トランプ関税の大半は米国の企業と消費者の負担に
ニューヨーク連銀の調査によると、2025年にトランプ政権が課した追加関税は、その約9割を米国の企業と消費者が負担した。2025年1~8月の追加関税の94%、11月時点で86%は米側が負担していた計算になるという。また米議会予算局(CBO)も報告書で、関税による輸入品価格の上昇の大半は米国の負担となり、そのうち3割が企業の負担、7割が消費者の負担と推計している。トランプ大統領は、関税は海外が負担すると説明していたが、実際にはそれは誤りだった。
関税による輸入完成品や輸入原材料・部品の価格上昇は、米国内で販売される製品の価格に上乗せされ、企業や消費者の負担となった。また、輸入原材料・部品の価格上昇分を製品価格に完全には転嫁しないことで、米国企業は収益の悪化を受け入れることを余儀なくされた。それが足元の雇用情勢の悪化につながっている面があるだろう。これも、消費者にとっては関税の間接的な悪影響だ。
米企業が関税による価格上昇の一部を吸収したことで、海外企業の米国への輸出に対する関税の悪影響は懸念されたほど大きくなかった可能性も考えられる。
関税による輸入完成品や輸入原材料・部品の価格上昇は、米国内で販売される製品の価格に上乗せされ、企業や消費者の負担となった。また、輸入原材料・部品の価格上昇分を製品価格に完全には転嫁しないことで、米国企業は収益の悪化を受け入れることを余儀なくされた。それが足元の雇用情勢の悪化につながっている面があるだろう。これも、消費者にとっては関税の間接的な悪影響だ。
米企業が関税による価格上昇の一部を吸収したことで、海外企業の米国への輸出に対する関税の悪影響は懸念されたほど大きくなかった可能性も考えられる。
米企業は再び値上げの動きを強める可能性
米労働省が13日に発表した1月分消費者物価指数(CPI)は、前年比+2.4%と前月の+2.7%から低下した。事前予想の平均+2.5%も下回った。食品・エネルギーを除くコアCPIも前年比+2.5%上昇と前月の+2.6%を下回り、2021年3月以来の低水準となった。関税による価格上昇傾向には一服感もみられ始めている。
しかしながら、米企業は再び値上げの動きを強め始めた可能性がある。2025年に米企業は、春以降の関税引き上げに伴うコスト上昇分を製品価格に転嫁した。しかし秋頃になると、ホリデーシーズンの買い物客が離れることを恐れ、値上げの動きを控える企業が増えていった。
ところが、2026年に入ると再び企業は値上げ姿勢を強めていると指摘されている。ジーンズを手掛けるリーバイスやスパイス・メーカーのマコーミックなどは、今年に入り商品の値上げを発表した。値上げの動きは、ジーンズやスパイスにとどまらず、電子機器、家電製品などにも広がっている。上記の1月分消費者物価指数ではそうした値上げ再開の動きは顕著に見られなかったが、今後顕在化してくる可能性はあるだろう。
値上げの理由は関税だけではない。特に中小企業は、賃金の上昇や高額な医療保険費用も値上げの理由に挙げている。それらを企業側が自ら吸収したり、サプライヤーと分担したりすることは難しい。中小企業は大企業よりも利益率が低く、コスト上昇分を値上げ以外で吸収する手段が乏しいためだ。
しかしながら、米企業は再び値上げの動きを強め始めた可能性がある。2025年に米企業は、春以降の関税引き上げに伴うコスト上昇分を製品価格に転嫁した。しかし秋頃になると、ホリデーシーズンの買い物客が離れることを恐れ、値上げの動きを控える企業が増えていった。
ところが、2026年に入ると再び企業は値上げ姿勢を強めていると指摘されている。ジーンズを手掛けるリーバイスやスパイス・メーカーのマコーミックなどは、今年に入り商品の値上げを発表した。値上げの動きは、ジーンズやスパイスにとどまらず、電子機器、家電製品などにも広がっている。上記の1月分消費者物価指数ではそうした値上げ再開の動きは顕著に見られなかったが、今後顕在化してくる可能性はあるだろう。
値上げの理由は関税だけではない。特に中小企業は、賃金の上昇や高額な医療保険費用も値上げの理由に挙げている。それらを企業側が自ら吸収したり、サプライヤーと分担したりすることは難しい。中小企業は大企業よりも利益率が低く、コスト上昇分を値上げ以外で吸収する手段が乏しいためだ。
物価上昇率の上振れは11月の中間選挙に向けたトランプ政権の戦略の妨げに
この先、物価上昇率の上振れが再び顕著となれば、経済環境に関する国民の不満とトランプ政権に対する批判はさらに強まるだろう。そして、米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な利下げを通じて、11月の中間選挙までに雇用を改善させ、政権と共和党への国民の支持を取り戻すというトランプ政権の選挙戦略の大きな妨げとなってしまう恐れがある。
この先、物価上昇率の上振れが再び顕著となる場合には、その影響を相殺し、国民からの支持を取り戻す観点からも、トランプ政権は関税策を明確に縮小させる可能性が出てくるだろう。間もなく示される、相互関税などに対する米最高裁の判決で、違法の判断が示されれば、トランプ関税は一気に縮小することが予想される。それは米国民にとっても世界経済にとっても好ましいことだ。
(参考資料)
“The Break Is Over. Companies Are Jacking Up Prices Again(米企業、再び値上げサイクルに)”, Wall Street Journal, February 17, 2026
「トランプ関税、9割は米国側負担 NY連銀調査 政権「外国への課税」と矛盾」、2026年2月16日、朝日新聞
この先、物価上昇率の上振れが再び顕著となる場合には、その影響を相殺し、国民からの支持を取り戻す観点からも、トランプ政権は関税策を明確に縮小させる可能性が出てくるだろう。間もなく示される、相互関税などに対する米最高裁の判決で、違法の判断が示されれば、トランプ関税は一気に縮小することが予想される。それは米国民にとっても世界経済にとっても好ましいことだ。
(参考資料)
“The Break Is Over. Companies Are Jacking Up Prices Again(米企業、再び値上げサイクルに)”, Wall Street Journal, February 17, 2026
「トランプ関税、9割は米国側負担 NY連銀調査 政権「外国への課税」と矛盾」、2026年2月16日、朝日新聞
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。