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27日に片山財務相とベッセント米財務長官は東京で会談を行った。その場で片山財務相は、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」について説明した。高市政権は、財政の健全性に配慮しつつも政府投資の拡大など積極財政で成長率を高めることを目指す。ベッセント財務長官はこの方針を評価して、「日本が良いシグナルを送っている」と述べた。日米貿易不均衡の縮小に寄与する日本の積極財政については、トランプ政権は基本的には評価するだろう。
 
さらに両者は、ロシアに対する追加制裁措置についても協議した。特に、ロシア産LNG輸入停止を含む措置が議論された。ベッセント財務長官は加藤前財務相に対して、ロシア産LNG輸入停止を求めたが、片山財務相にも同様の要請をした可能性がある。片山財務相の回答は明らかではないが、このテーマは、日米首脳会談でも議論された可能性がある。
 
注目されたのは、為替問題が議題に上がらなかった点だ。片山大臣は会談後に、「日本銀行の金融政策や為替市場への直接的な言及はなかった」と説明した。金融市場に大きな影響を与えるこうした議題は避けた、あるいは議論を明らかにしないことで両者が合意したとみられる。実際、日米財務相会談は、金融市場に目立った影響を与えていない。
 
また、共同声明など合意文書は発表されず、両財務相の実務的な意見交換にとどまったことが今回の会談の特徴だ。ただし、米財務省が会談内容について以下の声明を発表している。
 
「ベッセント財務長官は東京で片山財務大臣と会談し、世界的な経済課題への対応に関する二国間および多国間協力の強化について協議した。両者は、エネルギー安全保障およびサプライチェーンの強靭化に向けた協力を再確認した。また、ロシアに対する制裁の継続と実効性確保の重要性を強調し、協調して対応することを確認した。会談では為替問題は議題に含まれず、共同声明は発表されなかった。」

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。