追加利下げを決定も利下げと据え置きの双方の立場から反対票
米連邦準備制度理事会(FRB)は、10月28~29日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き下げ、3.75%~4.00%とすることを決定した。利下げは前回9月に続き2会合連続である。また、既に示唆されたように、米国債の保有削減は12月1日で終了することも決められた。
この決定自体は全く事前予想通りであったが、利下げへの反対票が投じられたことや、パウエル議長が12月の次回FOMCでの利下げが既定路線ではないなどの慎重な発言をしたことから、先行きの利下げ観測がやや後退した。
利下げは賛成10、反対2で決定された。トランプ大統領の経済アドバイザーで利下げ積極派のミラン理事が、前回と同様に0.5%ポイントの利下げを主張した。他方、カンザスシティ連銀のシュミッド総裁が金利据え置きを主張した。利下げと据え置きの双方の立場から反対票が投じられたのは、1990年以降で今回が3回目となる。
この決定自体は全く事前予想通りであったが、利下げへの反対票が投じられたことや、パウエル議長が12月の次回FOMCでの利下げが既定路線ではないなどの慎重な発言をしたことから、先行きの利下げ観測がやや後退した。
利下げは賛成10、反対2で決定された。トランプ大統領の経済アドバイザーで利下げ積極派のミラン理事が、前回と同様に0.5%ポイントの利下げを主張した。他方、カンザスシティ連銀のシュミッド総裁が金利据え置きを主張した。利下げと据え置きの双方の立場から反対票が投じられたのは、1990年以降で今回が3回目となる。
労働市場の下振れリスクは想定以上
会合後の声明は、「雇用の伸びは鈍化」したとの判断を改めて示し、「ここ数か月で雇用へのリスクが高まった」と指摘した。パウエル議長も特に低所得層がストレスを受ける兆しが強まる中、雇用情勢が悪化に向かっていないか注視していると指摘し、「労働市場の状況は徐々に冷え込んでおり、われわれが考えていたよりも下振れのリスクが高いことが示唆されている」と雇用の弱さに警戒色を示した。
パウエル議長は、現在の金利は「適度に抑制的」で、依然としてインフレに若干の下押し圧力をかけているという見解を示した。これは、政策金利がなお引き下げられる途中にあることを示唆している。FOMCのメンバーが予想する政策金利の中長期の平均水準は3.0%程度であり、来年には3%程度の水準まで政策金利は引き下げられることが見込まれる。
パウエル議長は、現在の金利は「適度に抑制的」で、依然としてインフレに若干の下押し圧力をかけているという見解を示した。これは、政策金利がなお引き下げられる途中にあることを示唆している。FOMCのメンバーが予想する政策金利の中長期の平均水準は3.0%程度であり、来年には3%程度の水準まで政策金利は引き下げられることが見込まれる。
12月の利下げは既定路線ではない
しかしパウエル議長は、12月のFOMCにおいて3会合連続で利下げが実施されるという市場の観測を敢えて強くけん制したのである。
政府閉鎖によって政策判断をするために必要な経済指標の発表が遅れていることを受けてパウエル議長は、「霧の中を運転していたらどうするか。スピードを落とすだろう」と語り、データ不足で経済の判断が難しい場合には利下げを見合わせる可能性を示唆した。
さらにパウエル議長は、FOMC内での意見が割れていることも指摘している。パウエル議長は、「今回の会合の討議で、12月(の次回会合)の対応を巡り大きな見解の相違があった」「12月の会合での利下げ決定は既定路線ではない。政策はあらかじめ定められた軌道に乗っているわけではない」と述べた。また、差し迫った利下げを見送る用意のある当局者が増えているとも指摘し、一部の当局者の間で当面は様子を見たいという心理が出ている、との認識を示した。
政府閉鎖によって政策判断をするために必要な経済指標の発表が遅れていることを受けてパウエル議長は、「霧の中を運転していたらどうするか。スピードを落とすだろう」と語り、データ不足で経済の判断が難しい場合には利下げを見合わせる可能性を示唆した。
さらにパウエル議長は、FOMC内での意見が割れていることも指摘している。パウエル議長は、「今回の会合の討議で、12月(の次回会合)の対応を巡り大きな見解の相違があった」「12月の会合での利下げ決定は既定路線ではない。政策はあらかじめ定められた軌道に乗っているわけではない」と述べた。また、差し迫った利下げを見送る用意のある当局者が増えているとも指摘し、一部の当局者の間で当面は様子を見たいという心理が出ている、との認識を示した。
12月の連続利下げがメインシナリオ
実際、今回利下げの見送りを主張したシュミッド総裁を含め、複数のメンバーは利下げに慎重であることが考えられる。ただし、12月の利下げが既定路線ではないことを強調し、利下げ観測をあえてけん制したパウエル議長の発言には、利下げ圧力をかけるトランプ大統領への反発の意図も込められているのではないか。12月の利下げの有無は、今後発表される経済指標次第であるとは言え、雇用関連指標の明確な弱さを踏まえれば、12月にも連続利下げが実施される可能性は相応に高いと見ておきたい。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。