11月26日に国会で党首討論が行われた。50分間程度の短い間に、日中関係、経済対策、政治とカネの問題、年収の壁対策、非核3原則、スパイ防止法など幅広いテーマが議論された。
野田・立憲民主党代表は、政府が21日に閣議決定した経済対策の課題について多くの時間を割いて質問した。野田代表は、物価高対策は緊急性があるが、それ以外の危機管理投資、防衛費増額などは緊急性を欠いており、そうした不要不急の支出を盛り込んだ結果、21.3兆円という巨額の経済対策となった点を指摘した。この指摘は正しいだろう。緊急性の高い個人向けの物価高対策に限定しておけば、経済対策の規模は数兆円に収まったと考えられる。不要不急の支出を盛り込み、規模を大きくすることを狙ったことは否めない。
さらに野田代表は、高市政権の積極財政を放漫財政と呼び、それに対して、金融市場が警鐘を鳴らしているとして、長期・超長期の金利上昇と円安進行を問題視した。高市首相が総裁選に勝利して以降、ほぼ一方向で長期金利は上昇し、円安が進んでいる。さらに、経済対策の規模が大きくなるとの観測から、先週だけでも長期金利の上昇と円安はかなり進んだ。今回の経済対策を見て、金融市場はこの先も高市政権のもとで財政がさらに拡張的になることへの警戒を強めたことは確かだろう。長期金利の上昇や円安による物価高は、物価高対策の効果を削いでしまう上に、国民生活に悪影響を与えかねないため注意が必要だ。
野田代表が指摘したように、日本で英国のトラスショックのような規模での金融市場の混乱が生じるかは分からないが、財政悪化観測でこれほど金融市場が動いたことは近年なく、金融市場の警鐘と言っても間違いではないだろう。
玉木・国民民主党代表は、昨年、自民・公明・国民民主の間でなされた3党合意の一部であるガソリン暫定税率の廃止を年内に実現することについて、高市首相に謝辞を述べた。そのうえで、国民民主党が求める178万円までの所得税の課税最低限引き上げについて、高市首相の考えを質した。これに対して高市首相は、手取りを増やす政策については賛成と述べ、年収の壁対策をさらに前進するために工夫をし、国民民主党とともに関所を越えると述べた。
しかし、国民民主党が主張してきた178万円までの課税最低限引き上げ実施については明言を避けた。自民党が受け入れた160万円までの課税最低限引き上げは、1.2兆円程度の減収になると推定される。しかし仮に、国民民主党が主張してきた、所得制限を設けない形で178万円までの課税最低限引き上げを実施すれば、7~8兆円の減収になるとみられる。高市首相が国民民主党の主張をどの程度受け入れるかで、将来の財政収支の見通しが大きく変わってくるのである。
これは防衛費増額についても同様であり、防衛費(関連費も含む)をGDP比3.5%~5.0%まで引き上げるのであれば、10兆円~20兆円規模の歳出増加が必要となり、それは国債発行で賄われる可能性が高い。
高市政権の積極財政政策を受けて、金融市場は混乱しているとは言えないものの、非常にセンシティブになっていることは確かだ。巨額の経済対策に続いて、年収の壁対策や防衛費増額についての高市首相の発言に、債券市場、為替市場が過剰に反応するリスクが高まっている。財政政策についても、慎重な言動が高市首相には求められる状況になっている。
野田・立憲民主党代表は、政府が21日に閣議決定した経済対策の課題について多くの時間を割いて質問した。野田代表は、物価高対策は緊急性があるが、それ以外の危機管理投資、防衛費増額などは緊急性を欠いており、そうした不要不急の支出を盛り込んだ結果、21.3兆円という巨額の経済対策となった点を指摘した。この指摘は正しいだろう。緊急性の高い個人向けの物価高対策に限定しておけば、経済対策の規模は数兆円に収まったと考えられる。不要不急の支出を盛り込み、規模を大きくすることを狙ったことは否めない。
さらに野田代表は、高市政権の積極財政を放漫財政と呼び、それに対して、金融市場が警鐘を鳴らしているとして、長期・超長期の金利上昇と円安進行を問題視した。高市首相が総裁選に勝利して以降、ほぼ一方向で長期金利は上昇し、円安が進んでいる。さらに、経済対策の規模が大きくなるとの観測から、先週だけでも長期金利の上昇と円安はかなり進んだ。今回の経済対策を見て、金融市場はこの先も高市政権のもとで財政がさらに拡張的になることへの警戒を強めたことは確かだろう。長期金利の上昇や円安による物価高は、物価高対策の効果を削いでしまう上に、国民生活に悪影響を与えかねないため注意が必要だ。
野田代表が指摘したように、日本で英国のトラスショックのような規模での金融市場の混乱が生じるかは分からないが、財政悪化観測でこれほど金融市場が動いたことは近年なく、金融市場の警鐘と言っても間違いではないだろう。
玉木・国民民主党代表は、昨年、自民・公明・国民民主の間でなされた3党合意の一部であるガソリン暫定税率の廃止を年内に実現することについて、高市首相に謝辞を述べた。そのうえで、国民民主党が求める178万円までの所得税の課税最低限引き上げについて、高市首相の考えを質した。これに対して高市首相は、手取りを増やす政策については賛成と述べ、年収の壁対策をさらに前進するために工夫をし、国民民主党とともに関所を越えると述べた。
しかし、国民民主党が主張してきた178万円までの課税最低限引き上げ実施については明言を避けた。自民党が受け入れた160万円までの課税最低限引き上げは、1.2兆円程度の減収になると推定される。しかし仮に、国民民主党が主張してきた、所得制限を設けない形で178万円までの課税最低限引き上げを実施すれば、7~8兆円の減収になるとみられる。高市首相が国民民主党の主張をどの程度受け入れるかで、将来の財政収支の見通しが大きく変わってくるのである。
これは防衛費増額についても同様であり、防衛費(関連費も含む)をGDP比3.5%~5.0%まで引き上げるのであれば、10兆円~20兆円規模の歳出増加が必要となり、それは国債発行で賄われる可能性が高い。
高市政権の積極財政政策を受けて、金融市場は混乱しているとは言えないものの、非常にセンシティブになっていることは確かだ。巨額の経済対策に続いて、年収の壁対策や防衛費増額についての高市首相の発言に、債券市場、為替市場が過剰に反応するリスクが高まっている。財政政策についても、慎重な言動が高市首相には求められる状況になっている。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。