消費税は社会保障の基礎的財源
今回の衆院選では、与党も含めてほぼすべての政党が消費税減税を公約に掲げている。一方、各党が信頼性の高いその財源案を示せていないことから、金融市場は消費税減税が新規の国債発行を増やし、財政環境を一段と悪化させることへの警戒を強めている。
しかし、仮に消費税減税の財源を確保することが可能だとしても、消費税の税収を減らす措置自体が問題だ。それは消費税が社会保障の基礎的財源と位置付けられているためだ。
消費税を社会保障費の基礎的財源と位置付けた規定として最も直接的なのは消費税法第1条であり、制度改革として実効性を与えたのが平成24年税制抜本改革法である。
消費税法 第1条(趣旨)では、「この法律は、消費税の収入について、年金、医療および介護に要する社会保障費等に充てるものとする…」と規定されている。これは必ずしも厳格な「義務規定」ではない。
一方、税制抜本改革法(平成24年法律第68号)では、「社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を同時に達成する観点から、消費税の使途の明確化及び税率の引上げを行う」とされた。消費税率の引き上げとともに、その増収分を社会保障の安定財源に充てる方針が明確化された。
しかし、仮に消費税減税の財源を確保することが可能だとしても、消費税の税収を減らす措置自体が問題だ。それは消費税が社会保障の基礎的財源と位置付けられているためだ。
消費税を社会保障費の基礎的財源と位置付けた規定として最も直接的なのは消費税法第1条であり、制度改革として実効性を与えたのが平成24年税制抜本改革法である。
消費税法 第1条(趣旨)では、「この法律は、消費税の収入について、年金、医療および介護に要する社会保障費等に充てるものとする…」と規定されている。これは必ずしも厳格な「義務規定」ではない。
一方、税制抜本改革法(平成24年法律第68号)では、「社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を同時に達成する観点から、消費税の使途の明確化及び税率の引上げを行う」とされた。消費税率の引き上げとともに、その増収分を社会保障の安定財源に充てる方針が明確化された。
消費税減税が社会保障制度の信頼感を損ねる可能性
2026年度の国の社会保障費総額は、政府予算案で39兆円である。他方、消費税収は2026年度政府見通しでは34兆円、そのうち国税分は26.5兆円程度と考えられる。国の消費税収は、社会保障費を13兆円以上も下回っている。本来であれば、消費税収をさらに増やして社会保障制度を支える必要がある現状で、逆に消費税減税を進めることは問題だ。
ただし、消費税は税収の使途が法律で特定の目的に限定されている税金、いわゆる目的税ではない。そのため、消費税の税収が減少しても、社会保障支出が自動的にその分削減されることにはならない。
しかし、社会保障の基礎的財源と位置付けられている消費税収を、減税措置によって削減すると、将来、社会保障制度が維持できなくなる、あるいは大幅な社会保障費の削減が実施され、年金給付が大幅に減らされるなどの不安が国民の間に生じる可能性がある。つまり、社会保障制度の信頼性が損なわれかねない。そうなれば、国民の将来不安は高まり、消費活動にも悪影響が及ぶ可能性があるだろう。
ただし、消費税は税収の使途が法律で特定の目的に限定されている税金、いわゆる目的税ではない。そのため、消費税の税収が減少しても、社会保障支出が自動的にその分削減されることにはならない。
しかし、社会保障の基礎的財源と位置付けられている消費税収を、減税措置によって削減すると、将来、社会保障制度が維持できなくなる、あるいは大幅な社会保障費の削減が実施され、年金給付が大幅に減らされるなどの不安が国民の間に生じる可能性がある。つまり、社会保障制度の信頼性が損なわれかねない。そうなれば、国民の将来不安は高まり、消費活動にも悪影響が及ぶ可能性があるだろう。
福祉国家を幅広い世代が協力して支えていくという理念
そもそも、なぜ消費税が社会保障の基礎的財源と位置付けられているのかを考えてみよう。社会保障費は、高齢化や医療の進歩などを受けて、将来にわたって比較的安定したペースで増加を続けていく可能性が高い。それを賄うには、安定した税収を財源にする必要がある。法人税は変動が大きすぎるから、それには適していない。法人税ほどでないが個人所得税も変動は大きい。安定した財源としては、消費税が最も適している。
さらに、消費税減税を行えば、社会保障費はより法人税、個人所得税によって賄われる構図となる。社会保障制度の財源を主に企業が担うというのはおかしい。また、個人所得税によって賄われるとすれば、現役世代の負担がより高まることになる。
消費税が社会保障の基礎的財源と位置付けられている背景には、社会保障は幅広い世代が支えていくのが適切だという考えがある。福祉国家を幅広い世代が協力して支えていくという国民が共有する理念を蔑ろにしてしまうという点も、消費税減税が抱える大きな問題点の一つである。
さらに、消費税減税を行えば、社会保障費はより法人税、個人所得税によって賄われる構図となる。社会保障制度の財源を主に企業が担うというのはおかしい。また、個人所得税によって賄われるとすれば、現役世代の負担がより高まることになる。
消費税が社会保障の基礎的財源と位置付けられている背景には、社会保障は幅広い世代が支えていくのが適切だという考えがある。福祉国家を幅広い世代が協力して支えていくという国民が共有する理念を蔑ろにしてしまうという点も、消費税減税が抱える大きな問題点の一つである。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。