&N 未来創発ラボ

野村総合研究所と
今を語り、未来をみつめるメディア

日本時間11日に、米上院はつなぎ予算案を賛成60票、反対40票で可決した。これによって、10月初めから続く過去最長の政府機関閉鎖が向こう数日のうちにも終了する可能性が高まっている。
 
民主党の反対によって成立が阻まれていたつなぎ予算案が上院で可決されたのは、9日に上院民主党の穏健派議員8名が法案可決に賛成する姿勢に転じたことによる。この法案が下院でも可決され成立すれば、来年1月まで連邦政府機関の予算を執行できるようになる。また、退役軍人向けプログラムと兵舎建設、農務省および議会の通年予算を手当てする3つの法案もこれに含まれている。
 
他方で、民主党が求めてきたACAの医療保険補助金の延長については含まれなかった。共和党は、12月第2週までにその採決を行うことを約束している。しかし、ACAの医療保険補助金の延長を含まないつなぎ予算案に上院民主党の穏健派議員8名が賛成したことを、多くの民主党議員は強く批判している。民主党全体では、ACAの医療保険補助金の延長を勝ち取るまで、政府機関閉鎖を続けることを主張する声はなお強い。
 
下院はつなぎ予算案を12日に採決する予定だ。トランプ大統領は同法案について「民主党の十分な支持を得ている」とし、下院での可決を経て政府機関を「非常に迅速に」再開させる、との見方を示している。
 
しかし下院民主党議員の多くはこの法案に賛成しない立場を明確にしており、共和党が僅差での過半数にとどまっている下院で同法案が可決され、政府機関閉鎖が終了するかどうかには、なお不確実性が残る。
 
10月1日に始まった政府機関閉鎖は、6週間近く続いている。その間、空の便の混乱や食料支援の遅延など、経済の混乱が生じてきた。米ミシガン大学が7日に発表した11月の消費者信頼感指数(速報値)は約3年半ぶりの低水準に落ち込んだ。
 
議会予算局(CBO)の試算によると、政府閉鎖が向こう数日で終了し、その期間が6週間程度となる場合には、経済損失は280億ドルに達し、10~12月期の実質GDPは前期比年率1.5%押し下げられる。既に大きな経済的打撃が米国経済には及んでいる。
 
政府機関閉鎖が解除されれば、停止していた雇用統計などの経済指標の発表が再開される。これは、米国経済の実態をより正確に把握することにつながる。また、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策もよりデータに基づいたものとなる。こうした点は、金融市場の不確実性を低下させ、その安定にプラスに働くだろう。
 
(参考資料)
「米民主党、上院での造反に党内で批判噴出」、2025年11月11日、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。