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野党に対しては丁寧に協力を求める姿勢を継続

18日の第2次高市内閣発足を受けて、高市首相は同日夜に記者会見を行った。高市首相は現在を「高市内閣2.0」の始まりと表現し、世論を二分する積極財政政策、安全保障政策の強化、インテリジェンス政策の強化を中心に、新しい政策を進めていく考えを明らかにした。ただしその内容は、従来の説明とほぼ同様であり、また20日の施政方針演説とかなり重複するものとみられる。
 
衆院選で自民党が大幅に議席を増やしたものの、政策運営については、引き続き日本維新の会との連立関係を堅持するとともに、野党に対しては丁寧に協力を求めていく姿勢であることを強調した。今国会では、来年度予算、税制改革など今年度末までに成立が必要な法律については、野党の協力を得て、1日でも早く成立を目指すとした。そうした政策の中でも、高校授業料の無償化については、特に高市首相が重視している政策であることがうかがわれた。

消費税減税の実現には課題が累積

経済政策について高市首相は、給付付き税額控除制度を含む税と社会保障の一体改革を重視する考えを示し、給付付き税額控除制度に賛同する野党に声をかけて国民会議の場で議論を進める考えを改めて表明した。
 
一方、給付付き税額控除制度を含む税と社会保障の一体改革を実現するまでのつなぎとして、赤字国債に頼ることなく食料品の消費税率を2年間に限りゼロにする考えを改めて示した。
 
しかし、消費税率の引き下げについては、各党の意見に大きなばらつきがあり、意見集約が難しいことを認めた。さらに、レジのシステム更新にかかるコストや時間、打撃を受ける外食産業への対応など、課題が累積していることを指摘した。
 
そうした中で、高市首相は夏までに中間とりまとめを行い、その後に閣議決定、法案提出につなげる考えを示した。減税実施の時期については明言しなかった。

減税議論が遅れて給付付き税額控除導入までの「つなぎ」の意味が薄れる可能性も

しかし、財源も含めて多くの課題があるなか、迅速に食料品の消費税率引き下げの法律の成立にたどり着くのは難しいだろう。過去の消費税率引き上げ時には、法律成立から税率変更まで1年半の時間を要した。
 
食料品の消費税率を引き下げる時期が後ずれするほど、給付付き税額控除制度を含む税と社会保障の一体改革を実現するまでのつなぎとして意味合いは確実に薄れていく。
 
一方で、給付付き税額控除制度に賛同する野党を集めて国民会議で議論するのであれば、こちらは比較的早期にその設計に向けた議論がまとまる可能性もあるだろう。給付付き税額控除制度の議論が先行して進めば、つなぎとしての食料品の消費税率引き下げは結局必要なくなってしまう可能性もあるのではないか。

民間の設備投資を引き出す成長戦略の重要性

一方、高市首相は日本経済が抱える問題に関して、設備投資の弱さが潜在成長率低迷の主な要因であると指摘した。この指摘は正しい。厳密に言えば、設備投資が弱いことによる生産性上昇率の低迷と資本ストックの潜在成長率への寄与の低下が問題である。
 
ただし、それへの対策として政府が投資を拡大するというのは正しくないだろう。政府が投資を積極化させても、潜在成長率の上昇にはつながりにくい。それは一時的な需要の増加で終わり、財政の悪化だけが残ってしまうのではないか。
 
重要なのは政府が「危機管理投資」などで自ら投資を拡大させることではなく、民間の投資を引き出すことであり、それには企業の中長期の成長期待を高めることが必要だ。少子化対策、労働市場改革、東京一極集中是正、外国人材活用など、政府にしかできない成長戦略を進めることで、企業の成長期待を高め、設備投資を引き出していくことが重要となる。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。