レアアースで中国離れを狙うも輸出規制を回避するために関税を見送り
トランプ米大統領が実施した相互関税などへの合法性を巡る米最高裁の判断は、予想されていた14日には示されなかった。近日中にも判断は示されるだろうが、違法判決が出される可能性も相応に考えられる。
ただし、仮に合法判決であったとしても、昨年一気に展開されたトランプ関税策は、既に勢いを失っており、今後は縮小に向かうと予想される。それは、関税による物価高が国民の批判を招き、関税策が経済的にも政治的にも問題があることが、次第に明らかになってきたからだ。
トランプ政権の関税策の修正を示す一例が、レアアースを含む重要鉱物への関税見送りの決定だろう。トランプ政権は、中国が高いシェアを有するレアアースの国内での生産、精錬を促すために、中国からのレアアースの輸入を関税などで規制することを検討してきた。
米商務省は、通商拡大法232条に基づき、レアアースを含む重要鉱物の調査を進め、こうした輸入が米国家安全保障上のリスクに該当すると昨年10月に認定した。しかしトランプ大統領は、当面、関税の適用を見送ることを決めた。トランプ大統領はグリア米通商代表部(USTR)代表とラトニック商務長官に対し、「(重要鉱物の)輸入が米国の国家安全保障を損なう恐れがないよう、輸入を調整するため、貿易相手国と交渉に入る」ように指示をした。
ただし、仮に合法判決であったとしても、昨年一気に展開されたトランプ関税策は、既に勢いを失っており、今後は縮小に向かうと予想される。それは、関税による物価高が国民の批判を招き、関税策が経済的にも政治的にも問題があることが、次第に明らかになってきたからだ。
トランプ政権の関税策の修正を示す一例が、レアアースを含む重要鉱物への関税見送りの決定だろう。トランプ政権は、中国が高いシェアを有するレアアースの国内での生産、精錬を促すために、中国からのレアアースの輸入を関税などで規制することを検討してきた。
米商務省は、通商拡大法232条に基づき、レアアースを含む重要鉱物の調査を進め、こうした輸入が米国家安全保障上のリスクに該当すると昨年10月に認定した。しかしトランプ大統領は、当面、関税の適用を見送ることを決めた。トランプ大統領はグリア米通商代表部(USTR)代表とラトニック商務長官に対し、「(重要鉱物の)輸入が米国の国家安全保障を損なう恐れがないよう、輸入を調整するため、貿易相手国と交渉に入る」ように指示をした。
中国のレアアース輸出規制を恐れるトランプ政権:日中関係悪化も静観するか
関税の適用を見送ったのは、それが、昨年秋に中国と合意したレアアースの対米輸出規制の1年間の延期、という合意を損ねてしまうことを恐れたからだ。昨年は中国によるレアアースの輸出規制で米国産業は大きな打撃を受けており、国内でのレアアースの生産、精錬を進めることで中国離れを進めたいとトランプ政権は強く考えている。しかし中国離れには時間がかかることから、中国との関係を悪化させて再びレアアースの輸出規制が行われることは避けなければならない。
日本は既に中国からのレアアースの輸出規制を受けているが、中国との関係悪化を避けたいトランプ政権は、この問題で日本を積極的に支援することや、中国と日本の関係改善を仲介することなどには慎重だろう。
ただし、今後の中国との交渉の結果次第では、「将来的に、特定の重要鉱物について最低輸入価格を設定することを含め、代替的な措置を検討する可能性がある」とトランプ大統領は説明している。関税ではなくても最低輸入価格を設定することで安い輸入品を制限し、国内でのレアアースの生産、精錬を促すことが検討されるだろう。
ちなみに、米国が海外からの輸入に依存する重要鉱物の中では、中国が高い市場シェアを持つレアアースに加えて、カザフスタンが高いシェアを持つウランにもトランプ政権は強い関心を持っている。人工知能(AI)の莫大な電力需要に対応するため、米国が原子力発電の拡大を急ぐ中で、ウラン調達の重要性は高まっている。
日本は既に中国からのレアアースの輸出規制を受けているが、中国との関係悪化を避けたいトランプ政権は、この問題で日本を積極的に支援することや、中国と日本の関係改善を仲介することなどには慎重だろう。
ただし、今後の中国との交渉の結果次第では、「将来的に、特定の重要鉱物について最低輸入価格を設定することを含め、代替的な措置を検討する可能性がある」とトランプ大統領は説明している。関税ではなくても最低輸入価格を設定することで安い輸入品を制限し、国内でのレアアースの生産、精錬を促すことが検討されるだろう。
ちなみに、米国が海外からの輸入に依存する重要鉱物の中では、中国が高い市場シェアを持つレアアースに加えて、カザフスタンが高いシェアを持つウランにもトランプ政権は強い関心を持っている。人工知能(AI)の莫大な電力需要に対応するため、米国が原子力発電の拡大を急ぐ中で、ウラン調達の重要性は高まっている。
一部の先端半導体に25%の関税適用へ
他方、トランプ大統領は14日に、通商法232条に基づき一部の先端半導体に25%の関税を課す布告に署名した。米半導体大手エヌビディアのAI向け半導体「H200」などが対象となる。布告では、「この関税は米国のテクノロジーサプライチェーンの構築を支援するためや、半導体関連製品に関する国内製造能力の強化を目的として輸入される半導体には適用されない」としている。
エヌビディアは自社が設計する半導体の製造を台湾積体電路製造(TSMC)に依存しており、昨年12月にトランプ氏が中国向け販売を認めたH200もその一つである。
トランプ政権は、台湾有事のリスクも念頭に置き、先端半導体生産の国内回帰を促すため、今回の先端半導体への関税適用を決めた。
ただし、トランプ大統領は、半導体全体や半導体に関連する半導体製造装置やスマホ、PCなど広範囲に関税をかける考えを昨年は示していたが、その後は一切言及していない。今回の関税も一部の先端半導体にとどまっており、トランプ政権の関税策が勢いを落としていることは疑いがない。
(参考資料)
「レアアース含む重要鉱物への米関税、即時導入見送り-安保リスク認定」、2026年1月15日、ブルームバーグ
「米、一部の先端半導体輸入に25%関税賦課-トランプ氏が布告に署名」、2026年1月14日、ブルームバーグ
「米、一部先端半導体に25%関税=生産の国内回帰促す―トランプ大統領が布告に署名」、2026年1月15日、時事通信
エヌビディアは自社が設計する半導体の製造を台湾積体電路製造(TSMC)に依存しており、昨年12月にトランプ氏が中国向け販売を認めたH200もその一つである。
トランプ政権は、台湾有事のリスクも念頭に置き、先端半導体生産の国内回帰を促すため、今回の先端半導体への関税適用を決めた。
ただし、トランプ大統領は、半導体全体や半導体に関連する半導体製造装置やスマホ、PCなど広範囲に関税をかける考えを昨年は示していたが、その後は一切言及していない。今回の関税も一部の先端半導体にとどまっており、トランプ政権の関税策が勢いを落としていることは疑いがない。
(参考資料)
「レアアース含む重要鉱物への米関税、即時導入見送り-安保リスク認定」、2026年1月15日、ブルームバーグ
「米、一部の先端半導体輸入に25%関税賦課-トランプ氏が布告に署名」、2026年1月14日、ブルームバーグ
「米、一部先端半導体に25%関税=生産の国内回帰促す―トランプ大統領が布告に署名」、2026年1月15日、時事通信
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。