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日本銀行は11月10日に、10月29・30日に行われた金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。

金融政策運営に関する意見では、「タイミングを逃さずに利上げを行うべきである」「金利の正常化をもう一歩進める上では、条件が整いつつある」「利上げを行うべきタイミングが近づいている」などと、利上げ実施に前向きな発言が前回の「主な意見」よりも増えている。

他方、利上げに否定的な意見はなく、近い将来の利上げを前提に、現時点ではもう少し状況を見極めるべき、との意見があるだけだ。政策委員会の中で、利上げへの前傾姿勢が全体として強まっていることは明らかだ。

主な意見の順番、配置にも注目したい。従来、この主な意見では、日本銀行としての公式見解をなぞる総裁、副総裁の意見を冒頭に配置し、その後に審議委員の意見を公式見解に近い順に並べる傾向があった。2名が利上げを主張した前回9月の金融政策決定会合の主な意見では、総裁、副総裁の意見の後に、現時点での利上げに慎重な審議委員の意見を配置し、最後に利上げを主張する2名とみられる意見を配置した。

ところが今回は、金融政策運営に関する13の意見のうち、上から4番目までとみられる総裁、副総裁の意見を通常通りに冒頭に配置した後に、タカ派色の強い審議委員の意見が配置された。その後は、もう少し状況を見極めたいとする審議委員の穏健派の意見とタカ派の意見とが混在する異例な配置となった。

細かい点ではあるが、従来と比べて意見の配置がややイレギュラーであり、異例に映った。こうした文章の配置は、利上げを主張する意見を、事実上、従来よりも格上げするものと考えられる。

その狙いとしては、日本銀行が利上げを続ける姿勢は揺るがず、それがすべての政策委員の間で共有されていることを、日本銀行の利上げをけん制する高市政権に対してアピールすることがあったのではないかと推察される。日本銀行としては露骨に高市政権と対立することは避ける一方、政権に対して静かなる抵抗を見せているのではないか。

こうした点を踏まえると、次回12月の金融政策決定会合で日本銀行が利上げを実施する可能性は高まっているとみたい。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。