税・社会保障制度を見直す「守りの政策」
高市首相が20日の施政方針演説でも明らかにする衆院選後の経済政策については、「守り」と「攻め」の政策をバランスよく推進していく必要があるだろう。
過去数年にわたる歴史的物価高で、中低所得の生活基盤は損なわれた。これは、日本の税制、社会保障制度、そして賃金決定制度などが、物価高に柔軟に対応できなかったことが問題の本質だと考えられる。そのため、消費税率引き下げのような一時的な政策ではなく、制度を見直す抜本的な改革こそが今求められている。
そうした改革の一つが、多くの政党が支持している「給付付き税額控除制度」の導入だ。それは、将来の物価変動などの環境変化から中・低所得者層の実質所得を守り、生活を支える柔軟な仕組みと言える。
高市首相には、「国民会議」で議論するとしている「給付付き税額控除制度」について、自らが考える設計を施政方針演説で示して欲しい。
一方、国民の生活を持続的に改善させるには、所得分配に関わるこうした政策だけでなく、成長率と生産性上昇率を高める政策、いわゆる成長戦略を進める必要がある。
物価高などの環境変化から中・低所得層の生活を守る「給付付き税額控除制度」などが、重要な「守りの政策」とすれば、この成長戦略は「攻めの政策」と位置付けられる。この2つを両輪として経済政策を前に進めていくことが重要だろう。
過去数年にわたる歴史的物価高で、中低所得の生活基盤は損なわれた。これは、日本の税制、社会保障制度、そして賃金決定制度などが、物価高に柔軟に対応できなかったことが問題の本質だと考えられる。そのため、消費税率引き下げのような一時的な政策ではなく、制度を見直す抜本的な改革こそが今求められている。
そうした改革の一つが、多くの政党が支持している「給付付き税額控除制度」の導入だ。それは、将来の物価変動などの環境変化から中・低所得者層の実質所得を守り、生活を支える柔軟な仕組みと言える。
高市首相には、「国民会議」で議論するとしている「給付付き税額控除制度」について、自らが考える設計を施政方針演説で示して欲しい。
一方、国民の生活を持続的に改善させるには、所得分配に関わるこうした政策だけでなく、成長率と生産性上昇率を高める政策、いわゆる成長戦略を進める必要がある。
物価高などの環境変化から中・低所得層の生活を守る「給付付き税額控除制度」などが、重要な「守りの政策」とすれば、この成長戦略は「攻めの政策」と位置付けられる。この2つを両輪として経済政策を前に進めていくことが重要だろう。
「危機管理型投資」の課題
高市政権は、「危機管理型投資・成長投資」を中心とする成長戦略を以前より掲げてきた。高市政権の「危機管理型投資」は、自然災害、海外からの軍事的脅威、エネルギー・食料の安定調達を脅かすリスク、重要物資の海外の輸出規制のリスクなどの諸課題に対応するために、政府が投資を拡大させるというものである。それが成長率を高め、税収の増加に結びつくことで財政環境が改善するというもので、“災い転じて福となる”型の楽観的な見通しが含まれている。
実際には、政府の投資は非効率で無駄が多く、政府債務の増加につながりやすいことが懸念されるところだ。また、政府が投資や補助金などで産業の成長を促そうとすると、企業は政府により依存するようになり、むしろイノベーションが阻害されてしまうことも懸念される。
さらに、危機管理型投資には、経済安全保障の観点から、重点産業の国内回帰を促す狙いがある。しかし、そうした取り組みは、輸入品を国産品に広範囲に代替する動きであり、日本の国是である自由貿易を阻害する面もあると考えられる。
海外からの安価で質の高い製品を国産品に置き換えると、生産コストが高くなり、物価高をもたらす。従来よりも高い価格で製品を買わなければならなくなるのは日本国民だ。
実際には、政府の投資は非効率で無駄が多く、政府債務の増加につながりやすいことが懸念されるところだ。また、政府が投資や補助金などで産業の成長を促そうとすると、企業は政府により依存するようになり、むしろイノベーションが阻害されてしまうことも懸念される。
さらに、危機管理型投資には、経済安全保障の観点から、重点産業の国内回帰を促す狙いがある。しかし、そうした取り組みは、輸入品を国産品に広範囲に代替する動きであり、日本の国是である自由貿易を阻害する面もあると考えられる。
海外からの安価で質の高い製品を国産品に置き換えると、生産コストが高くなり、物価高をもたらす。従来よりも高い価格で製品を買わなければならなくなるのは日本国民だ。
サプライサイドの成長戦略を
経済の主役はあくまでも民間であり企業であるべきだろう。政府は、企業の活動を側面から支援する役割を果たすべきと考えられる。安倍政権以降、歴代政権が掲げてきた成長戦略は、規制緩和、少子化対策、労働市場改革などを通じて政府が企業の設備投資を引き出し、それを成長力や生産性上昇率の向上につなげるものだった。高市政権が掲げる成長戦略は、政府の投資拡大が中核であり、今までの成長戦略とは異質のものである。
施政方針演説で高市首相は、危機管理投資の多年度予算化や、官民投資のロードマップを3月から提示することを表明するとみられる。ただし、政府投資の拡大という需要側の経済政策に重きを置く高市政権には、従来型の成長戦略である供給側(サプライサイド)重視の政策にもっと目を向けて欲しい。
施政方針演説で高市首相は、危機管理投資の多年度予算化や、官民投資のロードマップを3月から提示することを表明するとみられる。ただし、政府投資の拡大という需要側の経済政策に重きを置く高市政権には、従来型の成長戦略である供給側(サプライサイド)重視の政策にもっと目を向けて欲しい。
プロフィール
-
木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。