした違いが、日本株と為替の動きの違いに表れている可能性があるだろう。
FOMCの議論ではインフレリスクへの警戒はなお強い
ドル円レートはこうした国内政治要因だけでなく、米国の金融政策への観測の影響も大きく受ける。8日の海外市場でも、ドル円レートが一時1ドル153円近くまで再度進んだ。同日に発表された9月16日~17日分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で、参加者がインフレリスクを引き続き警戒していることが明らかになり、利下げ観測にやや水を差された結果とみられる。
9月のFOMCでは、投票権を持つ参加者のほぼ全員が9月の0.25%利下げを支持し、新たに加入したトランプ大統領の経済アドバイザーであるミラン氏のみが0.50%の利下げを支持した。議事要旨では、大半の参加者が「年内残りの期間で金融政策をさらに緩和していくことが適切になるだろう」との判断を示していた。
他方やや予想外だったのは、「大多数のメンバーはインフレ見通しの上振れリスクを強調」「複数のメンバーがインフレリスクについて言及」などと、インフレリスクに対する警戒が依然強いことが議事要旨で明らかになったことだ。
さらに、インフレリスクを背景に、「2~3人(a few)の参加者は今回の会合で政策金利を据え置くことにメリットがある」との見解を示した。「数人のメンバーは9月利下げを支持しなかった」との記述が見られた。投票権を持つ参加者のすべては利下げを支持したことから、利下げを支持しなかったのは、投票権を持たない参加者だったとみられる。
それでもFOMC内には引き続きインフレを警戒し、利下げに慎重な意見が少なくないことが明らかになった。この点は、今後の政策決定にも影響するだろう。
9月のFOMCでは、投票権を持つ参加者のほぼ全員が9月の0.25%利下げを支持し、新たに加入したトランプ大統領の経済アドバイザーであるミラン氏のみが0.50%の利下げを支持した。議事要旨では、大半の参加者が「年内残りの期間で金融政策をさらに緩和していくことが適切になるだろう」との判断を示していた。
他方やや予想外だったのは、「大多数のメンバーはインフレ見通しの上振れリスクを強調」「複数のメンバーがインフレリスクについて言及」などと、インフレリスクに対する警戒が依然強いことが議事要旨で明らかになったことだ。
さらに、インフレリスクを背景に、「2~3人(a few)の参加者は今回の会合で政策金利を据え置くことにメリットがある」との見解を示した。「数人のメンバーは9月利下げを支持しなかった」との記述が見られた。投票権を持つ参加者のすべては利下げを支持したことから、利下げを支持しなかったのは、投票権を持たない参加者だったとみられる。
それでもFOMC内には引き続きインフレを警戒し、利下げに慎重な意見が少なくないことが明らかになった。この点は、今後の政策決定にも影響するだろう。
トランプ大統領によるFRB支配は議長交代で大きく進むか
トランプ大統領が強く利下げを求める中、0.5%の利下げに票を投じたのはトランプ大統領の経済アドバイザーであるミラン氏のみであったことや、インフレリスクへの警戒が維持されたこと、あるいは利下げについても慎重な意見が出てきたことは、FRBがトランプ政権の政治圧力に屈し、事実上支配された訳ではないことを意味しよう。これらはドル高円安要因である。
ただし、人事を通じたトランプ政権のFRBへの介入は今後も続く可能性が高い。来年5月にトランプ大統領が指名する利下げ推進派の議長が誕生すれば、FRBの独立性は一段と揺らぎ、政権が望む利下げ方向へと金融政策がさらに傾いていく可能性があるだろう。
(参考資料)
「FOMC議事要旨 年内の追加緩和が適切 一部は金利据え置きに「メリット」」、2025年10月9日、日経速報ニュース
ただし、人事を通じたトランプ政権のFRBへの介入は今後も続く可能性が高い。来年5月にトランプ大統領が指名する利下げ推進派の議長が誕生すれば、FRBの独立性は一段と揺らぎ、政権が望む利下げ方向へと金融政策がさらに傾いていく可能性があるだろう。
(参考資料)
「FOMC議事要旨 年内の追加緩和が適切 一部は金利据え置きに「メリット」」、2025年10月9日、日経速報ニュース
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。