野田代表は高市経済政策の円安・物価高、財政悪化のリスクに焦点
10月24日に高市首相は臨時国会所信表明演説を行った。それに対する代表質問が、11月4日から衆議院で始まった。
冒頭で質問に立った立憲民主党の野田代表は、物価高対策が遅れていること、積極財政・金融緩和継続といった高市政権の経済政策が円安を招き、物価高を助長して国民生活をむしろ悪化させる可能性があること、経済対策によってプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標の達成が遠のいてしまうリスクがあること、など、高市政権の経済政策の問題点に切り込んだ。
さらに野田代表は、アベノミクスの継承者とされる高市首相に対して、副作用を生んだアベノミクスをどのように評価するか質した。
積極財政・金融緩和継続といった高市政権の経済政策が円安を招き、物価高を助長して国民生活をむしろ悪化させてしまうという点は、まさに高市政権の経済政策が掲げる大きな弱点ともなっている。今後国民が、この点を問題視する場合には、高市政権の経済政策は、その根幹が軌道修正を迫られるだろう。ただし、この円安のリスクについては、高市首相は直接的には回答をしなかった。
補正予算の規模についても、高市首相は明言を避けた。補正予算の規模は必要な施策の積み重ねであり、財政健全化目標との整合性を保つが、規模については予め明らかにはしないと回答した。また、財政政策については責任ある積極財政を掲げ、バラマキ的ではなく、日本の供給構造の強化に資する戦略的な財政出動を重視する考えを示した。
冒頭で質問に立った立憲民主党の野田代表は、物価高対策が遅れていること、積極財政・金融緩和継続といった高市政権の経済政策が円安を招き、物価高を助長して国民生活をむしろ悪化させる可能性があること、経済対策によってプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標の達成が遠のいてしまうリスクがあること、など、高市政権の経済政策の問題点に切り込んだ。
さらに野田代表は、アベノミクスの継承者とされる高市首相に対して、副作用を生んだアベノミクスをどのように評価するか質した。
積極財政・金融緩和継続といった高市政権の経済政策が円安を招き、物価高を助長して国民生活をむしろ悪化させてしまうという点は、まさに高市政権の経済政策が掲げる大きな弱点ともなっている。今後国民が、この点を問題視する場合には、高市政権の経済政策は、その根幹が軌道修正を迫られるだろう。ただし、この円安のリスクについては、高市首相は直接的には回答をしなかった。
補正予算の規模についても、高市首相は明言を避けた。補正予算の規模は必要な施策の積み重ねであり、財政健全化目標との整合性を保つが、規模については予め明らかにはしないと回答した。また、財政政策については責任ある積極財政を掲げ、バラマキ的ではなく、日本の供給構造の強化に資する戦略的な財政出動を重視する考えを示した。
金融政策への介入姿勢は修正され始めているか?
金融政策について高市首相は、消費者物価指数の上昇率は現在3%程度まで高まっているが、これはコストプッシュ型の物価上昇であり、「持続的、安定的な物価上昇はまだ道半ば」であるとした。これは、日本銀行に利上げに慎重な姿勢を求める主旨の発言と考えられる。
しかし一方で、「日銀には2%の持続的物価目標実現に適切な金融政策運営を期待する」と、従来の政府の公式見解を踏襲した点が注目される。
首相就任時には、政府が金融政策にも責任を持ち、その方針を決める、と政府が金融政策に介入する考えを高市首相は明らかにしていた。しかし、先日の所信表明演説では、金融政策に言及しなかった。さらに本日は金融政策についての政府の公式見解を繰り返したことを踏まえると、高市首相の金融政策への介入姿勢は、既に修正され始めている可能性も考えられるのではないか。
しかし一方で、「日銀には2%の持続的物価目標実現に適切な金融政策運営を期待する」と、従来の政府の公式見解を踏襲した点が注目される。
首相就任時には、政府が金融政策にも責任を持ち、その方針を決める、と政府が金融政策に介入する考えを高市首相は明らかにしていた。しかし、先日の所信表明演説では、金融政策に言及しなかった。さらに本日は金融政策についての政府の公式見解を繰り返したことを踏まえると、高市首相の金融政策への介入姿勢は、既に修正され始めている可能性も考えられるのではないか。
アベノミクスの第3の矢を修正したものが「危機管理投資」か
野田代表は、アベノミクスはデフレ克服の壮大な実験であったが、辞め時を誤り、格差拡大などの副作用を生んだ、と指摘した。そのうえで高市首相に対して、アベノミクスをどのように評価し、それを継承するのか、修正するのか、と迫った。
高市首相は、アベノミクスは日本経済にデフレではない状況を作り上げたと前向きに評価する一方、第3の矢である成長戦略の成果は十分ではなかったと評価した。その点を踏まえてアベノミクスの第3の矢を修正したのが、高市政権が掲げる「危機管理投資」なのだろう。
高市首相は、アベノミクスは日本経済にデフレではない状況を作り上げたと前向きに評価する一方、第3の矢である成長戦略の成果は十分ではなかったと評価した。その点を踏まえてアベノミクスの第3の矢を修正したのが、高市政権が掲げる「危機管理投資」なのだろう。
「危機管理投資」を推進する「成長戦略本部」が発足
ところで4日に、高市首相は、前政権までの「新しい資本主義実現会議」を廃止して、「成長戦略本部」を発足させた。これは、高市政権の看板政策である「危機管理投資」を中心とした経済政策を進めるための組織だ。
成長戦略という名前はついているが、今までの政権が進めてきた成長戦略とは異なり、政府が投資を拡大させることで、防衛、災害、経済安全保障、食料・エネルギーの安全保障を強化することを目指している。
アベノミクスの第3の矢は、政府が経済の供給側に働きかける成長戦略、構造改革を通じて民間の投資拡大を促し、それをさらなる供給力の強化に繋げていくものだ。
「危機管理投資」はこれとは異なり、政府が投資を拡大するという需要側の政策である。
しかしその需要押し上げの効果は一時的に終わり、民間への波及効果は小さい一方、巨額の政府債務を残してしまうリスクがあるのではないか。
成長戦略という名前はついているが、今までの政権が進めてきた成長戦略とは異なり、政府が投資を拡大させることで、防衛、災害、経済安全保障、食料・エネルギーの安全保障を強化することを目指している。
アベノミクスの第3の矢は、政府が経済の供給側に働きかける成長戦略、構造改革を通じて民間の投資拡大を促し、それをさらなる供給力の強化に繋げていくものだ。
「危機管理投資」はこれとは異なり、政府が投資を拡大するという需要側の政策である。
しかしその需要押し上げの効果は一時的に終わり、民間への波及効果は小さい一方、巨額の政府債務を残してしまうリスクがあるのではないか。
第3の矢こそ継承すべきではないか
高市首相は、アベノミクスの第1の矢と第2の矢を継承する一方、第3の成長戦略を修正しようとしている。しかし実際には、第1の矢と第2の矢を継承せずに、第3の矢こそしっかりと継承すべきなのではないか。
高市政権には、民間経済の力を最大限引き出し、日本経済の供給力、潜在力を高める経済効率の高い財政支出、いわゆるワイズスペンディング(賢い支出)をもっと強く意識して欲しい。
高市政権には、民間経済の力を最大限引き出し、日本経済の供給力、潜在力を高める経済効率の高い財政支出、いわゆるワイズスペンディング(賢い支出)をもっと強く意識して欲しい。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。