公明党は外交・安全保障政策、社会政策において、そして経済政策においてもリベラル色(左派色)が強い政党だ。過去26年間、公明党が自民党と連立政権を組んだことで、公明党は自民党の保守色の強い政策に対する「ブレーキ役」を果たし、バランスの取れた政策形成に寄与してきた、と一般的には評価できる。
ただし近年の自民党は、外交・安全保障政策、社会政策においては保守性をより強めており、公明党との軋轢を強めてきた。自民党は憲法改正、特に第9条の改正に積極的であり、集団的自衛権の行使容認などを推進してきた。これに対して公明党は平和主義を掲げ、憲法改正には慎重な姿勢をとる。また2015年の安倍政権下での安保法制の成立時には、公明党は、限定的な集団的自衛権の行使にとどめるよう働きかけた。
経済政策面では、公明党は一貫して「中間層・低所得者層の生活支援」「社会保障の充実」「中小企業支援」など左派色の強い政策を重視してきた。これは、財政健全化や成長戦略など保守色の強い経済政策を掲げる自民党と対立する局面もみられた。
2014年および2019年の消費税増税の際に、公明党は一貫して「生活必需品への軽減税率導入」を主張した。そうした働きかけの結果として、2019年の税率10%への引き上げ時には、食品や新聞など生活必需品に8%の軽減税率が適用された。
また、新型コロナウイルス問題時の2020年に実施された一律10万円の「特別定額給付金」の支給は、公明党の強い働きかけによって実現した。自民党内では所得制限を設ける案もあったが、公明党は「全国民一律支給」を主張し譲らなかったのである。
今年の参院選挙では、石破政権は消費税減税を拒否し、給付金を公約に掲げたが、公明党内は給付金と減税を主張し、消費税減税を望む声も党内に少なくなかったとみられる。自民党総裁が石破氏から高市氏に代わったことで、経済政策は公明党の低所得者支援、減税、積極財政の考え方により近くなったが、実際に公明党が連立政権からの離脱を決めたのは、高市氏の外交・安全保障政策、社会政策における保守色の強さを容認できなかったからだろう。
高市政権が成立する場合、公明党の離脱によって自民党はより政策面での自由度を獲得することができる面がある。しかし、それ以上に、議席を減らすことで政策遂行能力が低下してしまう影響の方が大きい。公明党の離脱を受けて、野党はより弱体化した自民党との連立に一層慎重になるはずだ。そうした中、仮に自民党が政権を維持するとしても、野党を新たに連立に組み入れることのない少数与党政権となる可能性が高い。
多くの野党が支持するガソリン税の暫定税率廃止や国民民主党が主張し高市氏も支持している所得税減税(年収の壁対策)は、高市政権の下でも実現する可能性はあるだろう。しかし、目先の物価高対策にとどまらず、より長期的な視点に立った高市氏の積極財政政策の柱である政府の危機管理型投資・成長投資の実現は、難しくなるだろう。
ただし近年の自民党は、外交・安全保障政策、社会政策においては保守性をより強めており、公明党との軋轢を強めてきた。自民党は憲法改正、特に第9条の改正に積極的であり、集団的自衛権の行使容認などを推進してきた。これに対して公明党は平和主義を掲げ、憲法改正には慎重な姿勢をとる。また2015年の安倍政権下での安保法制の成立時には、公明党は、限定的な集団的自衛権の行使にとどめるよう働きかけた。
経済政策面では、公明党は一貫して「中間層・低所得者層の生活支援」「社会保障の充実」「中小企業支援」など左派色の強い政策を重視してきた。これは、財政健全化や成長戦略など保守色の強い経済政策を掲げる自民党と対立する局面もみられた。
2014年および2019年の消費税増税の際に、公明党は一貫して「生活必需品への軽減税率導入」を主張した。そうした働きかけの結果として、2019年の税率10%への引き上げ時には、食品や新聞など生活必需品に8%の軽減税率が適用された。
また、新型コロナウイルス問題時の2020年に実施された一律10万円の「特別定額給付金」の支給は、公明党の強い働きかけによって実現した。自民党内では所得制限を設ける案もあったが、公明党は「全国民一律支給」を主張し譲らなかったのである。
今年の参院選挙では、石破政権は消費税減税を拒否し、給付金を公約に掲げたが、公明党内は給付金と減税を主張し、消費税減税を望む声も党内に少なくなかったとみられる。自民党総裁が石破氏から高市氏に代わったことで、経済政策は公明党の低所得者支援、減税、積極財政の考え方により近くなったが、実際に公明党が連立政権からの離脱を決めたのは、高市氏の外交・安全保障政策、社会政策における保守色の強さを容認できなかったからだろう。
高市政権が成立する場合、公明党の離脱によって自民党はより政策面での自由度を獲得することができる面がある。しかし、それ以上に、議席を減らすことで政策遂行能力が低下してしまう影響の方が大きい。公明党の離脱を受けて、野党はより弱体化した自民党との連立に一層慎重になるはずだ。そうした中、仮に自民党が政権を維持するとしても、野党を新たに連立に組み入れることのない少数与党政権となる可能性が高い。
多くの野党が支持するガソリン税の暫定税率廃止や国民民主党が主張し高市氏も支持している所得税減税(年収の壁対策)は、高市政権の下でも実現する可能性はあるだろう。しかし、目先の物価高対策にとどまらず、より長期的な視点に立った高市氏の積極財政政策の柱である政府の危機管理型投資・成長投資の実現は、難しくなるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。