トランプ大統領の忠誠心が高いハセット氏がFRB次期議長に最も近い人物に
来年5月に議長職としての任期を終えるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任に、ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長が有力、との見方が広がっている。
ブルームバーグは11月25日に、ハセット氏がFRB次期議長に最も近いとみられている、と報道した。トランプ大統領は11月30日に記者団に対して、「誰を選ぶかは決めている」と語った。その際に、ハセット氏を選ぶ考えかの問いには答えなかった。
さらにトランプ大統領は12月2日に、候補者を1人に絞り込んだ、と記者団に語った。その後のイベントで、同席していたハセット氏を「FRB議長候補」として紹介した。また、トランプ大統領は次期FRB議長の人選プロセスがほぼ完了したことを示唆する一方、来年初めまでは最終決定を明かさないと述べた。
発言内容が短期間で変わるトランプ大統領の傾向に照らせば、ハセット氏が次期FRB議長に確定したとは言えないものの、現時点で最有力候補であることは確かだろう。それ以外の最終候補者は、ウォラーFRB理事やボウマン副議長(銀行監督担当)、ウォーシュ元FRB理事、ブラックロック幹部のリック・リーダー氏である。
ハセット氏は第1次トランプ政権時に、中央銀行の独立性を守る重要性を強く訴えていたが、第1次トランプ政権のもとではトランプ大統領とともにFRBとパウエル氏を厳しく批判してきた。ハセット氏は今夏と11月に、FRBがより積極的な利下げに踏み切らなかったのは民主党寄りであるためと非難した。
ハセット氏が次期議長候補として最も有力である理由は、他の候補者よりもトランプ大統領が望む金融緩和に積極的であり、またトランプ大統領に対する忠誠心が強いためと考えられる。ウォールストリートジャーナル紙によると、ハセット氏は政権関係者らに、FRB次期議長への就任を望んでおり、自分が最適な候補者であると訴えてきたという。
ブルームバーグは11月25日に、ハセット氏がFRB次期議長に最も近いとみられている、と報道した。トランプ大統領は11月30日に記者団に対して、「誰を選ぶかは決めている」と語った。その際に、ハセット氏を選ぶ考えかの問いには答えなかった。
さらにトランプ大統領は12月2日に、候補者を1人に絞り込んだ、と記者団に語った。その後のイベントで、同席していたハセット氏を「FRB議長候補」として紹介した。また、トランプ大統領は次期FRB議長の人選プロセスがほぼ完了したことを示唆する一方、来年初めまでは最終決定を明かさないと述べた。
発言内容が短期間で変わるトランプ大統領の傾向に照らせば、ハセット氏が次期FRB議長に確定したとは言えないものの、現時点で最有力候補であることは確かだろう。それ以外の最終候補者は、ウォラーFRB理事やボウマン副議長(銀行監督担当)、ウォーシュ元FRB理事、ブラックロック幹部のリック・リーダー氏である。
ハセット氏は第1次トランプ政権時に、中央銀行の独立性を守る重要性を強く訴えていたが、第1次トランプ政権のもとではトランプ大統領とともにFRBとパウエル氏を厳しく批判してきた。ハセット氏は今夏と11月に、FRBがより積極的な利下げに踏み切らなかったのは民主党寄りであるためと非難した。
ハセット氏が次期議長候補として最も有力である理由は、他の候補者よりもトランプ大統領が望む金融緩和に積極的であり、またトランプ大統領に対する忠誠心が強いためと考えられる。ウォールストリートジャーナル紙によると、ハセット氏は政権関係者らに、FRB次期議長への就任を望んでおり、自分が最適な候補者であると訴えてきたという。
高まるドル安リスク
また、ハセット氏は博士号を持つ経済学者であり、FRBの元スタッフエコノミストという経歴も候補者としての優位性を支えている。
ハセット氏は2017年から2019年まで大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長を務め、今年1月にNEC委員長に就任した。
ハセット氏がFRB議長に指名されれば、積極金融緩和への期待から、短期的には債券高、ドル安要因となるだろう。他方、トランプ大統領のFRBへの影響力が強まり、FRBの独立性が損なわれるとの見方が広がるに及んで、債券安、ドル安に転じる可能性が考えられる。
ハセット氏は2017年から2019年まで大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長を務め、今年1月にNEC委員長に就任した。
ハセット氏がFRB議長に指名されれば、積極金融緩和への期待から、短期的には債券高、ドル安要因となるだろう。他方、トランプ大統領のFRBへの影響力が強まり、FRBの独立性が損なわれるとの見方が広がるに及んで、債券安、ドル安に転じる可能性が考えられる。
進むトランプ大統領によるFRB支配
実際、人事を通じたトランプ大統領によるFRB支配は今後さらに進んでいくとみられる。米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つ7人の本部理事のうち、既に3人はトランプ大統領が指名した積極金融緩和派だ。
議長は理事の中から選ばれる。パウエル議長は来年5月に議長職としての任期を終えるが、理事職の任期は2028年1月まで残されている。理事のポストをトランプ大統領の息のかかった積極緩和派に渡さないために、パウエル議長は理事を辞任しない可能性がある。
この場合、突如辞任したクグラ―前理事に代わって来年1月31日までの短期間、理事職を引き継いだトランプ大統領の経済アドバイザーであるミラン氏が、そのポストを次期議長に渡すことになる。そのため、来年1月には、トランプ大統領は新議長を決めておく必要がある。
さらに、トランプ大統領が解任を発表したクック理事が仮に解任されれば、その職をミラン氏が引き継ぐとされる。その場合には新議長を含めて、7人中4人の理事がトランプ派となる。また、パウエル議長が来年5月に理事職を辞する場合には、その後任にも積極緩和重視のトランプ派が充てられ、トランプ派は7人中5人にまで達することになる。人事を通じたトランプ大統領によるFRB支配はさらに進む。
(参考資料)
“Why Kevin Hassett Is Winning the Fed Chair Race Before It Has Ended(FRB次期議長レース、ハセット氏が勝利目前な理由)”, Wall Street Journal, December 3, 2025
議長は理事の中から選ばれる。パウエル議長は来年5月に議長職としての任期を終えるが、理事職の任期は2028年1月まで残されている。理事のポストをトランプ大統領の息のかかった積極緩和派に渡さないために、パウエル議長は理事を辞任しない可能性がある。
この場合、突如辞任したクグラ―前理事に代わって来年1月31日までの短期間、理事職を引き継いだトランプ大統領の経済アドバイザーであるミラン氏が、そのポストを次期議長に渡すことになる。そのため、来年1月には、トランプ大統領は新議長を決めておく必要がある。
さらに、トランプ大統領が解任を発表したクック理事が仮に解任されれば、その職をミラン氏が引き継ぐとされる。その場合には新議長を含めて、7人中4人の理事がトランプ派となる。また、パウエル議長が来年5月に理事職を辞する場合には、その後任にも積極緩和重視のトランプ派が充てられ、トランプ派は7人中5人にまで達することになる。人事を通じたトランプ大統領によるFRB支配はさらに進む。
(参考資料)
“Why Kevin Hassett Is Winning the Fed Chair Race Before It Has Ended(FRB次期議長レース、ハセット氏が勝利目前な理由)”, Wall Street Journal, December 3, 2025
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。