日本維新の会との連立で積極財政、金融緩和継続の「高市カラー」は弱められる
16日に自民党は、日本維新の会との間で連立あるいは首班指名での協力を視野に協議を開始した。協議は17日も続けられる。
仮に日本維新の会の協力が得られれば、高市政権が発足する可能性がかなり高まることになる。保守色が強い高市氏を首相として、中道右派的である日本維新の会との連立、あるいは連携が成立すれば、現在の石破政権と比べて、外交、安全保障政策、社会政策の面では中心軸が右方向に動くことになるだろう。
他方、経済政策では、積極財政、金融緩和継続というアベノミクス第1の矢、第2の矢を継承する高市氏が掲げる政策は、弱められることになる。
日本維新の会は、財政健全化を重視しつつ、成長戦略と社会保障改革を両立させるのが基本姿勢である。教育・子育て支援などの重点分野には支出を集中する一方、歳出改革も進める。財政支出全体の拡大には慎重であり、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指すとしている。
他方、金融政策については先般の参院選挙の日本維新の会の公約では言及されてはいないが、日本銀行の独立性を尊重しつつ、金融政策の正常化(利上げなど)を容認する姿勢、と考えられる。
こうした日本維新の会の財政政策、金融政策の姿勢は、赤字国債の発行も辞さないとする高市氏の財政政策、日本銀行の利上げを好ましく考えない金融政策の考え方とは異なるものだ。自民党と日本維新の会との連立、あるいは連携により高市政権が成立する場合、高市氏のやや極端な財政、金融政策は弱められるだろう。いわば「高市カラー」は薄められるものと考える。国民民主党との連立であれば、「高市カラー」は逆に増幅され得るが、その可能性は低いだろう。
それは、個人の生活を圧迫する円安による物価高のリスクや長期金利上昇などのリスクを軽減し、経済、金融市場の安定にとっては望ましいのではないか。
連立政権が成立する場合、日本維新の会は、財務大臣、経済産業大臣など重要な経済閣僚ポストを得る可能性があり、そうなれば高市政権の経済政策に大きな影響を与えるだろう。
仮に日本維新の会の協力が得られれば、高市政権が発足する可能性がかなり高まることになる。保守色が強い高市氏を首相として、中道右派的である日本維新の会との連立、あるいは連携が成立すれば、現在の石破政権と比べて、外交、安全保障政策、社会政策の面では中心軸が右方向に動くことになるだろう。
他方、経済政策では、積極財政、金融緩和継続というアベノミクス第1の矢、第2の矢を継承する高市氏が掲げる政策は、弱められることになる。
日本維新の会は、財政健全化を重視しつつ、成長戦略と社会保障改革を両立させるのが基本姿勢である。教育・子育て支援などの重点分野には支出を集中する一方、歳出改革も進める。財政支出全体の拡大には慎重であり、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指すとしている。
他方、金融政策については先般の参院選挙の日本維新の会の公約では言及されてはいないが、日本銀行の独立性を尊重しつつ、金融政策の正常化(利上げなど)を容認する姿勢、と考えられる。
こうした日本維新の会の財政政策、金融政策の姿勢は、赤字国債の発行も辞さないとする高市氏の財政政策、日本銀行の利上げを好ましく考えない金融政策の考え方とは異なるものだ。自民党と日本維新の会との連立、あるいは連携により高市政権が成立する場合、高市氏のやや極端な財政、金融政策は弱められるだろう。いわば「高市カラー」は薄められるものと考える。国民民主党との連立であれば、「高市カラー」は逆に増幅され得るが、その可能性は低いだろう。
それは、個人の生活を圧迫する円安による物価高のリスクや長期金利上昇などのリスクを軽減し、経済、金融市場の安定にとっては望ましいのではないか。
連立政権が成立する場合、日本維新の会は、財務大臣、経済産業大臣など重要な経済閣僚ポストを得る可能性があり、そうなれば高市政権の経済政策に大きな影響を与えるだろう。
経済政策で「高市カラー」を弱める3つの要因
日本維新の会との連立、連携に加えて、高市氏の経済政策で「高市カラー」を弱めると考える要因があと2つある。第1は高市氏の後ろ盾となっている麻生副総裁、麻生派の影響力だ。麻生氏、及び鈴木幹事長などを代表とする麻生派は、財政健全化と日本銀行の独立性を尊重する姿勢であり、この点は高市氏と大きく異なる。麻生副総裁、麻生派の影響によって、高市氏の経済政策は修正され、「高市カラー」は弱まる可能性が考えられる。
第2は、仮に日本維新の会との連立が成立しても、高市政権は少数与党政権であることに変わりがない点だ。衆院での議席は、自民党は196、日本維新の会は35、合計で231と過半数の233に僅かに届かない。このもとでは、日本維新の会以上に高市氏の経済政策と対極にある立憲民主党などの意見を取り入れないと、予算を伴う経済政策は実現できず、その結果、「高市カラー」は弱められる。こうした3つの要因から、「高市カラー」はかなり弱まる可能性が考えられる。
第2は、仮に日本維新の会との連立が成立しても、高市政権は少数与党政権であることに変わりがない点だ。衆院での議席は、自民党は196、日本維新の会は35、合計で231と過半数の233に僅かに届かない。このもとでは、日本維新の会以上に高市氏の経済政策と対極にある立憲民主党などの意見を取り入れないと、予算を伴う経済政策は実現できず、その結果、「高市カラー」は弱められる。こうした3つの要因から、「高市カラー」はかなり弱まる可能性が考えられる。
高市政権が受け入れる維新の会の政策は何か?
先般の参院選での日本維新の会の公約は以下の4つからなる。
1)社会保険料を下げて暮らしを変える
2)副首都から起動する経済成長
3)教育・保育の無償化と質の向上
4)命を守る外交・安全保障と憲法改正
日本維新の会との連立政権が成立すれば、日本維新の会が掲げる政策の一部を高市氏は受け入れるだろう。その中でも有力なのは、第1にガソリン暫定税率廃止、第2に社会保険料の引き下げ、第3に教育無償化の拡大、第4に副首都構想、と考えられる。
第1のガソリン暫定税率廃止については、他の野党や自民党も既に合意していることであり、次の臨時国会で成立する可能性が高い。ただし、日本維新の会は減税の恒久財源確保を求める可能性があり、その場合には、大企業に有利とされる租税優遇措置の見直しなどが財源の選択肢となるだろう。
第2の社会保険料の引き下げについて、後期高齢者支援金等の圧縮、OTC類似薬の保険適用除外などを通じて、現役世代1人当たりの社会保険料を年間6万円引き下げることを日本維新の会は公約に掲げた。この規模での実施は難しいとしても、社会保険料の引き下げについては実現される可能性があるだろう。
第3に教育無償化の拡大については、日本維新の会は、義務教育に加えて幼児教育、高校、大学、大学院と、教育の全課程の無償化を目指している。高市政権のもとで、こうした政策は部分的に実行されるとみられる。
第4に、日本維新の会は、中央集権体制と東京一極集中を打破し、地方分権・多極型の国家構造を実現するための第1歩として、災害等の発生時に首都中枢機能を代替できる「副首都」をつくるとしている。中央省庁をはじめとした首都機能の一部を移転することで、東京一極集中から段階的に多極型の日本社会へと移行を目指す。想定されているのは大阪であり、大阪都構想と関連しているとされる。防災対策を重視する観点から、高市政権はこの副首都構想を受け入れる可能性が考えられる。
その他に日本維新の会が掲げる高齢者の医療費窓口負担の1割から3割への引き上げ、最低所得保障制度(ベーシックインカム)導入、給付付きの「勤労税額控除」の導入、出産・保育の無償化、道州制の導入、なども高市政権のもとで時間をかけて議論されることが予想される。
1)社会保険料を下げて暮らしを変える
2)副首都から起動する経済成長
3)教育・保育の無償化と質の向上
4)命を守る外交・安全保障と憲法改正
日本維新の会との連立政権が成立すれば、日本維新の会が掲げる政策の一部を高市氏は受け入れるだろう。その中でも有力なのは、第1にガソリン暫定税率廃止、第2に社会保険料の引き下げ、第3に教育無償化の拡大、第4に副首都構想、と考えられる。
第1のガソリン暫定税率廃止については、他の野党や自民党も既に合意していることであり、次の臨時国会で成立する可能性が高い。ただし、日本維新の会は減税の恒久財源確保を求める可能性があり、その場合には、大企業に有利とされる租税優遇措置の見直しなどが財源の選択肢となるだろう。
第2の社会保険料の引き下げについて、後期高齢者支援金等の圧縮、OTC類似薬の保険適用除外などを通じて、現役世代1人当たりの社会保険料を年間6万円引き下げることを日本維新の会は公約に掲げた。この規模での実施は難しいとしても、社会保険料の引き下げについては実現される可能性があるだろう。
第3に教育無償化の拡大については、日本維新の会は、義務教育に加えて幼児教育、高校、大学、大学院と、教育の全課程の無償化を目指している。高市政権のもとで、こうした政策は部分的に実行されるとみられる。
第4に、日本維新の会は、中央集権体制と東京一極集中を打破し、地方分権・多極型の国家構造を実現するための第1歩として、災害等の発生時に首都中枢機能を代替できる「副首都」をつくるとしている。中央省庁をはじめとした首都機能の一部を移転することで、東京一極集中から段階的に多極型の日本社会へと移行を目指す。想定されているのは大阪であり、大阪都構想と関連しているとされる。防災対策を重視する観点から、高市政権はこの副首都構想を受け入れる可能性が考えられる。
その他に日本維新の会が掲げる高齢者の医療費窓口負担の1割から3割への引き上げ、最低所得保障制度(ベーシックインカム)導入、給付付きの「勤労税額控除」の導入、出産・保育の無償化、道州制の導入、なども高市政権のもとで時間をかけて議論されることが予想される。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。