過去の消費税率引き上げ時には決定から実施までに1年半を要した
高市首相は衆院選後の記者会見で、国民会議で食料品の消費税2年間ゼロに関する中間とりまとめを今年夏前に行う、と説明した。政府内では6月中に中間とりまとめを行う方向で調整に入ったと報じられている。
秋の臨時国会で減税法案を可決すれば、高市首相が説明してきた2026年度中の減税実施が可能になるとの計算があり、そこから逆算して6月中の中間とりまとめを想定しているのだろう。
しかし、仮に減税法案が今秋の臨時国会で可決されるとしても、2026年度中の減税実施は難しいだろう。過去の消費税率引き上げの際には、決定から実施までに1年半の時間を要している。一定の周知期間に加えて、レジシステム変更などに時間を要する。システム変更は迅速に実施が可能な小売店もあるだろうが、最も対応が遅くなる小売店にスケジュールを合わせなければ、大きな社会的混乱を生んでしまう。
また今回は、食料品の税率をゼロにすると、引き続き10%の税率が適用される外食産業に打撃となり得ることから、その対策も講じる必要がある。
過去と同様に決定から実施に1年半の時間を要す場合には、食料品の消費税率引き下げは2028年春と2年以上先になる。これでは、給付付き税額控除導入までのつなぎ、とは言えなくなる。
秋の臨時国会で減税法案を可決すれば、高市首相が説明してきた2026年度中の減税実施が可能になるとの計算があり、そこから逆算して6月中の中間とりまとめを想定しているのだろう。
しかし、仮に減税法案が今秋の臨時国会で可決されるとしても、2026年度中の減税実施は難しいだろう。過去の消費税率引き上げの際には、決定から実施までに1年半の時間を要している。一定の周知期間に加えて、レジシステム変更などに時間を要する。システム変更は迅速に実施が可能な小売店もあるだろうが、最も対応が遅くなる小売店にスケジュールを合わせなければ、大きな社会的混乱を生んでしまう。
また今回は、食料品の税率をゼロにすると、引き続き10%の税率が適用される外食産業に打撃となり得ることから、その対策も講じる必要がある。
過去と同様に決定から実施に1年半の時間を要す場合には、食料品の消費税率引き下げは2028年春と2年以上先になる。これでは、給付付き税額控除導入までのつなぎ、とは言えなくなる。
財源確保は見えてこない
高市首相は、食料品の消費税2年間ゼロのために赤字国債発行はしない、と明言している。そうした姿勢が、金融市場での財政悪化懸念をやや緩和している面があるだろう。
しかし金融市場は、財源確保が容易でない中、財源を確保できなければ食料品の消費税2年間ゼロの実施を断念するのか、それとも財源を確保できなくても赤字国債を発行して消費税2年間ゼロを実施するのかについて、大きな不確実性があると考えているだろう。
高市首相が掲げる補助金、租税特別措置、税外収入から財源をねん出するとしているが、依然として具体性を欠いている。そもそも日銀の国庫納付金や資産売却益は、経常的に歳入に繰り入れられており、それを新たな財源とするのはおかしいだろう。
さらに産業向けの補助金は2024年度で4.7兆円、法人向けの租税特別措置による減税分は2023年度で2.9兆円しかない(朝日新聞)。ここから年間5兆円の食料品の消費税2年間ゼロの財源をねん出するのは無理だ。産業政策の一環で実施している補助金、租税特別措置を減税期間の2年に限って停止するというのも現実的ではないことから、一部を財源とするのであれば、廃止を決めることが必要だろう。
しかし金融市場は、財源確保が容易でない中、財源を確保できなければ食料品の消費税2年間ゼロの実施を断念するのか、それとも財源を確保できなくても赤字国債を発行して消費税2年間ゼロを実施するのかについて、大きな不確実性があると考えているだろう。
高市首相が掲げる補助金、租税特別措置、税外収入から財源をねん出するとしているが、依然として具体性を欠いている。そもそも日銀の国庫納付金や資産売却益は、経常的に歳入に繰り入れられており、それを新たな財源とするのはおかしいだろう。
さらに産業向けの補助金は2024年度で4.7兆円、法人向けの租税特別措置による減税分は2023年度で2.9兆円しかない(朝日新聞)。ここから年間5兆円の食料品の消費税2年間ゼロの財源をねん出するのは無理だ。産業政策の一環で実施している補助金、租税特別措置を減税期間の2年に限って停止するというのも現実的ではないことから、一部を財源とするのであれば、廃止を決めることが必要だろう。
将来の自民党の選挙戦略に大きな逆風となる可能性も
また、2年後に食料品の消費税を8%に戻すことができるかも不確実性が高い。高市首相は2年間に限ると明言しているが、2年後に税率を戻す際には、消費者には増税と受け止められやすく、反発が予想される。
そうした中、自民党が2年後に食料品の消費税を8%に戻すことを目指す一方、多くの野党がそれに強く反対するという構図になれば、自民党が選挙でかなり不利になる可能性も出てくる。
このような幾つものハードルがあることを踏まえると、高市首相が食料品の消費税2年間ゼロの実施にこだわり続けるかは不確実だろう。そもそも、国民は消費税減税を強く望んでいる訳ではないと考えられ、仮に食料品の消費税2年間ゼロを見送っても、高市政権に対する強い批判が出てくる可能性は低いのではないか。
国民会議では、消費税減税の議論と並行して中・低所得層を支援する「給付付き税額控除」の議論を進め、その制度設計にも中間とりまとめで言及する見通しだという。消費税減税と並行して議論を進める中、より抜本的な物価高対策、中・低所得層支援策である「給付付き税額控除」の議論を優先し、消費税減税の実施は見送る方向となる可能性は十分に考えられるところだろう。
衆院選後、指標となる10年国債利回りは概ね横ばいの落ち着いた動きとなっているが、より財政リスクを反映した30年債、40年債の利回りは大幅に下落しており、ともに年初の水準まで戻っている。これは国債市場が、消費税減税の実施が見送られる可能性を相応に織り込んでいるからではないか。
(参考資料)
「消費減税、6月に中間報告 政府、財源候補示す方針」、2026年2月13日、朝日新聞
そうした中、自民党が2年後に食料品の消費税を8%に戻すことを目指す一方、多くの野党がそれに強く反対するという構図になれば、自民党が選挙でかなり不利になる可能性も出てくる。
このような幾つものハードルがあることを踏まえると、高市首相が食料品の消費税2年間ゼロの実施にこだわり続けるかは不確実だろう。そもそも、国民は消費税減税を強く望んでいる訳ではないと考えられ、仮に食料品の消費税2年間ゼロを見送っても、高市政権に対する強い批判が出てくる可能性は低いのではないか。
国民会議では、消費税減税の議論と並行して中・低所得層を支援する「給付付き税額控除」の議論を進め、その制度設計にも中間とりまとめで言及する見通しだという。消費税減税と並行して議論を進める中、より抜本的な物価高対策、中・低所得層支援策である「給付付き税額控除」の議論を優先し、消費税減税の実施は見送る方向となる可能性は十分に考えられるところだろう。
衆院選後、指標となる10年国債利回りは概ね横ばいの落ち着いた動きとなっているが、より財政リスクを反映した30年債、40年債の利回りは大幅に下落しており、ともに年初の水準まで戻っている。これは国債市場が、消費税減税の実施が見送られる可能性を相応に織り込んでいるからではないか。
(参考資料)
「消費減税、6月に中間報告 政府、財源候補示す方針」、2026年2月13日、朝日新聞
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。