「OTC類似薬」の保険適用外は見送りへ
政府・与党は、市販薬と成分や効能が似ている医療用医薬品の「OTC類似薬」を保険適用外にして、医療費の削減、医療保険料負担の削減につなげる施策を見送ることを決めた。「OTC類似薬」の保険適用外は、高齢者の医療費自己負担の原則3割化と並んで、医療費4兆円の削減を目指す日本維新の会が政府・自民党に実現を求める連立合意の一部だ。しかし、高市政権下での医療費削減の取り組みは、早くも失速し始めた感がある。
日本維新の会は、湿布薬や花粉症薬、解熱鎮痛剤など約7,000品目の薬を保険から外すことを訴え、それを実現すれば医療給付を1兆円削減できると試算していた。患者が市販薬品を自ら購入するのではなく、保険適用で安価な医薬品を得るために通院することが、医療費の増加につながっている点を問題視したのである。
日本医師会はこの保険適用外の案に対して、受診控えによる健康被害や薬の適正使用が困難になることを理由に反対していた。また、OTC類似薬を継続的に使うアレルギー性疾患やがんの患者団体も、経済的負担が重いとして反発していた。こうした意見を踏まえて、政府・与党は保険適用を維持する方向に傾いた。
日本維新の会は、湿布薬や花粉症薬、解熱鎮痛剤など約7,000品目の薬を保険から外すことを訴え、それを実現すれば医療給付を1兆円削減できると試算していた。患者が市販薬品を自ら購入するのではなく、保険適用で安価な医薬品を得るために通院することが、医療費の増加につながっている点を問題視したのである。
日本医師会はこの保険適用外の案に対して、受診控えによる健康被害や薬の適正使用が困難になることを理由に反対していた。また、OTC類似薬を継続的に使うアレルギー性疾患やがんの患者団体も、経済的負担が重いとして反発していた。こうした意見を踏まえて、政府・与党は保険適用を維持する方向に傾いた。
医療費削減効果は4割程度に縮小する可能性
日本維新の会が12日に政府に提出した提言では、「今後の(OTC類似薬の)保険適用除外を見据えて」とした上で、「その(OTC類似薬の)薬剤費を『特別の料金』として利用者にご負担いただく枠組みを設ける」と明記した。日本維新の会は、来月からの通常国会に関連法案を提出し、26年度中にその枠組みを開始するよう求めている。
この案は、OTC類似薬と市販薬との価格差を小さくすることで、深刻な病状ではない患者が通院ではなく市販薬を選択する行動変容へつなげることを目指すものだ。ただし、価格差は残ることから、患者が市販薬を選択するインセンティブは大きくは高まらない可能性が考えられる。
OTC類似薬を継続的に使うアレルギー性疾患やがんの患者などや、低所得者には十分に配慮したうえで、OTC類似薬を原則保険適用外とすることで、医療費の削減を進めるべきではないか。
OTC類似薬の保険適用外に代わる追加負担の制度について、政府が与党に示した試算によると、花粉症薬や解熱鎮痛剤を含む1,000程度の成分を対象に薬剤費の4分の1の追加負担を求めた場合、医療給付費は4,100億円ほど削減できるという。OTC類似薬の保険適用外による削減額の1兆円と比べると4割程度に縮小する。
この案は、OTC類似薬と市販薬との価格差を小さくすることで、深刻な病状ではない患者が通院ではなく市販薬を選択する行動変容へつなげることを目指すものだ。ただし、価格差は残ることから、患者が市販薬を選択するインセンティブは大きくは高まらない可能性が考えられる。
OTC類似薬を継続的に使うアレルギー性疾患やがんの患者などや、低所得者には十分に配慮したうえで、OTC類似薬を原則保険適用外とすることで、医療費の削減を進めるべきではないか。
OTC類似薬の保険適用外に代わる追加負担の制度について、政府が与党に示した試算によると、花粉症薬や解熱鎮痛剤を含む1,000程度の成分を対象に薬剤費の4分の1の追加負担を求めた場合、医療給付費は4,100億円ほど削減できるという。OTC類似薬の保険適用外による削減額の1兆円と比べると4割程度に縮小する。
医療費削減、保険料引き下げへの道のりは険しい
医療保険ではないが、15日に厚生労働省が公表した介護保険料の見直し案によれば、焦点となっていたサービス利用料の2割負担の対象拡大は結論が持ち越された。負担増加に対する国民の反発にも配慮して、医療費など社会保険支出の抑制はなかなか進まない。それは、日本維新の会が求める社会保険料の引き下げを通じた「手取り増加」への道もなお険しいことを意味している。
(参考資料)
「市販類似薬、保険適用除外見送りへ 政府・与党、患者負担増は実施」、2025年12月13日、日本経済新聞
「市販類似薬の改革は腰砕けでいいのか」、2025年12月16日、日本経済新聞
「維新、官房長官に社会保障改革を提言OTC類似薬の負担で法案提出を」、2025年12月15日、日刊薬業
(参考資料)
「市販類似薬、保険適用除外見送りへ 政府・与党、患者負担増は実施」、2025年12月13日、日本経済新聞
「市販類似薬の改革は腰砕けでいいのか」、2025年12月16日、日本経済新聞
「維新、官房長官に社会保障改革を提言OTC類似薬の負担で法案提出を」、2025年12月15日、日刊薬業
プロフィール
-
木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。